10代は「リアル書店」好き 本ネット購入、40代が最多

 これを意外に感じる程度の認識でいるのが意外だ。日本通信販売協会の担当者もこの記事の見出しを書いた人間も表面的なものしか見ていないし、アンケートの価値はほとんどないだろう。

 調査の基本的情報が欠けた記事(元の調査結果に書いてあるかどうかも分からないが)なので、深くは分からないが、ここに提示された情報からはほぼ何も分からないというのがまともな人間が導き出せる結論だろう(めんどくさいので、この記事の調査としての問題点をあげつらうのはやめておく。興味がある方はタグの「調査」か「ココダメ」をクリックしていただきたい)。

 ひとつだけあまりにもひどいことだけ書く。「ネット通販で購入したことがある人の割合が低いから、10代はリアル書店が好き」と書くと乱暴さが分かるだろう。間違っているのではなく、この質問からこの結論を導き出せないのだ。10代がリアル書店好きかどうかは分からない。それを、「ネットに親しんでいるイメージがある若年層はネット通販で本を買うであろう。だから、ネット通販の利用率も他の年代より高いに違いない」という狭量な偏見と異なる結果を面白がって記事にしたのだろう。

 そもそも、本を買うという行為と本屋との関係について考察がゼロだ。10代の人間にとって本屋は手軽に時間が潰せるオアシスだ。小遣いが少ない中高校生ならなおさらだ。待ち合わせ場所にも使うだろう。本屋に出入りする習慣が40代以上の社会人と違う。この年代の会社員だと「昼休みや業務上の移動中を除くと、平日に本屋が開いているのを見ることがない」という人も多い。

 自分もそうだが、平日に時間を作ったり休日まで待って本屋に行くより、ネットで注文して家に届けてくれるネット通販のほうが、「本の入手手段」として合理的だ。それだけのことだ。好き嫌いではない。

 また、ネット通販を利用するにはクレジットカードがないと不便だ。そして、10代では自由に使えるクレジットカードは持っていないだろう。条件の違いを無視して原因を類推するのは乱暴そのものだ。

10代は「リアル書店」好き 本ネット購入、40代が最多 – 47NEWS(よんななニュース)
20150217_00本を買う際にインターネットの通信販売をよく使うのは40~50代で、10代は「リアル書店」好き―。日本通信販売協会が実施したアンケートで、こんな結果が出た。協会担当者は「ネットに親しんでいるイメージがある若年層のネット利用が少ないのは意外だ」と驚いている。

 アンケートは昨年9月、全国の10~60代の千人を対象に実施。過去1年間に本や雑誌を買ったと答えたのは715人。年代別に購入先(複数回答)を尋ねたところ、ネット通販の利用率が最も高かったのが40代で58%、次いで50代の53%だった。

 逆に、書店を利用すると答えたのは10代が最も多く83%に上った。 2015/02/15 15:37 【共同通信】

本:未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義II

 スタンフォード大学は、ベンチャー人材の育成といった実学的な教育が多いのだろうか。話題も、ベンチャー企業の成功者の例が多く取り上げられている。この人の授業は客観的事実の論理的構築というより、学生にノウハウを体得させるような内容らしい。アメリカの若い成功者にありがちなポジティブ・シンキングはコミュ症な自分にはついていけないだろう。

 スピリチュアル系ビジネス書と違って、「なるほどなぁ」と思わされることは多い。残念ながら自分のようなベタベタの日本企業に勤めている人間には、試みる機会すらない。

 アイデアを創る必要のある、そしてそれを使う機会のある若い人に読んで欲しい本だ。

 こういう授業があるというのは羨ましい。時代の違いもあるかもしれないが、自分が学生だった頃は一方的に先生が教えるだけで、学生・生徒はあくびをこらえて聞いているだけだった。唯一学生側が口を開かなければならないのは語学の授業で当てられた時だけだ。もっと議論をするようなものに接することができれば楽しかったと思う。

