ホームページにリンクしても消えてしまうので、メルマガの一部を引用した。
■2004-05-13■
■No.1659 Mainichi INTERACTIVE Mail
Cover Story★★…………………………………………………………………………………
携帯電話
ビジネスモデル激変で「乱世」の可能性
…………………………………………………………………………………★★Cover Story
2004年3月期決算では明暗を分けたドコモとKDDI。第3世代で先行したKDDIは好調、一方で出遅れたドコモは今後の巻き返しが期待される、と短期的な評価が定着したようだが、実はその裏で勢力地図が激変するような「乱世」の足音が聞えつつある。それは携帯電話のビジネスモデルの大きな変化だと考える。携帯電話を取り巻く変化をみながら近未来図を考えてみた。【中村 哲也】
■■番号ポータビリティー制度
日本の携帯電話各社のビジネスモデルは、「端末メーカーから仕入れた端末を値引きして販売、1台当たり数万円の初期コストを毎月数千円の利用料収入によって数ヶ月かけて回収する」というもの。つまり、新規ユーザー獲得の為には3万円も4万円も値引きされて販売されるのが当たり前となっている。しかし、これは契約する携帯電話会社を変えれば番号が変わってしまう、という現行制度の上で成り立つビジネスモデルだ。
しかし、番号ポータビリティー(契約会社が変わっても個人の電話番号が変化しない)制度の導入で事情が変わる可能性が大きい。これは利用料金低価格化や魅力的な新サービスなどが始まれば、すぐに別の携帯電話会社に乗り換えられるということになり、契約者の流動性が高まることを意味する。
すると「大幅値引きをして新規加入者を獲得し長期に渡って囲い込んで収入を得る」という図式が成り立たなくなる。すでに制度が導入された欧米諸国では大幅値引きのインセンティブはほとんどない。日本でも2006年を目標に番号ポータビリティー制度導入の準備が着々と進んでいるのだ。
■■海外端末メーカーの日本上陸
さらに番号ポータビリティー導入以上に、業界関係者が戦々恐々としているのは海外端末メーカーの日本上陸、つまり「黒船の襲来」である。たとえばドコモ向けに端末を納入する大手メーカーがある日突然、KDDI向けに高機能機種を販売開始することはなかった。その逆もしかりであった。しかし、そうした電話会社と端末メーカーの蜜月関係も終わりそうな気配だ。
すでにドコモでは第3世代携帯電話の廉価版機種の調達先にNokiaを加えている。日本では、携帯電話会社と端末メーカーとの関係があたかも計画経済のごとく固定的であったが常識が崩れる日が来るかもしれないのだ。
■■国際ローミングサービス
また「国際ローミングサービス」も見落とせない。自分の携帯電話が海外でも使える「国際ローミング」は、限定的には一部ですでに始まっている。今後、各国で第3世代サービスが主流となるにつれ、国際ローミングはますます普及すると予想される。
ここで考えなければいけないのは「私たちの携帯電話が海外でも使えるということは、海外の携帯電話も日本で使える」ということ。つまり海外の携帯電話が日本でも当たり前のように使える時代が来るといえる。いままで「日本」という島国の中だけで市場を考えていたものが、立ちゆかなくなる可能性があり、それが業界にのみならず社会に与える影響は計り知れない気がしてならない。
■■歴史はまた繰り返すか
過去10年以上、オペレーターの携帯電話会社の強力なリーダーシップのもと、計画経済的に成長を遂げた日本の携帯電話業界は、(1)番号ポータビリティー制度導入(2)国際ローミングサービス(3)海外端末メーカーの市場参入などが契機となり、携帯電話会社のリーダーシップが低下した途端に「乱世」へ突入する可能性がある。
この「乱世」では、「計画経済」に慣れきってしまった企業はシェアを低下させる可能性がある。一方で、高い技術力を有しながら「計画経済」に拘束されていた企業は実力で市場を勝ち取るチャンスともなる。あるいは、海外勢を含めた端末メーカーの再編、それを取り巻くソフトメーカーの再編が起きるのかもしれない。
「乱世」が来てどうなるのか? 未来予想図は簡単ではないが、一般に乱世を経て新興勢力が台頭するのが歴史の常。歴史はまた繰り返すとみる。
(中村 哲也 大和総研アナリスト) 1968年生まれ。92年3月京都大学文学部西洋史学科卒、4月伊藤忠商事入社。00年12月大和総研入社、企業調査第二部配属。現在、主にIT分野を担当。メールはte.nakamura@rc.dir.co.jp。
アナリストらしい論調だが、何をいっているのかさっぱり分からない。番号ポータビリティが影響するのははキャリア、海外端末メーカーの参入は端末メーカーだろ。それぞれは大波かもしれないが、キャリア・端末メーカーそれぞれの立場によって影響は全く違う。キャリア同志であっても、ポータビリティの影響の出方は違う。キャリアは回線数・トラフィック量、端末メーカーは台数で儲けるのだから。
番号が変わらないからといって、「すぐに別の携帯電話会社に乗り換えられるということになり、契約者の流動性が高まることを意味する」とは思えない。というより、「番号が変わる」ということの障害が、新サービスの魅力の前でどれだけ影響するのか懐疑的だ。それ以外の割引サービス(特に長期割引)をリセットしてでもキャリアを変えたいと感じているユーザーに番号が変わるということがそれほど障害になっているとは思えない。
「近未来図を考えてみた」と前書きして、近未来図が「乱世を経て新興勢力が台頭する」が結論?ノストラダムス並みの予言を書かれてもねえ。ただ、「未来予想図は簡単ではない」には同感。影響の出方について、素人考えにリストしてみる。
■■番号ポータビリティー制度
●キャリア:キャリアによって影響の出方が違うが、それほど大きくは変わらない。企業はキャリア変更なんて興味がないし、個人は番号なんか変わっても困らないだろう。
●端末メーカー:買い換えサイクルが短くなるなら吉だが、一段落すれば収まるだろう。ほとんどのメーカーが複数のキャリアに納入しているので、どちらで売れてもあまり関係はない。キャリアとの力関係で利益率が違ったりはするかもしれないが・・・
■■海外端末メーカーの日本上陸
●キャリア:魅力的な商品が増えるなら吉。サポートの教育費用が増えるくらいで、特に困ることはない。購買先が増えることで、端末メーカーへの交渉力アップも狙える。
●端末メーカー:競争相手が増えることは、シェアへの直接的影響が考えられるので、凶。ただし、通信規格が統一されて、海外への輸出が楽になれば吉に転ずる可能性もあり(同じ開発コストで市場が広がれば固定費比率が大きく下がる)。
■■国際ローミングサービス
●キャリア:特に関係はない。海外キャリアとの接続コストはかかるだろうが、通信機レベルでの互換性がIMT2000で確保されていれば大きな設備投資は要らないはず。とはいうものの、一時的な海外渡航のために普段使っている端末を買い換える人は少ないだろうから、利益の増大もあまり考えられない。
●端末メーカー:特に影響はない。「海外ローミング対応」が大きな魅力ではないので、根強いが小さな市場のままだろう。