株式会社 北見式賃金研究所 所長 北見 昌朗 くまさお)
◆「働けば認めてくれる」という
 期待感が、信長にはあった!
 信長は、尾張の弱小勢力から始まり全国統
一の手前までいっただけに、その家臣の人心
掌握術は見事です.信長のところには全国か
ら勇猛果敢な武士が集まったのですから、信
長には人を惹き付ける特別な魅力があったの
でしょう.
 家臣からみた信長の魅力とは何か? それ
は「怖いボスだが、しっかり働けば認めてく
れる」という期待感だったのではないでしょ
うか?
◆信長は、合戦で最前線に立って
 陣頭指揮した
 信長は、合戦において常に陣頭指揮に立っ
ていました.そのことを感じさせる場所があ
ります.それは長篠の古戦場(愛知県新城
市)です.戦場になった設楽原は、信長の本
陣跡が今でも残っています.信長は当初後方
の極楽寺山という山で陣取っていましたが、
合戦直前になって最前線にある高台に移りま
した.その高台に立ちますと、敵も味方も全
部見渡すことができます.信長の本陣は、鉄
砲の弾も飛んでくるような危険な場所ですが、
敵味方の動静を知るには最高のポイントです.
 設楽原は狭い地域です.連吾川という小川
があり、それを境にして織田徳川連合軍と武
田軍が対峠しました.そこに合計五万六千人
も集まったのですから、敵も味方も入り混じ
った大混戦になったことでしょう.それを信
長はその目で見ていたのです.
 信長はこのように家臣の働きぶりを常に見
ていました.この「大将から見られている」
ということが家臣にとって大事な点だと思い
ます.家臣は命懸けで敵陣に突撃するのです
から、大将に見ていてもらわなければ犬死で
す.
 信長はこのように常に最前線で陣頭指揮し
ましたから、合戦後の論功行賞は「今日の戦
いは、〇〇が一番だった」などと、自ら自信
を持って決めることが多かったようです.
◆今回のポイント
 現代の経営においても、この信長の陣頭指
拝ぶりは、参考になるのではないでしょう
か?
 トップは、常に現場に身を置いて欲しいも
のです.製造業ならば、工場内を回ることが
肝心です.小売業ならば、店を回ることが必
要です.そして「誰が身を粉にして働いてい
るのか」「部下からどう評価されているか」
「誰がどんな才能を持っているのか」などと
いうことを、その目で確かめるべきです.
 社員は、トップが見てくれていると分かれ
ば、ヤル気が出ます.会社員の関心事といえ
ば、昇格、昇給、配置転換などの人事問題です。
その決定権はトップにあるのですから、トッ
プからの評価が気になるのは当たり前です.
 またトップは、社員と密接な人間関係を作
ることも必要です.そのためにトップたるも
の、社員の家族構成に至るまで把握しておく
のが良いでしょう.そして昼休みに食堂で顔
を合わせたら「オイ、お子さんはもう大きく
なったか? たまには可愛い顔を見せてくれ
よ」などと声を掛けてみましょう.そんな気
配りも、社員のヤル気の源になるはずです.
(この連載記事は北見昌朗氏の著書「織田信長
 の経営塾」(講談社)のエッセンスです)


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:07