未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義II
 

「オンライン書店の事実は誰も分からない」または 「GIGAZINE のアホ」

 記事全体にバイアスがかかっているようだが、一番ひどいのは表題になっている部分だ。

 大手出版社の本は紙の本も出ているものだろう。そして、紙版の本の売れ行きを考慮して、日本ほどではなくても、高い価格が設定されるだろう。平均売価が高いことにも現れている。だとしたら、評価が辛くなるのは当然だ。個人出版の240円の本と大手出版社から出されるプロの800円の本とでは同じ判定基準で評価しないだろう。満足度は主にコストパフォーマンスを示す。出版方法による満足度の違いを見るなら同じ価格帯のものを抽出して比較しないと意味が無い。記事には「個人出版作品が読者のニーズをより良く反映したうえに安く販売していると言い換えることもでき」とあるが、そんなことは分からない。これは、オリジナルの記事にはちゃんと記載されていた。というより、GIGAZINE のライターのような分析はどこにも見当たらない。

Note the shortest bar in one graph correlates to the tallest in the other. Is it possible that price impacts a book’s rating? Think about two meals you might have: one is a steak dinner for $10; the other is a steak dinner that costs four times as much. An average experience from both meals could result in a 4-star for the $10 steak but a 1-star for the $40 steak. That’s because overall customer satisfaction is a ratio between value received and amount spent.

 また、オリジナルの記事には ” It’s looking at only a small corner of a much bigger picture.” という断りがあった。ちゃんとしたオリジナルの記事も日本語の記事なることでゴミなるという例だ。

 元記事には上に引いた箇所以外も「ちゃんとした」分析がなされている。個人出版の平均レートが高いのは自分や家族が高い評価をしたり、個人出版社同士が知り合いで互いに高い評価をつけたりする影響があるというのも鋭い。メジャー出版社のベストセラーと7000位の本の平均レートを同じ重みで扱っているのだから

 元記事は、サイトの名称の通り執筆者向けのものだ。日本の状況とは違いすぎるかもしれないし、本文でも断られているように氷山の一角を調べた結果なのでどこまで実際に当てはまるかは分からない。が、GIGAZINE の歪曲した記事とは比較にならないくらい良い記事だ。

大手出版作品は「満足度は低いのに値段が高い」、個人出版作品は「満足度が高くて値段が安い」などオンライン書店の事実が判明 – GIGAZINE
インターネットを使った小売業のビジネスモデルでよく知られている概念に「ロングテール」があり、従来に比べて規模の小さなビジネスでも効果的に商品を販売しやすい体制が構築されてきています。アメリカの作家であるヒュー・ハウィー氏が行った調査では、Amazonで販売されているベストセラー書籍の半数以上は、すでに大手出版社ではなく個人出版による作品であるという、オンライン販売を象徴するような事実が明らかにされました。

The Report – Author Earnings(http://authorearnings.com/the-report/)
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電子書籍元年のはずが・・・「エルパカBOOKS(電子書籍)サービス終了のお知らせ」

20140113_eBook-ending 雨後の筍のように立ち上がった電子書籍販売も需要が増えないまま脱落するものが現れた。ユーザの利便性を無視した専用のフォーマットを各社が採用する中で弱小は消える運命だ。業界の標準フォーマットが策定されて Amazon で買った本も Apple や Google から買った本でも好きなリーダーで読めるようになれば中小も個性的なタイトルで生き残るチャンスが生まれたかもしれないが、現状では無理だ。不便すぎる。

 自分は iBooks が一番読みやすくて好きだが、Kindle のほうが安いことが多いので結果的に Kindle ライブラリが充実してしまった。今となっては、iBook で買ったタイトルを Kindle 版で買っておけば良かったと思うほどだ。一時期ここにも読了報告を書いた森見登美彦の作品で宵山万華鏡だけを iBook で買ったため、ライブラリが分散してしまった。

 もし、本の対価が著作権者が記したテキストを読む権利だとしたら、一度買ったタイトルを異なるプラットフォームでも読めるようにするべきだ。製作や流通のコストがかかっているとしても、著作権者に支払う分は差し引いてしかるべきだ。そのような枠組みができたら、著作権者の権利が尊重される。

