UFJ経営情報クラブ
マネジメントカを磨く
UFJ総合研究所 組織人事戦略部 プリンシパル 吉田 寿
◆マネジメントの3つの役割
 ピーター・F・ドラッカーによれば、マネ
ジメントには本来、次の3つの役割がある
(『エッセンシヤル版/マネジメント』ダイ
ヤモンド社、P.9)o
(1)自らの組織に特有の使命を果たす
(2)仕事を通じて働く人たちを生かす
(3)自らが社会に与える影響を処理するとと
 もに、社会の問題について貢献する
 つまり、それぞれの組織の目的を果たし、
そこで自己実現を目指して働いている人を生
かし、社会的存在としての組織の機能を果た
すことが、マネジメントのエッセンスである
とドラッカーは唱えている。
 これまでの日本企業において、マネジメン
トの役割や機能をここまできちんと認識し実
践してきた企業が、いったいどれほどあった
だろうか.しかし時代の趨勢は、このマネジ
メントの本来的な役割や意義を改めて考えさ
せられるタイミングに来ていると言えるので
ある。
◆マネジメントカが問われる
 これまでの日本企業では、「管理」という
言葉はあっても、「マネジメント」という言
葉が日常的に使われることはなかった.
「管理」という言葉の持つ語感の響きは、何
か冷たく、ある種無機質なニュアンスが強か
った.仕事についても、私情を交えず厳格に
処理するといった感じがつきまとっていた。
 これに対してマネジメントの基本は、戦略
を策定し、組織を統制して、部下を育成し、
職場環境や組織風土を醸成し、日常の業務オ
ペレーションを監督することにある。この
“似て非なる”「管理」と「マネジメント」
との間で、いままさに日本企業は大きな課題
を突きつけられているのである。
 その原因は、日本企業における成果主義の
漫透にある。とりわけ成果測定ツールとして
導入された目標管理制度を適正に運用させよ
うとすると、にわかにこのマネジメントの基
本が問われてくる.平たく言えば、これは
「PDCA」(プラン・ドウ・チェック・アク
ション) のマネジメント・サイクルをどう回
していくかという現実的な問題なのである.
 例えば、いきなり目標を立てろと言われて
も、自分の目標を正しく認識できずに当惑し
てしまう社員たち.自分の部下たちに適正な
目標を与えようと試みても、うまく展開でき
ない管理者たち.これらは、成果主義を導入
した企業のそこここで見られる日常的な光景
である.
 いったい日本の企業は、これまでどのよう
な管理者教育を行ってきたのかと、懐疑的な
思いに駆られてしまう。とりわけ成果主義を
巡る昨今の錯綜や試行錯誤を見ていると、真
の課題がこの本来的な意味でのマネジメント
カの向上にあると思われてならないのだ.

◆真のマネジメント人材の育成に向けて
 企業の浮沈は、言うまでもなく“人”の能
力や資質にかかっている。とりわけ、継続的
に成果を創出していくためには、自己のミッ
ションや成果に対する正しい認識と確実な実
行が求められてくる。しかし、一人ひとりの
社員の力には限界があり、その総力を結集し
て組織力にまで高めていくためには、さらに
高次のマネジメントカが必要なのである。
 マネジメントの質を高めていくためには、
現場における業務やミッションに対する「コ
ミットメント」(必達日標)意識を高め、組
織や人材に対するマネジメント概念を再認識
させて、日常の業務管理レベルでのプロセ
ス・マネジメント (進捗管理)をより強化す
る必要性が出てくる.
 これらを実践していくためにも、企業各社
が中・長期的視野で取り組むべき最重要課題
が真のマネジメント人材の育成なのである。

※次回は「(3)リーダーシップを磨く」です


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:12