UFJ総研/成果主義の定義をとらえ直す?

成果主義の定義をとらえ直す

 UFJ総合研究所 組織人事戦略部 プリンシパル 吉田 寿

◆「成果主義」に何を求めるか?

 正しい成果主義を実現するには、いったい

何が必要か.今回からは、そのポイントにつ

いて数回にわたり解説を加えたい.

 まず、自分の会社にとっての「成果」とは

何かを真筆に議論し、定義することから始め

よう.ここがブレると、そもそも成果主義自

体が誤った方向に走ってしまうので特に注意

が必要だ.前回 (2004.5.11No.04−086)で

も触れたが、この部分に関する社内の共通認

識が形成されなければ、出発点において既に

成果主義は破綻していると言っても過言では

ないのである.

 我々がコンサルティングの現場で実践して

いる成果主義は、その企業の文化や組織風土

自体に深く根ざしたものであり、それを尊重

し具現化するための制度や仕組みの総称であ

る.間違っても賃金制度だけを意味する呼称

ではない.さらに、これも重要なポイントだ

が、成果主義の本質は「いかに人を育てる

か」この一点に集中するものなのである.

 そして、成果主義の基本とは、仕事に携わ

る個人がミッション(期待役割)をどの程度

達成したか、そのプロセスから結果に至る過

程での具体的な行動と成果を評価する.この

基本を押さえた上で、次の議論に移りたい。

◆期待される「役割」「行動」「成果」の定義

 正しい成果主義とはまた、会社側の社員に

対する「事前期待」をその前提とする.これ

は、成果主義自体の定義の明確化と同じくら

い重要なポイントである.

 いわゆる「期待役割」「期待行動」そして

「期待成果」である.平たく言えば、どんな

組織上のミッションを認識して、正しい行動

を取り、期待される成果を実現するか、この

−連の流れに関する定義を明確化するのであ

る。これが一通り審理されれば、職種や職位、

等級別の評価基準に落とし込むことができる.

 稟際の成果主義人事の制度構築フェーズで

は、このそれぞれの定義にかなりの暁闇と労

力を費やす必要が出てくる.

 最近では、それぞれの定義を作り込むプロ

セスで、部課長クラスの主要メンバーを集め.

研修や検討会形式で詳細に内容を検討するケ

ースも増えてきた.制度の設計段階でできる

だけ多くのキーマンを巻き込むことで、新制

度自体に対する関係者たちの理解度を深める

ことと、新制度は自分たちが設計に関与して

作ったという 「当事者意識」を醸成させるこ

と、そして制度自体に「魂」を吹き込む意味

合いでも、このような検討プロセスを踏むこ

とは実に意義あることなのである.

◆実態に合わせ「成果」の定義を変える

 ここで注意しなければならないのは、成果

主義の定義などと言うと、何か画一的な定義

を社内の全職種に適用すべきものと捉えられ

がちな点である.例えば「営業は数値目標で

捉えられるから評価しやすいが、他の職種は

難しい」とか、「生産現場に成果主義は馴染

みにくい」といった声である.しかし、これ

も成果主義に対する大きな誤解である.

 正しい成果主義における成果の定義は、そ

の職種ごとに違ってしかるべきものと考えて

いる.例えば、確かに営業部門は売上や利益

とい?た声量目標が中心となるが、管理部門

や−般事務は、むしろ年度の業務計画に基づ

く業務目標や定性目標が中心となる.生産部

門なら、個人成果というよりはラインやチー

ム、班単位の目標に対する達成度評価だった

りするだろう.

 このように、それぞれの職種や仕事に応じ

た成果目標の立て方を考慮し、それに即した

評価の仕方を社内に存在している仕事の数だ

け詳細に検討するのである.そこから、正し

い成果主義の評価方法が生まれてくると知る

べきである.

 ※次回は「(4)正しい成果主義に基づく評

  価の実践」です。


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:09