社員の「やる気」を科学する(3)】
個別満足度の現状を知る
 UFJ総合研究所 組織人事戦略部(東京) プリンシパル 吉田 寿
◆社員ロイヤルティの高さを知る
 ES(社員満足度)調査の項目の中でまず
明らかにすベきは、社員の会社に対するロイ
ヤルティやコミットメントの高さである。こ
の場合、着目すべき代表指標は2つある。1
つは前回(2005.5.10No.05−084)取り上げ
た「総合満足度」であり、もう1つが「勤続
意向」(裏を返せば「転職意向」)だ。
 総合満足度の場合、「非常に満足」から
「非常に不満」まで5段階とか7段階に区切
つて質問し、その回答段階のそれぞれに点数
を与えて平均点を出してみる。例えば、5段
階なら1〜5点、7段階なら1〜7点である。
 これまでの我々の調査結果から言えば、
ES調査を初めて実施する企業の場合、だい
たいその中間値を少し超えるぐらいのスコア
になる場合が多い。例えば、5段階なら 3・2、
7段階なら4.3といった感じである。したが
って、初回調査で仮にこの中間値を下回るス
コアが出た場合には、まず組織としては、こ
の中間値をクリアすることを目指して各種の
施策を考えていくことが望ましい。
 一方、勤続意向の場合には、個別設問の中
で、例えぱ「今後もこの会社で働き続けた
い」といった項目を代表指標として、その集
計結果を見ることになる。この間いに対して
例えば「そう思う」、「まあそう思う」、
「あまりそう思わない」、「そう思わない」
の4段階で聞いた場合、「そう思う」、「ま
あそう思う」と答えた層を勤続意向が高い層、
「あまりそう思わない」、「そう思わない」
と答えた層を勤続意向が低い層と見る。もち
ろん、勤続意向が高い層の比率が高いことが
重要であり、もし仮に勤続意向が低い層の全
体に占める割合が大きい場合には、その根本
原因をさらに究明することになっていく。
◆モチベーションの源泉はどこに?
 さて、ここで社員のモチべ−ション(やる
気)の源泉がどのあたりにあるのかを突き止
めておく必要性が出てくるだろう。これは、
個別満足度の高低を縦軸に、総合満足度に対
する影響度を横軸に置いた満足度構造の分析
(重回帰分析)を実施することになる。
 これを4つの象限に区切って考えた場合、
例えば、個別の満足度項目の水準が高く、総
合満足度への影響度も高いゾーンに位置して
いる項目が現時点での「モチベーションの源
泉」と見なされる。−方、総合満足度への影
響度が高いにもかかわらず個別項目の満足度
が低いゾーンが「最優先改善課題」となる。
つまり、このゾーンに出てくる項目が、社員
の満足度を引き上げていくうえで最優先に考
慮すべき要改善検討項目ということだ。
 一方、個別項目の満足度は高いが総合満足
度への影響はそれほどでもない場合には、
「現状維持項目」となる。つまり、ここに出
てくる項目群は、とりあえずは:現状を維持し
ておけばよいということである。個別満足度
も低く、総合満足度への影響度も低いゾーン
は、「優先度の最も低い項目」と判断できる。
 ES調査においては、経営資源は有限であ
ることを前提に、その限りある資源をどこに
重点配分していくか、その意思決定のための
戦略ツールであると、我々は位置づけている。
◆個別満足度から今後の施策を考える
 各満足度項目の水準比較や構造分析などを
通じて、組織としての全体傾向が把握できた
ら、次は、組織や回答者属性といったセグメ
ント別にクロス集計を実施して、注目すべき
問題が現れた組織や属性を明らかにしていく。
 例えば、総合満足度や報酬水準、仕事のや
りがいなどの個別項目も、特定の組織や階層、
社員属性に特徴的に現れる傾向もあるので、
特に全社と比較して問題となるような場合に
は、その個別属性の個別項目に限って今後の
対策を考えていくということになる。
※次回は「セグメント別満足度を吟味する」
(仮題)です。


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:09