 エルパカというのは完全に自分にとって圏外のサービスで買ったことはないのでどうでもいいが、購入した書籍分を返金するというのは思い切った判断だ。Ponta ポイントというローカルなものなので、差し引かれてる感があるが、良心的といえる。

 購入者は立ち読みで全ページを読んだようなものだ。著作権(出版社)への支払はローソンが行っているし、一度は対価を払ったので何ら問題はないが、貸本を借りた時程度の購読料金を負担すべきだろう。今回は、一方的なビジネスの終了でデータの資産的価値(いつでも読める)を毀損することに対する謝罪で相殺したということだろう。

 前後してしまったが、この知らせの後で、SONY が電子書籍ビジネスを縮小するということが発表された。日本でのサービスは継続するということらしいが、日本国内より大きなビジネスだった北米市場で足がかりを失うのは事実上の撤退だろう。Kindle の対抗とされた NOOK も撤退目前だ。日本の独自の電子書籍サービスもこの流れに続くだろう。個人的には Kobo が去る日を楽しみしている。

エルパカBOOKS(電子書籍)サービス終了のお知らせ
株式会社ローソン
エルパカBOOKS(電子書籍)サービス終了のお知らせ

2014年2月24日(月)をもちまして、エルパカBOOKSでの電子書籍サービスの提供を終了することとなりましたのでお知らせいたします。

サービス終了後は、購入済書誌含め、一切のエルパカBOOKSの「電子書籍サービス」をご利用いただけません。(書誌新規購入・再ダウンロード・購入済書誌閲覧含む)

尚、これまで弊社電子書籍サービスをご利用いただいたお客様へ、Pontaポイントによる過去ご利用いただいた購入金額をPontaポイントにて返金するサポートを実施予定です。 詳細はサービス上にて別途ご案内いたします。

■サービス終了までのスケジュール
2014年
1月16日(木):新規電子書籍の販売終了(新規課金の停止)
2月24日(月):電子書籍サービス終了
※購入済電子書籍の閲覧、再ダウンロード、リーダーアプリの終了

拡張するストレージ 口承・紙本・ネット

 日経サイエンス に Google 効果という記事があった。「交換記憶」の対象がネットに広がっていることとその影響についての研究が紹介されていた。

 交換記憶とは、 自分が覚えていない記憶を他者に委ねて、組織全体の記憶を増やす。過去は家族や同僚、コミュニティで行われていた。が、今はGoogleやWikipediaが対象となっている。Googleを日常的に使っている人間がその知識を自分の記憶と勘違いしているという面白い実験結果があった。

 興味深っかったのは、Google で検索している人間が自分の知識であるかのように錯覚しているということ。他の人間に尋ねて教えてもらった知識と Google で調べたのとでは、自分の記憶になかったという点では変わりはない。にも関わらず、ネットで調べると自分が知っていたかのような感覚になるというのは面白い。

 人に訊くのは「教えてもらう」という心理的負い目があるのだろう。それに対して「調べる」のは自分が主体性を持って行動していることで、その負い目がない。そして、得た知識も、自分で調べた場合は別人の記憶を借りたものであるという意識が無い分、自分の記憶であったかのような錯覚を覚えるのだろう。

 他の人に聞いた記憶と端末で調べた知識とで感覚が異なるのは体感的に分かる。しかし、だからといって、Googleによる知識と人間との交換記憶に実は差はない。どちらも自分の記憶を外部に依存しているのだ。記憶を外部に保存することは人間が知的な生命体として進化した時のキーファクターだろう。人類は言葉や文字によって経験や知識を後代に残し、共有することが可能になった。これによって個体の限界を超えることができた。どんな天才も、先達の積み上げた遺産がなければその高みに達することはできない。誤ったものであっても、何かがあったからそれを足がかりにできたのだ。個人が宇宙の観測をする時に手作りの望遠鏡を一人で作らなければならなかったら今のような観測は全くムリだろう。小柴博士がどんなに頑張っても一人でスーパーカミオカンデは作れない。ガリレオは自分で望遠鏡を作った大天才だが、ガラスの製法などはそれ以前に存在していたのだ。その延長上であると考えればインターネットによる記憶の外部化は必然だ。

