河川探偵(Wazer)

 昔NHK教育テレビで「建築探偵」といった名称の番組があった(今調べたら「建築探偵・近代日本の洋館をさぐる (NHK人間大学)」だった)。どこかの大学の建築学の教授(藤森 照信)が日本国内の建築物について興味深い点を解説するという番組だった。自分が観たのは、明治時代の建築物だった。和洋折衷の様式など、歴史的にも基調な建築物が紹介されていた。これについて語ると長くなるので、別の機会に。

 今回のタイトル「河川探偵」とは、Waze 地図編集で河川を描く Wazer のことだ。前にも書いたが、Waze の地図はデフォルトでは道路しかない。だから、Waze の川、湖、海、公園は全て Wazer さんが手入力したものだ。

 川を描くのは難しい。というより面倒くさい。いや、非常に面倒くさい。道路を描くのと比較して数倍の時間と労力がかかる。面倒くさいのは、Waze のエディタの制限により、途中で作業を保留することが出来ないからだ。グラフィックソフトのように一体化することも出来ない。川の途中で保存してしまうと、既存のオブジェクトを変形させるしかなくなる。直線的なな編集点を一つ引っ張るだけで済むが蛇行した川をトレースするには一つ一つ編集点を増やしていかなければならない。かといって、小さなオブジェクトに分割すると後で編集を続ける際にオブジェクトが表示されないので完成した川と未入力の区別が難しくなる。さらに、編集点が増えるとエディタのエラーが増える。編集ミスがなくても「保存できませんでした」と表示されるようなる。そうなると行った編集は水の泡だ。前回保存したところからやり直しだ。しかも、川を編集しても編集ポイントは道路一本を修正するのと一緒だ。それでも、あえてそこに情熱を注ぐのが河川探偵だ。(ここについては「(waze 川を描く/地図読みの愉しみ)」に書いた)

 太い本流は衛星写真で簡単に確認できるが上流に逆上るに従って、細くなり蛇行する。木陰に隠れていたり、写真が不明瞭で道路と区別がつきにくいところが多くなる。そうなると、標高が高いであろう方向(山に近い方)を探す。上流を見つけたら、そこまでのルートを探す。これの繰り返し。

 川のある所に人が住み集落ができる。昔は川の流れを変えることができなかったので、川の蛇行はそのまま道になる。区画整理された平坦地に蛇行した植物帯があれば川か川跡と思って間違いない。なので、田舎で川を探すのは比較的楽だ。もし間違えて林の中を川を突っ切ったように川を描いても道路では通れないし元々目印にもならない(道路を走る車からは見えない)から Waze のナビ上は問題ない。

 一番苦労するのは都会だ。都会の川の多くは地下水路化されていて地表に出ていない。自分が描いた川で一番苦労したのは京都市の堀川だ。昔は堀川通沿いに川が流れていたが、今の衛星写真には存在しない。道路の下を流れているのだろう。堀川に沿った道だから堀川通なのに堀川を覆ってしまったのだ。こうなると、上流を探すのは非常に困難になる。こういう箇所は、神戸市や阪神間も多い。しかし、地下水路を通ってつながっている水路を見つけると楽しい。

 都会か田舎かに関わらず、下流付近の川幅からは想像できないくらい上流までの距離があることがある。本流を描いた後で、支流を描いていて「ここならすぐ終わるだろ」と思ってスタートしたら10km以上逆上ることがあってびっくりと同時にうんざりすることがある。しかし、こういった川を最上流まで遡って描き切った時には大きな達成感がある。これが河川探偵のモチベーションとなる。

 田舎の河川だと大半は小規模な砂防・貯水ダムに発していることが大半だ。こういったことも発見だった。もちろん、源流という意味ではそのダムに注ぐ小川だろうが、そこまでは描いていない(大きなダムだとそこに注ぎ込む川も太くて長いので独立した川として描くが)。

 自分がメインに活動している北摂地域(宝塚・西宮・芦屋・神戸市北部、三田市(Waze では「ミタ」と発音されるがw))、篠山市、三木市から福知山市、綾部市、亀岡市、京都市は山脈の谷間に平地ができたという地形だ。なので、川は山に沿って流れ、日本海側に流れる川と瀬戸内海に流れる川とが低い山一つ越えただけで隣接しているところがある。

 兵庫県の南西部に加古川市という市があり、大きな加古川という川の河口がある。自分の意からは直線で70kmくらいあって、縁遠い場所というイメージが有る。しかし、支流の源流は有馬温泉の近くから発していた。正確には六甲山か谷を挟んだ向かいの山の頂上付近から流れ下ったものだろうが、川として認識されるのは有馬街道沿いの用水路のようなものだ。

 風水について荒俣宏の作品で聞きかじった程度しか知らない。が、川を描いていると、山の連なりと川の流れを主軸にした地脈という考え方がよく分かる。川は農業に適した土地と水をもたらす。その流れは蛇行し、言葉が示すとおり龍のように見える。そして、蛇行した川は水害をもたらす。作物を流し家屋や人も流してその地をリセットする存在でもある。山の配置と川の位置を読み解き安全で肥沃な土地とすることは人類の願いだったはずだ。これこそが風水の発祥ではないかと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です