lJFJ経営情報クラブ
【頭の引き出しの多い人の習慣(6)】
知識を加工して引き出しをホンモノにする
 精袖科医 和田 秀樹
 前回(2004.8.20No.04・153)、アウトプ
ットをすることで知識を増やすテクニックを
論じた。確かに日本人はインプットには熱心
だが、アウトプットが少ない。試験というも
のは、そういう中で、数少ないアウトプット
の機会なのだが、社会人になるとこれもなく
なる。
 私は、頭の中のコンテンツは多ければ多い
ほど使えると思っているので、詰め込み教育
そのものは大いに支持している。問題は詰め
込んだ知識をアウトプットしないことと、そ
れを使って考えないことだと思っている。
 ここで改めて強調したいのは、知識という
ものは、そのまま使える機会は意外に少なく、
それを加工したり、組み合わせたりすること
で価値が出るということだ。
 以前(2002.11.8No.02−148)にも紹介し
たが、認知心理学の世界では、人間の頭の良
さは問題解決能力の高さで規定される。この
問題解決能力とは、知識を用いて推論を行う
能力とされているのだ。つまり、これまで学
習したり、経験したりして頭の中に入った知
識を用いて、あれこれと考えていくことで答
えを出せるかということだ。
 その際に、クイズ番組や学校の暗記物の試
験でない限りは、これまで通りの知識をその
まま使って答えが出せることはあまりない。
 これまでの知識の中で、現在の市場動向や
対象顧客などに一番当てはまりそうなものを
選んだり、多少アレンジしたり、あるいは既
知の知識を組み合わせたりすることで、よい
答えを出せるということだ。
 たとえば、フレンチのシェフが、あっさり
したものが好きな人が多く、海産物が豊富な
日本で、フレンチレストランを成功させよう
とする場合、和食や懐石のレシピについての
知識があるなら、それをアレンジできるとい
うわけである。
 こうして自分なりに知識を加工して得られ
た新たな知識は、自分のオリジナルの引き出
しになる。和食をアレンジしたフレンチのレ
シピも、そのシェフのオリジナルのように言
われることだろう。実際、せの中にあまたあ
る特許や新発明も、ほとんどが完全な独創で
はなく、既知の知識の組み合わせでできたも
のなのだ。
 知識がたくさんあるとオリジナリティがな
くなると言われるのは、要するに、知識をそ
のまま使おうとして加工しないからだ。前述
の和食をアレンジしたフレンチにしても、そ
の店で食べたり、雑誌で読んだだけでそのレ
シピを知識にしては、オリジナルとは盲えな
い。二番煎じと言われるだけである(それで
もビジネスが成り立つことはあるが)。知識
が多いと、自分の知識の範囲内でだけ答えを
出そうとして、頭を使って考えなくなる。そ
れが怖いのである。
 自分の身につけた知識をブラッシュアップ
して、さらに頭の引き出しを増やし、オリジ
ナルなものにするために、常日頃、自分の知
識をいろいろなことに応用できないかと考え
をめぐらす習慣をぜひ身につけたいものだ。
(和田秀樹HP http://wwwhidekiwada.com/)


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:08