「オンライン書店の事実は誰も分からない」または 「GIGAZINE のアホ」

 記事全体にバイアスがかかっているようだが、一番ひどいのは表題になっている部分だ。

 大手出版社の本は紙の本も出ているものだろう。そして、紙版の本の売れ行きを考慮して、日本ほどではなくても、高い価格が設定されるだろう。平均売価が高いことにも現れている。だとしたら、評価が辛くなるのは当然だ。個人出版の240円の本と大手出版社から出されるプロの800円の本とでは同じ判定基準で評価しないだろう。満足度は主にコストパフォーマンスを示す。出版方法による満足度の違いを見るなら同じ価格帯のものを抽出して比較しないと意味が無い。記事には「個人出版作品が読者のニーズをより良く反映したうえに安く販売していると言い換えることもでき」とあるが、そんなことは分からない。これは、オリジナルの記事にはちゃんと記載されていた。というより、GIGAZINE のライターのような分析はどこにも見当たらない。

Note the shortest bar in one graph correlates to the tallest in the other. Is it possible that price impacts a book’s rating? Think about two meals you might have: one is a steak dinner for $10; the other is a steak dinner that costs four times as much. An average experience from both meals could result in a 4-star for the $10 steak but a 1-star for the $40 steak. That’s because overall customer satisfaction is a ratio between value received and amount spent.

 また、オリジナルの記事には ” It’s looking at only a small corner of a much bigger picture.” という断りがあった。ちゃんとしたオリジナルの記事も日本語の記事なることでゴミなるという例だ。

 元記事には上に引いた箇所以外も「ちゃんとした」分析がなされている。個人出版の平均レートが高いのは自分や家族が高い評価をしたり、個人出版社同士が知り合いで互いに高い評価をつけたりする影響があるというのも鋭い。メジャー出版社のベストセラーと7000位の本の平均レートを同じ重みで扱っているのだから

 元記事は、サイトの名称の通り執筆者向けのものだ。日本の状況とは違いすぎるかもしれないし、本文でも断られているように氷山の一角を調べた結果なのでどこまで実際に当てはまるかは分からない。が、GIGAZINE の歪曲した記事とは比較にならないくらい良い記事だ。

大手出版作品は「満足度は低いのに値段が高い」、個人出版作品は「満足度が高くて値段が安い」などオンライン書店の事実が判明 – GIGAZINE
インターネットを使った小売業のビジネスモデルでよく知られている概念に「ロングテール」があり、従来に比べて規模の小さなビジネスでも効果的に商品を販売しやすい体制が構築されてきています。アメリカの作家であるヒュー・ハウィー氏が行った調査では、Amazonで販売されているベストセラー書籍の半数以上は、すでに大手出版社ではなく個人出版による作品であるという、オンライン販売を象徴するような事実が明らかにされました。

The Report – Author Earnings(http://authorearnings.com/the-report/)

 そして興味深いデータがこれ。出版形態別の作品満足度(左)と平均売価(右)をそれぞれ表してみたのが次の2つのグラフです。
reviewprice-2_m
 個人出版作品は高い満足評価を得ていながらも、価格は低く抑えられていることがわかるのに対し、一方の大手作品は「満足度は低いのに値段が高い」というまったく逆の状態となっています。個人出版作品が読者のニーズをより良く反映したうえに安く販売していると言い換えることもでき、このことが個人出版作品の成長を裏付けているということができそうです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です