UFJ経営情報クラブ
【正しい成果主義(6)】
適正運用こそが制度の死命を制す
UFJ総合研究所 組織人事戦略部(東京)
プリンシパル 吉田 寿
◆制度の運用プロセスを整備する
 成果主義人事は、制度の構築に尽力するだ
けでは不十分だ。しかし、成果主義人事の導
入・運用に躓いている企業の多くは、制度が
形になってしまうと、とたんに安心してしま
うか、そこで力尽きてしまい、そこから先を
フォローできないケースが大半である。
 ここでも認識を改めるべきは、「適正運用
こそが制度の死命を制す」という事実である。
 例えば、目標管理を主軸とした成果主義人
事の運用プロセスを想定していただきたい。
まず、目標設定の段階で何を行うか。少なく
とも、評価される本人(被評価者)が自分の
目標を立てなければならない。それを受けて
上司_(一次評価者)と面談をしなければなら
ない。その面談の際に何を確認するかをルー
ル化しなければならない。
 また、期末評価まで何もしなくていいとい
うものでもない。日常レベルでの部下の目標
の進捗管理が上司の重要な仕事となる。また、
少なくとも期中における中間レビューやチェ
ックの方法は、ルール化しておく必要がある。
 期末の段階での評価のステップも重要であ
る。まず自己評価させるかどうか。評価者・
被評価者の対応関係は、組織の実情を反映し
て適切に設定されているか。二次評価者の役
割や評価調整機能は、きちんと整備されてい
るか。本人への評価結果のフイードバックは
どのように行われるか等々、この部分だけを
取り上げてもやるべきことは実に多い。
◆細部運用ルールを確立する
 現場で成果主義を機能させるためには、現
場にとって運用上の課題となることをきちん
と整理・分析し、ルール化するという配慮が
非常に重要である。
 制度が現場で運用され始めると、実に多く
の現実が明らかになってくる。実際にコンサ
ルティングの現場で出てきた疑問や課題を上
げてみると、次のようなものがある。
 例えば、設定した目標の難易度やレベルの
判定方法。個別目標の達成度に応じた評価方
法。組織変更や異動に伴う目標の見直し方法。
設定する目標の妥当な数。目標の具体的な取
り上げ方。定型業務の取り扱い。事前に活動
計画や手段・方法が想定しにくいプロセス目
標の立て方。兼業者、応援者、プロジェクト
参加者などの取り扱い。目標設定l評価時の
調整方法。苦情処理への対応方法。このあた
りは、必ずと言っていいほど、制度の運用段
階で栓討課題に上がってくる常連である。
 この段階では、このような運用ノウハウを
蓄積し、制度をさらに進化させていく必要性
が出てくる。
 また、この段階になると、人事部がすべて
のプロセスに関与できるわけではないので、
現場の管理者クラスヘの適切な真任と権擬の
委譲が必要となる。何でもかんでも人事がや
らねばならないと思い込むのは、ある種「人
事の傲慢」である。むしろ現場と密なコミュ
ニケーションをとり連携し合って、新制度を
さらに良いものにレベル・アップさせるのが、
人事の重要な仕事だと再認識するべきなのだ。
◆「地道に、愚直に、徹底的に」運用する
「制度の運用段階で何か得策はありますか」
という質問をよく受ける。しかし、これに対
しては、「特段の特効薬はありません」とお
答えするのが常である。別に無責任にそう答
えているわけではなく、本当に制度の適正運
用に得策はなく、あえて言えば「地道に、愚
直に、徹底的に」運用するということに尽き
ると思われるからだ。
 つまり、継続的な改善努力によって、連結
純利益を初の−兆円突破に導いたトヨタのよ
うに、日々の継続的改善を現場レベルで積み
重ねていくことが、明日の「正しい成果主
義」の実現につながるということなのである。
 ※次桓訓は最終回「(7)マネジメントの力で
  真の成果主義を実現する」です。


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:08