UFJ経営情報クラブ
【正しい成果主義(7)最終回】
マネジメントの意思で真の成果主義を実現する
UFJ総合研究所 組織人事戦略部(東京) プリンシパル 富田 寿
◆人事の意思を正しく現場に伝える
正しい成果主義を実現するための最後の重
要なポイントは、人事の意思を正しく伝え、
それを現場のマネジメントの意思としてきち
んと実現するということである。現場での成
果主義の混乱は、実はこの部分の不十分さに
起因している場合がかなりある。
現場の成果主義に対する不信感や不平・不
満は、人事がその導入の狙いや主旨、目指す
べき人事ビジョンなどをあらかじめ明示せず、
半ばなし崩し的に作業が進められている場合
に起きやすい。加えて、成果主義の運用段階
で出てくる現場からの不平・不満に対しても、
その根本原因の究明もなく、有効な対策が立
てられていない場合に起きやすいのだ。
人事の思惑で事が運び、現場のマネジメン
トを担う管理者が「蚊帳の外」では、成果主
義に対する不信感は助長されるばかりだろう。
「制度は正しく設計・導入されているのだか
ら、現場で正しく運用されるはずだ」との人
事の−方的な思い込みや独断が働いている場
合にも、同様な反応が起きやすい。
現場に制度をリリースしたあとも、人事の
意思がどの程度浸透しているか、こまめにチ
ェックするような継続的な努力が必要となる。
その際に重要なのは、機能する成果主義とは、
人事と現場との密な連携やコラボレーション
(協働)の実現によって初めてもたらされる
ものだという、正しい認識なのだ。
◆真のマネジメント人材の育成がカギ
仮に当該企業の人事部門に先見の明があっ
て、このあたりの配慮がきちんとできている
のなら、あとは−にかかって現場のマネジメ
ントの力量次第である。
。この際に問われてくるのは、毎年スポット
的にやってくる人事評価の際の評価者として
の評価スキルだけではない。重要なのは、日々
の業務管理の中での管理者としてのマネジメ
ント・スキルの向上なのである。つまり、日
常レベルでいかに担当部門の業績や部下の業
務マネジメントが正しく実践できるかという
ことに尽きてくる。
そのためには、組織や人事の体制に関する
管理者としての正しい理解、新制度における
業務目標や役割へのコミットメント(積極的
関与)、組織や人材に関するマネジメント概
念の再認識など、新しい組織や人事体制の下
での管理者としての新しい役割認識を、現場
の管理者たちが正しく持つことが求められて
くるのである。
これは、成果主義人事への移行後、既に各
企業で注力されている評価者トレーニングや
マネジメント研修の実施という形で、取り組
み事例も目立ってきている。つまり、中・長
期的視点に立った真のマネジメント人材の育
成ということが、組織の最優先課題として浮
上してきているということだ。
◆正しい成果主義をみんなの成果主義に
成果主義の考え方は、人事部門にその独占
権が与えられているものではない。むしろ、
現場のことは現場がいちばんよく理解してい
るはずだから、それぞれの現場で本当に機能
する成果主義について、みんなで一緒によく
考えて決めていけばいいのである。
これまでに述べてきたように、現場の実情
に応じた成果とは何か、その成果を導くため
の正しいプロセスとは何か、現場で成果主義
人事を活用しやすくするためには、どのよう
な運用ルールを新たに設定すればよいのか。
このような「正しい成果主義」を「みんな
の成果主義」にしていく努力が、明日からの
本当の成果主義の実現につながるということ
をよく理解して、これからの人事制度改革に
全社一丸で取り組んでいただきたいというの
が、筆者の切なる願いである。
※次回からは新シリーズ「人事コンサルタント
の熟視線」(全6回)が始まります。
どうぞご期待ください。