【頭の引き出しの多い人の習慣(4)】
頭の引き出しを増やすテクニック
精紳科医 和田 秀樹
 前回 く2004.6.11No.04・109)、記憶をよ
くするためには記憶のメカニズムを知ること
だという話をした.
 そのメカニズムを知り、理解に努めれば記
憶がよくなることはわかってもらえたと思う.
 それでも、私のもとには記憶をよくすると
っておきのテクニックがあるはずだと訪ねて
くる人が多い.実際、私はすばらしい答えを
もっている.
 しかし、実は、記憶をよくする最高のテク
ニックというのは、拍子抜けするくらいつま
らないものだ.
 それは復習することである.
 復習すると記憶に残るということを疑う人
はいないだろう.
 最近の脳科学では、新たに入力された情報
はいったん脳の中の海馬という部分に蓄えら
れるが、その中で重要と知覚された情報を脳
の側頭葉に転写して、長期に残る記憶にする
という.
 ところで、海馬がどういう記憶を重要と感
じるかというと、何度も出会う情報だという。
人間も生物なので、きわめて単純な情報の選
択を脳が行うのである.つまり、復習をする
ことで、脳が重要な情報だと認知して、記憶
に残るようにするのだ.
 では、復習はいつしてもいいかというと、
実は、有効期限がある.無意味なことばを被
験者にいくつか覚えさせて、数日後にはすっ
かりそれを忘れていたとしよう.ところが、
再度、同じことばを覚えさせた場合、前より
覚えるのにかかる時間が短くなっている.す
っかり忘れているはずなのに、脳が覚えてい
たのである.ところが、1ケ月以上のインタ
ーバルを置くと、かかる時間が1回目と同じ
になってしまう。つまり、1ケ月以上経つと
脳に記憶の痕跡がなくなるのだ.そういうわ
けで、復習するにしても、1ケ月以内にしな
いと意味がない.
 復習が最高のテクニックというと当たり前
のように思うだろうが、歳をとるにつれ、復
習をしなくなるものだ。受験生時代は暗記力
が抜群だったのに、いまは本を読んでも覚え
られないと嘆く人が多いが、そういう人は、
その本を読み返したり、大事なことばをメモ
にとるような形で復習をしているのだろう
か? 受験生時代、教科書を1回読むだけで、
覚えられていただろうか? おそらくは復習
不足が記憶力低下の元凶のはずだ.
 もう一つの、記憶力をよくするとっておき
のテクニックは「受け売り」である.
 実は、日本人は記憶の入力と貯蔵には熱心
だが、出力をあまりやらない.すると肝心な
ときに、覚えたはずのことが出てこなかった
り、使えなかったりする.そこで、本で読ん
だことや、人に聞いた話、テレビで見たこと
などを受け売りするのだ.
 これは出力のトレーニングになるだけでな
く、人に話すために理解が深まるので入力も
よくなるし、またよい形での復習にもなる.
一石二鳥にも三鳥にもなる、まさに記憶を3
段階でよくするテクニックの王道といえる.
 単純なテクニックをバカにしていては頭の
引き出しは増えないことを知っておきたい。
(和田秀樹HP http://www.hidekiwada.com/


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Last-modified: 2006-08-19 (土) 10:56:08