 数十年前までは紙の本が人類の記憶を後代に伝える最も効率的な手段だった。昔の研究者が著名な大学で研究したがったことの大きな理由の一つは図書館に有ったはずだ。紙本に蓄えられた情報が全てネットに載る時代は近いだろう。ネットに寄るコミュニケーションが密になれば、世界中どこにいても研究ができるようになる分野が多くなるだろう。

 ネットの知識とコミュニケーションによって人類が知の地平を切り拓く速度が加速されるかどうか・・・

 未だに、Google や Wikipedia のコピペより図書館の本をコピーすることのほうが貴重であるかのような偏見がある。目的の本を探すのは難しい。まずどの図書館にあるか調べなければならない。そして、物理的に移動しなければならない。図書館に着いて本を探し借りて初めて情報にたどり着くことができる。しかし、必要な情報を得るために費やすコストの大半は情報そのものを得る作業ではなく、物理的な制約を克服するためのものだ。偏見を持った人は「苦労して探した本に書いてあることは記憶に残る」というが、情報の密度そのものが低いし「物理的な努力にまつわる周辺情報を含めて脳に記憶するから、良く思い出せる」だけだ。

 更に言うなら、そういう記憶の大半は必要な情報そのものではなく、「あの本を探してXX大学まで半日かかっていった。その時雨で駅からずぶ濡れになった」とか「XX大学の女性職員が美人だった」とか「駅前で食べたうどんはまずかった」といったものばかりだろう。そういう記憶や経験に価値がないとはいわない。しかし、それは目的の本に書いてあった情報の価値ではなく、その人の旅行の記憶でしか無い。

 遠くの図書館に行って目的の本に辿り着いた達成感は快感だろうが情報そのものの価値とは無関係だ。自分が旅行で苦労したり楽しかったりした思い出が美しいからといって、後輩に同じことを押し付けてはいけない。そういうプロセスを無用にしたネットが憎いのかもしれないが、旅行の苦労や楽しさを否定しているわけではない。「情報の取得と一緒にすんな」と言っているだけだ。

本:心を誘導する技術 中 辰哉 (著)

 成功者が語る成功体験記の域を出ていない。ビジネスセミナーの「好感度を高める話し方(架空)」と変わらない。セミナーよりはるかに安いので、そういうものを求めている人にはコストパフォーマンスは高い。

 脳は進んで騙されたがるを期待して購入したら、全く違っていた。マジックで使われる”注意”を操作するテクニックについてマジシャンの視線から解説されるのは興味深いが、なぜそうなるかについては全く検討されていない。

 一言で言うと、「コールドリーディングを使って世渡り上手になろう」という本だ。対人関係の仕事をする上では参考になる考え方は多いだろう。相手の気持になって働きかけ方を工夫するというのは社会性に通じる技術だからだ。それを「相手の立場に立って考えよう」といった無意味な言葉ではなく「こういう場合(相手)には、こういう言い回しをする」と具体的に教えてくれる。相手が欲している事を読んで取り入って操るのは詐欺の手口と一緒なので、この本を読んでテクニックを身につければ、詐欺も商談も犯罪捜査(コロンボもホームズもコールドリーディングの名手だ)もお手のものだろう。

 社交的になりたくも人脈も特に欲しくないと思っていても、役に立つ事はある。相手がこの本に書かれているような語り口や仕草で近づいて来たときに、「このテクニック使ってるな」と分かって楽しめるだろう。占い師や霊媒師のインチキに引っかかることも無くなるだろう。

 「ここに書かれているやり方を自分に対して行う人がいたら」と考えるのも面白い。おそらく全然話がかみ合わないままだろう。自分が特別に用心深く優秀という意味ではない。関心の方向が違うのだ。ポーが「盗まれた手紙」で、警察が隠された手紙を見つけられない理由として、「自分ならこうするという考えから抜け出せない。その方法であればどんなに巧妙にやっても警察が見落とすことはないだろうが、そこから外れると皆目見当がつかなくなる。犯人が警察より頭がいい場合には必ず、頭が悪い場合にも度々出し抜かれる。」と書いた。自分の場合は後者だ。

