UFJ経営情報クラブ
 関西経済は復活したのか
UFJ総合研究所 調査部(大阪) 主任研究員 鶴岡 武
 #clear関西経済をウォッチしている筆者にとって、
枕詞は常に「長期低迷」であった。ところが、
2002年1月に始まった景気回復局面では、
全国並みもしくはそれ以上のパフォーマンス
を挙げている。関西経済は復活したのか。
 関西経済の低迷が始まった大阪万博から
35年、日本で2度目となる総合的な万博が
愛知県で開かれている。名古屋経済の強さに
ついて特集が組まれ、関連本の売れ行きも良
いようである。そこでは、関西が名古屋圏に
脅かされる引立役で扱われることが多い。実
際、関西は大阪万博の終了後、2度のオイル
ショックを受けて、相対的な衰退傾向が続い
た。関西再生の起爆剤として期待された関西
国際空港も、存分にその力を活かしきれてい
ない状況であり、名古屋圏の勢いに迫られて
いる。
 しかし、2002年1月からの景気拡大局面
においては、全国並みもしくはそれ以上のパ
フォーマンスを挙げている。内閣府の景気ウ
ォッチヤー調査を四半期平均にして見ると、
景気の現状水準判断DI(ディフユージョン
インデックス:景気局面の判断、予測と景気
転換点の判定に用いる指標)は2003年7−9
月期から関西が全国を上回り続けている。足
元2005年1−3月期は、全国41.6に対して、
関西が44.5であり、関西を上回るのは、東
海の46.0だけである。日本銀行の全国企業
短期経済観測調査も同様である。関西は
2004年3月調査以降、全国を上回り、足元
2005年3月調査では、全国▲2に対して、
関西が+5である。関東全体として公表はさ
れていないが、公表ベースで関西を上回って
いるのは東海の+8だけで、プラスで推移し
ているのもこの2地区だけである。
 なぜ、関西経済のパフォーマンスが良いの
か。薄型テレビやデジタルカメラ、DVD と
いったデジタル家電の牽引が一因であるが、
中国経済がプラスの影響として働いたことが
大きい。
 関西の中国向け輸出の割合は、もともと全
国より高い。全国の最大の輸出先国は依然米
国であるが、関西では既に2003年から中国
が最大の輸出先国となっている。2004年の
中国向け輸出割合は18.0%と全国
(13.1%)を大きく上回る。ただし、これま
でのつながりは、繊維や機械関連産業の加工
組立工程の移転といった色彩が強く、域内産
業にはマイナスの影響が大きかった。
 今回の回復局面では、加熱する中国経済が
最終需要地となったことで、鉄鋼や化学とい
った素材型産業や設備投資関連の一般機械が
好調に推移している。鉱工業生産指数に占め
る鉄鋼、化学工業の割合は、2000年時点で
5・1%、12.8%とそれぞれ全国(4.4%、
11.7%)を上画っている。
 従来型の成熟産業が、中国という需要地の
出現で復活したことで、その割合の高い関西
は恩恵を受けた。このため、従来型製品の方
が、最先端の製品よりも多くの利益を生み出
すような、特殊な状況も一部では起きている。
 ただし、従来型の需要はそう長くも続かな
い。いずれ中国がその需要に見合う生産力を
身につけるであろうし、その前に中国が不安
定になるリスクも抱えている。今得た利益を、
さらなる競争力の向上、特に筋肉質な経営体
質の構築に向けていかねばならない。中国と
いう牽引役が去ったとき、関西経済が本当に
復活したのか、その真価が問われる。


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Last-modified: 2007-04-22 (日) 10:26:31