【営業が変わる(2)】
営業のプロセスを分ける
 神戸大学大学院経営学研究科教授 石井淳蔵
営業に苦労する会社ほど営業改革に熱意を
燃やす。住宅メーカーは好例だ。お客さんは
一生に一度の買い物であるので、営業からの
プッシュがそれなりに必要だ。各社は有能な
営業部隊を備え、営業部隊はお客さんを逃し
てはならじと飛び込み営業や夜討ち朝駆け営
業を行う。しかし、そればかりだと営業は疲
弊してしまう。
 そこで営業改革が各社で試みられた。まず・
「展示場とモデルハウス」を作ったのが目を
引く。展示場を作れば、見込み客をわざわざ
探しに行く必要はない。なぜなら・住宅を買
いたいと思う人がまず最初にやって来るとこ
ろが展示場だ。生まれたばかりのニーズ・つ
まり「初発のニーズ」が、ここで間違いなく
捉えられるのだ。
 展示場・モデルハウスにやってくるお客さ
んは、案内の人から新しい生活様式や新しい
設備機器を説明されて・自分たちの夢や希望
を増幅させる。帰りに、アンケート調査を求
められて、住所、氏名・年齢に加え・年収や
家族構成や住宅の溝入意向などを書く。それ
が本社の「顧客データべ−ス」に入る。
 営業担当がお客さんのところを訪問するの
は、この後である。飛び込み営業だと何回か
適わないと話は進まないが・展示場を訪問し
てある程度買う気になっている人が相手なら
 話の進みもそれなりに早い。
 とはいっても、「わが社の住宅を買ってく
 ださい」と切り出すにはそれなりのタイミン
 グ必要だ。そこで某メーカーは・自身の研究
 所にお客さんをお連れして、住宅づくりのい
 ろいろな課題について相談を受け、実際に実
 地で体験したりする。高齢者向けバスルーム・
 三世代用キッチン、部屋の防音性等々・話を
 聞くだけでは理解できないことも・実地で実
 際に使いながら説明されるとわかりやすい。
 ここまで来ると、営業担当も楽だ。買う気
 があり心を開いてくれたお客さんに向けて、
 返済計画や敷地の充当や必要な設備機器の仕
様について相談を受ける。
 こうして成約に至る。だが・これで終わら
ない。購入後もお客さんのニーズはある。改
装、改築、修理、庭の手入れ等々。住宅メー
蔓二子蔓箪毒蔓蔓丁言字音軍蔓蔓吉享写享軍
に応えるというやり方をとる。お客さんから
依頼を受けて、窓口から派遣された専門家
(建築士やインテリアデザイナーあるいはガ
ーデナーや修理工)が・お客さんの具体的な
問題に応える。
 以上、モデルハウスヘの来訪から始まって
時間のかかる、そしてお客さんとの複雑なや
りとりが必要なプロセスである。これまでは、
この仕事は一人の営業担当がすべてこなして
いた。今やその仕事は・何人もの専門家を含
め組織だって行われる。「営業プロセスの分
解」が行われ、プロセス全体に渡って組織と
してお客さんと対処するやり方・つまり「組
織営業」だ。前回(2005・04・12No・05−068)、
プロ野球において投手の分業が行われている
 ことを述べたが、それと似ている。
 その具体的な効能については改めてという
 ことにしたいが、野球でもそうであったよう
に、それによって初めて「市場における長期
に渡った安定した戦い」が可能になるのだ。


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:12