 この本の作者は大変な努力家で頭も良く才能もある。そして、人一倍欲も強い(欲というと言葉は悪いが、達成欲や成功への意欲といえば近いだろう)。だから、彼の使う手法の大半は人の欲を誘い込んで利用する。儲け話があったら誰でも必ず乗ってくると思っている。乗ってこないのは臆病なだけだから、そのバリアを除けば全員が儲け話に興味があると思っているのだ。ところが、それに興味が無い人間がいたら話は噛み合わないだろう。ビジネス書や経済評論家、政治家が若者論で見落としているのと一緒だが、これについては別の機会に考えたい。

 後、こういう成功者にありがちな見落としで、その人だから出来た、たまたまそうなったということが全人類に当てはまると思っていることだ。そして、「こうすればうまくいく」「努力すればかならず叶う」という。「うまくいかないのは努力が足りないからだ」と。しかし、それだけではないだろう。この人の魅力的な語り方や容姿で語れば聞いてもらえることも、自分のような容姿の人間がたどたどしく真似しても誰も振り向かないだろう。彼には分からないが自分には分かる。

 文章は平易で読みやすいが、半分くらいで投げ出した。「人は話したい生き物なので、あなたの聞く体制が整っていれば、相手も心を開いてくれます。」このフレーズが限界だった。自分は知らない人に話を聞いて欲しくないし、心を開きたくもない。

 オススメしたくないのでリンクしない。古本屋で100円で見つけて、他に読む本がないのなら買ってもいいというレベル。

追記:2014/2/14 Appollo Robbins のTEDでのプレゼンを観た時にこの本との違いに残念な気持ちになったが、出版社がビジネス啓蒙書みたいな本を売りたいという意向で作者に方向性を指示したのかもしれないと思った。中さんが不幸だったのは、「脳はすすんでだまされたがる」の作者のような研究者に出会う機会が無かったことだ。日本の異業種交換会に出て人脈を増やしてもこんな仕事にしかつながらないということだろう。

まさかの退場者:ソニー、電子書籍ストアを北米市場から撤退。ReaderユーザはKoboへ移行対応

 Sony の Reader は Kindle 以前からあって、アメリカでは十分な地盤を築いているのかと思っていた。昨日の PC 事業からの撤退を含め、SONY は大きく変わっていくようだ。まあ、既に SONY は銀行や保険で成り立っている企業だから、「選択と集中」の結果として家電業界から足を洗うこともあるかもしれない。個人的にはパソコンよりテレビだと思うが・・・

 この報道でわからないのは既に買ったタイトルの権利と Reader の行く末だ。「kobo ストアへの移行をサポート」というのは、今持っている本の権利情報を Kobo が引き継ぐということか?あるいは Reader で Kobo ストアにアクセスできるようになるのだろうか?Kobo というのが微妙ではあるが、楽天がやったような切り捨てよりはマシだ。雨後の筍の淘汰の段階で楽天がやったようなユーザ無視の対応が取られると電子書籍の普及が遅れるから迷惑する。

 Amazon は生き残るだろう。Apple や Google のような体力があってインフラを持っている企業が撤退することは考えにくいが、本業が左前になったら不採算部門は切られる。今回の SONY のようにだ。

ソニー、電子書籍ストアを北米市場から撤退。ReaderユーザはKoboへ移行対応 (Engadget 日本版) – Yahoo!ニュース
Engadget 日本版 2月7日(金)2時1分配信

VAIO PC事業の売却や大規模な人員削減などリストラを進めるソニーが、電子書籍ストア Reader Store の北米市場からの撤退を発表しました。ソニーは6日のQ3業績発表で、 通期で300億円の黒字予想から1100億円の赤字へと大幅な下方修正を明らかにしたばかり。

米 Sony Electronics の発表によると、ソニーは米国およびカナダで電子書籍ストア Reader Store を3月下旬にも閉鎖する予定。既存の電子書籍端末 Reader や Xperia スマートフォン、タブレットなどのReader アプリユーザーに対しては、楽天傘下の Kobo ストアへの移行をサポートします。

