UFJ経営情報クラブ 2005・9.6 No・05・163
【社員の「やる気」を料学する(6)最顔回】
  ES調査を施策に活かす
 UFJ総合研究所 組織人事戦略部(東京) プリンシパル 吉田 寿
◆調査結果をフイードバックする
 ES(社員満足度)調査の内容がまとまっ
たら、最後は結果のフイードバックである。
 ES調査を実施している企業の中には、調
査結果をフイードバックしていないところも
散見されるが、少なくとも回答者へのフイー
ドバックは必須だと心得るべきだろう。ただ
し、誰を対象として、どこまで開示するかは
十分な検討が必要となる。それに続く具体的
な施策の検討にも影響するからである。
 我々が集計結果のフイードバック資料を作
成する際には、おおよそ対象を役員、部門長、
全社員の3階層に分けている。
 役員層に対しては、人事施策の意思決定に
必要なあらゆるデータを公開する。部門長ク
ラスであれば、担当部門の現状把握と今後の
施策立案への展開を狙って、当該部門のデ・
タのみを全社傾向と比較して開示する。全社
員に対しては、ES調査協力への謝意も込め
たフイードバックとして、全社傾向データを
公開する。それぞれ異なる対象者に対して、
3種類の個別フイードバック・シートを作成
するのである。
 このような調査結果を踏まえて、全社で取
り組むべき課題、各部門で取り組むべき課題、
人事部門が独自に取り組むべき課題を整理し、
−定の検討期間を経て、改善課題の具体的な
解決策を次年度の経営計画に含めて提出する
よう義務づけている企業も実際にある。
◆分析結果を活用する
 フイードバックされた分析結果は、活用さ
れなければ意味がない。それでは、どのよう
な課題をどう施策に展開すればいいのだろう
か。少し具体例で見てみよう。
 例えば、調査結果から組織階層別にかなり
のギャップが存在していることが明らかにな
れば、管理者層を対象としたフイードバック
研修を実施して、まずは現状をよく認識して
もらう。そして、調査結果を踏まえた改善施
策を具体的な実施計画に落とすよう指示する。
 また、営業拠点別に見て高水準のES拠点
と低水準のES拠点が明確に現れているよう
な場合には、高水準拠点の徹底分析によるベ
ンチマークを実施して、ESが高い根本的な
要因を突き止める。拠点の業績評価指標を検
討する必要がある場合l壬はそれを実施し、拠
点別業績評価基準の策定といった人事施策へ
と展開する。
 一方、社員のモチベーションの停滞が大問
題だという場合には、組織機構や風土改革に
取り組んで、責任と権限の範囲の明確化やコ
ミュニケーション戦略の立案・実施といった
具体的な施策を策定する。現行の人事制度に
問題があり、それが中・長期的なモチベーシ
ョンの停滞や不公平感の蔓延につながってい
るのであれば、新人事制度の設計l導入や運
用支援をきちんと実施していくことになる。
 このように、今後の人事施策を展開する上
で、ES調査の結果が有効に活用されていく
のが望ましいやり方と言えるだろう。
◆継続的な調査の必要性
 ここで着目すべきは、ES調査というもの
は単年度に限られた試みではなく、継続性が
特に重要だということである。
 ES調査を定期的・継続的に実施すること
で、前年度に実施した施策の効果も測定でき、
またその年の調査目的に応じて、新たな課題
仮説を設問項目に盛り込むことも可能となる。
何よりも、定点観測的なES調査の実施と適
切な施策展開によって、総合満足度の着実な
改善が図られることとなる。
 最後に改めて確認すれば、ES調査を実施
する長期的な目的は、課題抽出から改善・評
価に至る一連のサイクルにES調査を組み込
むことで、継続的な企業価植創造の実現に寄
与するということなのである。
※次回からは新シリーズ「人間力の時代」(仮
 題)が始まります。ご期待ください。


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:09