iPad vs XOOM(Android ICS) ソフトキーボード対決

Honeycomb の時にはアプリのレスポンスが悪く日本語入力を行う気になれなかった。iPad と比較するということがナンセンスに思えるほどの差があった。ICS へのアップデート後はレスポンスが改善されたので、改めて iPad (early 2012) の日本語入力環境と比較してみた。

 Android はiOS と異なり IM を任意のものに変えられる(iOS の ATOK はアプリで IM ではない)。Android には標準の日本語入力はなく、ベンダーが既存の IM ソフトや自社開発の日本語入力環境をインストールして販売している。XOOM には iWnn がインストールされていた。将来的には Google 日本語入力がシステム標準に組み込まれるのかもしれないが、現時点ではタブレットには正式対応しておらず(XOOM では動作しているが)キーボードでは使いものにならない。また、OS の制約か変換エンジンとキーボードはセットになっている(ATOK の変換エンジンを iWnn のキーボードで使うということは出来ない)。

縦横比による差

 これがかなり大きいと思う。iPad は対辺が9インチとXOOMの10インチと比較すると短いが、縦横比が異なるので横置きして使う場合に上下が XOOM より広い。このため、iPad のキーボードは上下長が Apple のPC用キーボードや Macbook のキーボードと1cm程度しか違わない。

 左右のキーピッチが大差のないキーボードレイアウトを比較してもiPadのほうが圧倒的にタイプミスが少ないのは上下長の差が大きいと思われる。

iPad(2012)

iPad のキーボードは安定のいい場所で使う分にはそれほどストレスが少ない。安物の物理キーボードより快適だ。キーのピッチが最も広くキーも大きい。

Apple の特許に、キーの判定範囲を次に入力されるであろう文字のキーによって動的に変化させるというものがある。予測変換で上位に上がる単語の次の文字のキーの判定を画面上に描かれているものよりも広くするのだ。このアシストにより、指が画面上のキーを正確に押せていなくても正しく押したように入力できるようになる。日本語でこれが使われているかどうか分からないが、ストレスが少ない。(iPad ソフトウェアキーボードの快適さの正体に書いたのでそちらもどうぞ)

 数字キーや記号入力のためにモードを切り替えなければならないのが手間だが、それらのために文字のキーを小さくするのでは本末転倒だろう。

 不満点としては、カーソル移動のための矢印キーがないことが挙げられる。物理キーボードだとshift+矢印キーで文字列選択ができる。長い文章を推敲するときには必須の機能といっていい。この度にスクリーンに手を伸ばさなければならないのは不便で無駄だ。

 iCloud を活用して Mac OS X のことえりと iOS の日本語変換辞書を同期できるようにして欲しい。PCで一括入力した辞書データを共用できればモバイルデバイスでメニューの奥深くにある辞書登録を行う必要がなくなる。

Android キーボード

 Android OS 4.0.3(ICS) 搭載のキーボード。半角英数字にしか使えないので使用する機会は(自分には)ほとんどない。ここでは、標準的なキーボードの使い心地を検証するためにテストした。

 キーピッチは iPad とほぼ同じくらいだが、上下は狭い。

 キーボードレイアウトはシンプルで分かりやすい、iPad に似た構成で矢印キーはない。iOS のソフトキーボードに矢印キーがないのはタッチオペレーションでやるべきという Apple の拘りによるのかと考えていたが、アメリカ人には矢印キーの重要性は低いのかもしれない。

 英語の先読み変換がついているので、英語で文章を書く機会がある人にはいいかもしれない。

Android iWnn IME

 XOOM に標準で搭載されていた日本語変換・キーボードアプリ。iWnn の成果をオムロンが Android に移植したもの。個人的には、XOOM 上では一番使いやすい。

 キーの配列は Android のキーボードとほぼ同等。矢印キーもある。が、上下も同等で入力効率は高くないが、Android ソフトキーボードの中では一番打ちやすいと感じる。

Android 日本語フルキーボード For Tablet

 JiS配列キーボードをソフトウェアで再現したキーボード。JIS配列でなければ困るといった人には有効かもしれない。

 反面、多くのキーを配列するためにキーの大きさがかなり小さい。特に、只でさえ狭い上下方向が数字キーと変換候補表示にとられて狭くなっている。さらにJIS配列により横にキーが多くピッチが狭い。物理キーボードならこの大きさでも手触りでなんとかできるが、ソフトウェアでは難しい。キーが小さいことによるミスの多発が PC 用キーボードと同じ配列というメリットを上回ってしまったので使っていない。

 特記事項として、Honeycombで使用した場合に非常にレスポンス良かったことを挙げておきたい。ICS アップデート後はシステムのレスポンス改善により他のキーボードの動きが速くなったので差は感じなくなった

 複数の文節を確定せずに入力すると途中で変換候補が表示されなくなる。変換キーを押せば十分なヒット率で変換してくれるが、文字入力の際に複数文節を入力してから変換キーを押す習慣を持っていると違和感がある。おそらく、変換時の負荷を減らすための策だろうが、ICS をデュアルコア以上のプロセッサで使う際には不要な配慮かもしれない。

(番外)Android Google 日本語入力Beta

 公式にはタブレットに対応していないが、XOOM では動いたので参考のみ。ちなみに、Honeycomb でも ICS でも動いた。

 PCでは windows も Mac でもGoogle 日本語入力にし辞書データも統合して使っている。辞書を google drive で同期できるようになれば更に便利になるだろう。

 タブレットによる使用を考慮していないのでキーの配列がちょっとあり得ないことになっている。エンジンの優秀さはすでに証明済なのでタブレット版に最適化したバージョンの開発を待ちたい。Google が考えるタブレット用ソフトキーボードを見せて欲しい。

トータル UX

 キーボードや IM とは違うが、入力環境という意味でここに書く。

 このブログは WordPress という CMS を使っていて、PCではブラウザで編集するが、iOS と Android 用のアプリもある。それぞれのバージョンによって若干仕様が異なっている。機能的には Android 版がリードしているが、入力画面の構成の違いにより、iPad の方がはるかに入力しやすい。只でさえ左右が広い XOOM の画面いっぱいに入力フィールドが広がるので左右の文字数が多すぎて入力しづらい。

 こういった、iOS アプリの UI の良さとiPadの入力環境の全てがあって Android と iPad の UX の大きな差になるのだ。これは、個々の能力やプロセッサのクロック周波数では比較でない(Android 同士では有効だが)。日経ナントカとか週刊なんとか ナントカメディアの編集者はこれに目をぶつっている。

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