営業秘密の管理
 三宅法律事務所 弁護士 猿木 秀和
1.はじめに

 現在、不正競争防止法の改正案が国会で審
議されています。この法律は、他人の商品の
形態を模倣して販売する行為や、企業の持つ
営業秘密を不正に取得する行為などの不正な
競争行為を規制する法律ですが、今般の改正
では、営業秘密の漏洩行為について刑事罰の
強化等が予定されています。
 今回は不正競争防止法を踏まえて、重要な
秘密情報(技術上のノウハウ、顧客リスト、
販売データ、販売マニュアル等)の管理方法
についてお話します。
2.「営業秘密」とは
 不正競争防止法は「営業秘密」というキー
ワードを使い、これを不正に侵害された場合
には、被害者は侵害者に、漏洩した「営業秘
密」の使用の差し止めや廃棄を求めることが
できます。また、同法は、この侵害により被
った損害の賠償請求を比較的容易にできる制
度を設けています。よって、企業が秘密情報
を管理していく場合には、この「営業秘密」
と認められるよう管理していく必要がありま
す。
「営業秘密」と認められるためには、秘密と
して管理されていること(秘密管理性)がま
ず必要になります。ところが、秘密管理性が
認められるには、単に企業において秘密情報
と考えるだけではなく、外部から見てもその
情報が秘密とわかるように管理し、かつ、そ
の情報にアクセスできる者を制限しているこ
とが要求されます。
 そして、この条件を満たすよう管理を行う
ことは必ずしも容易ではなく、企業において
は相当厳格な情報管理が必要となります。

3.秘密情報の管理方法
 まず、書類等に秘密情報である旨を示す
「秘」等の印を付けることが必須です。そし
て、書類等の保管については鍵付ロッカーに
保管し、その情報にアクセスする際には上司
の許可を求め、情報のコピーをとることを禁
止するなどの対応をとることが重要です。
 電子データによる情報についてはID・パ
スワードによるアクセス制限は当然必要で、
さらにそれを紙に打ち出す際には、適切に管
理・廃棄することが重要です。また、電子デ
ータは単に消去しても復元されるおそれがあ
ることから、パソコンを廃棄する場合には、
ハードディスクを物理的に破壊するなどして
情報の漏洩が起こらない対策をとることが望
ましいといえます。
 さらに、秘密管理が重要である旨や、どの
情報が秘密であるかを理解させるため、従業
員との間で秘密保持契約を結んだり、研修を
行ったりすることも必要です。退職した従業
員から秘密情報が漏洩することも頻繁にある
ので、退職後も秘密を保持する旨を秘密保持
契約書で約束させておくことも重要です。
 以上、簡単に秘密情報の管理方法をご説明
しましたが、貴社でもこの機会に自社の秘密
情報の管理状況を確認されてはいかがでしょ
うか。


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:12