経済は復活しつつも、人口の転出超過が続く関西
 UFJ総合研究所 調査部(大阪) 主任研究員 鶴岡 武
 関西経済はデジタル関連需要と中国経済が牽引し、復活しつつあるが、総務省「住民基本台帳人口移動報告」でみた人口の転出超過(「域内から域外への転出者」が「域外から域内への転入者」を上回る状態)は続いている。
 転出入のきっかけは、就業や就学であることが多い。就学は別として、当該地域の経済が相対的に低迷すると、域外への就業が増え、転出超過になりがちである。さらに、これが
もとで域内人口は伸び悩み、個人を相手とす
るサービス業が奮わなくなることで、経済は
スパイラル的な低迷に陥りかねない。
 2004年の関西からの転出者は245,238人、
関西への転入者は222,957人、その差である
転出超過は22,281人であった。関西の転出
超過は今に始まったことではなく、1974年
以降30年間にわたって続いている。その累
計は、鳥取県の人口(約61万人、2004年
10月1日現在)を上回る674,473人であり、
−つの県に匹敵する人口が域外に転出超過と
なっている。
 足元の2005年1−3月期は、景気回復の影
響もあり転出超過は前年同期に比べ1,611人
減少と限界的には改善している。ただし、詳
細にみると厳しい状況に変わりはない。移動
前後の住所地別にみると、首都圏(東京、千
葉、埼玉、神奈川の1都3県)との関係では
転出超過が続き、その幅も9,094人と78人
減少しただけである。改善したのは、中国、
四国、九州からの転入超過が増えたためであ
るが、転入者は前年に比べ634人減少して
おり、転出者が前年比2,245人も減少したこ
とが改善の主因である。関西経済は復活しつ
つあるが、域外から人を呼び寄せるだけの力
強さには至っていない。
 個別企業では、人口の転出超過を商機にす
ることも可能である。実際、引越専業会社に
は大阪本社の企業が多いが、一番の出発超過
地であることも理由の−つであろう。しかし、
地域経済をマクロで考えれば、転出超過への
対応策が必要である。
 総務省「国勢調査」で年齢階級別人口を 5
年前の同じ出生年の人口(例えば、2000年
の20〜24歳に対しては1995年の15〜19
歳が同じ出生年の人口)と比較すると、首都
圏、関西ともに15〜19、20〜24歳で人口が
増加しこ 25歳以上の年齢層で減少するとい
う傾向がある。異なるのは、転入超過が続く
首都圏や転入超過時の関西は、15〜24歳の
増加が25歳以上の減少を上回るが、転出超
過に転じてからの関西は、25歳以上の減少
が15〜24歳の増加を上回ることである。
 就業に伴う転出は、企業や個人の経済合理
性に基づいた行動であり止め難い。即効性の
ある雇用対策も重要ではあるが、経済が復活
しつつある今、最も注力すべきは、関西が競
争力を有する教育分野を一層強め、若年層を
惹きつけることである。2007年4月に、中
国の有力な総合大学である同済大学の分校が
大阪市に開設される。関西は、アジアとの緊
密性を活かし、このようなアジアの若い知恵
や力を取り込む施策を数多く積み重ねること
で、本当に復活していくのだと思う。


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Last-modified: 2007-09-02 (日) 15:53:54