UFJ経営情報クラブ
【頭の引き出しの多い人の習慣(7)】
 これからの時代、知的謙虚さと知的好奇心が最後は勝つ
 精神科医 和田 秀樹
 長らくご愛読戴いたシリーズ【頭の引き出
しの多い人の習慣】も今回が最終回となる。
多少なりと、知識を増やすテクニックをつか
んでいただけたなら幸いである。
 ただ、物知りとか、知識人とか言われる人
に努力した結果なれたとしても、知識という
ものは常にアップデートしていかないと古く
もなるし、人々の関心も得られない。
 しかしながら、私の見るところ、日本では
偉くなったり、肩書きがついたりすると、そ
のとたんに勉強をろくにしなくなる人が多い。
 たとえば大学教授などは、教授になるまで
は論文もいっぱい書いて非常に有能な物知り
であったのが、教授になると定年まで身分が
保障される上に、その肩書きで人が話を聞い
てくれたり、本を書けたりするので、勉強を
しなくなる人が意外に多い。そうこうするう
ちに「あの先生の話は古い」と言われるのだ
が、本人は裸の王様だったりする。
 最近、榊原英資先生と共著で『本物の実力
のつけ方』という本を出したのだが、その中
で印象深かったのは、榊原先生が知的謙虚さ
の大切さを強調されたことだ。要するに、
「わかった気になるな」「世の中に100%確
かなことなどない」「常にもっと知りたい、
もっと勉強しなくてはと思え」という考え方
だ。自分などまだまだという謙虚さが、人間
を成長させつづけるのである。
 これは世間でいう腰の低さとは別問題だと
榊原先生は語っておられたが、私が思うには、
偉くなるほど人にものが聞きやすいし、頭を
下げる価値も上がる。下つ端にわからないこ
とを聞かれて面倒くさいことでも、偉い人に
「最近のITのことを教えてほしい」と頼ま
れれば、大抵の人は嬉しいはずだ。偉くなる
ほど、勉強もしやすくなるし、いろいろなこ
とを教えてもらいやすくなるのに、偉くなる
ほど自己過信に陥って勉強しなくなるとすれ
ば、これほど損なことはない。一生涯成長を
つづけ、頭の引き出しの多い人として活躍し
つづけたいのであれば、このような知的謙虚
さは必須のものだろう。
 もう一つ、頭の引き出しの多い人でいつづ
けるための条件は、知的好奇心である。
 もちろんあれも知りたい、これも知りたい
という好奇心旺盛な人間が、頭の引き出しが
多くなるのは当然のこととも言えるが、これ
からの時代を生き延びていくためにも好奇心
は肝要になってくるだろう。
 この連載で、何度か認知心理学の世界で頭
のよさとは問題解決能力であると説いてきた
わけだが、正解のない時代、理論どおりにこ
とが運ばない時代には、与えられた問題をこ
なすだけでは社会の成功者にはなれない。む
しろ問題を自ら発見する能力、自らに問題を
与える能力が重要なのだ。この問題を見つけ
てやろうという生き方のスタンスこそが知的
好奇心である。
 自分で問題を発見できれば、人とは違う頭
の引き出しができる。人の持たない引き出し
を持つことこそ、時代の勝者になるための条
件と言えるだろう。
(和田秀樹HP http://www.hidekiwada.com/


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:07