また Reader ストアの閉鎖に伴い、今後の Xperia スマートフォンやタブレットには Kobo アプリがプリインストールされる予定。なお国内向けの Reader ストアは、今のところ平常どおりに営業中です。

更新:日本の Reader Store に、「今後ご提供予定のサービスのほんの一部をご案内」なる告知が掲載されました。そちらによると、春頃に iOS機器でも書籍対応 (従来は『『ソニーの電子コミック・雑誌 Reader』』アプリで、漫画や雑誌など画像ベースのコンテンツのみだった)。夏にかけてPCで読めるサービス、PS Vita アプリでも書籍対応などのアップデートを準備中とのこと。Reader端末についての言及はありません。

なお余談ながら、ソニーの Reader がどこの国でも存在感が薄かった理由のひとつには、仮にサービスを別にしても(できませんが)、デバイスとしてもアマゾンの Kindle に押されていたことが挙げられます。

特に専用リーダーの存在意義であり、みずから最大の売りとしていたE Ink 電子ペーパーディスプレイは、解像度やコントラスト、応答速度などの点で同世代の Kindle より劣っていることがたびたびありました。

以前 E Ink に取材した際に尋ねたところ、これはアマゾンが E Ink と期間指定で独占供給契約を結んでいたことが理由とのこと。アマゾンに抗して最新の部品を調達できなかった力不足といえばそれまでですが、あながちソニーの不合理な判断として責めることもできません。

本:夏目漱石「自転車日記」「余と万年筆」

 下には、画像を拝借するために Amazon へのリンクを貼ってあるが、両作品とも青空文庫に収録されている。短い作品なので、こんなブログを読む暇があったらお好みのリーダーアプリやブラウザでお読みいただきたい。青空文庫HTML版 自転車日記青空文庫HTML版 余と万年筆

夏目漱石 自転車日記 イギリス留学中に自転車に親しむ(ww)ようになった経緯を綴った日記。自嘲的な軽い筆致は今のブログにも通じる(このブログという意味では、もちろん、無い)。

 森見登美彦の作品が好きな人なら楽しめる作品と思われる。自分は森見登美彦の文体が好きな上に自転車も好きなので、大いに楽しんだ。

夏目漱石 余と万年筆 この文章が書かれてから 100 年以上経った今でも道具を排除することを良しとする人はいる。キーボードで入力された文章には心がこもらないとか、手書きの温もりとかいう輩だ。自分はこれらの考えとは正反対。鉛筆も万年筆もボールペンもサインペンも筆もチョークもスプレーもパソコンのキーボードもテキストデータを記録する道具としては同価値。利便性によって選ぶべきものでしかない。

 夏目漱石にも同じ思想を感じた。彼はつけペンと万年筆の比較から、当時新技術である万年筆の利便性を高く評価している。つけペンへの懐古趣味などみじんもない。万年筆が不調でつけペンで「」を書いた時に最後まで万年筆にしなかったことについて「『彼岸過迄』の完結迄はペンで押し通す積つもりでいたが、其決心の底には何どうしても多少の負惜しみが籠こもっていた様である。」と自らツッコミを入れている。

 さらに「酒呑さけのみが酒を解する如く、筆を執とる人が万年筆を解しなければ済まない時期が来るのはもう遠い事ではなかろうと思」ったとおり、つけペンの時代は終わり、あっという間に万年筆もボールペンに覇権を譲っり、ボールペンもキーボードに席を譲って現在に至った。この後、音声入力や脳波入力の時代が来るかもしれない。

 なお、手書きの美しさや芸術的な価値について否定はしない。美しい字を書ける人が画像として文字をやりとりする文化は無くならないだろう。テキストをやりとりするメディアの一部としてのテキストデータとは別の「モノ」だからだ。それはテキストの持つ情報とは異質の価値を持つ紙本と同じ性格のものだ。

 ところで、あまり意識していなかったが、Amazon の青空文庫で入力された作品の表紙に「青空文庫」というロゴが入るようになった。しかし、iBooks の書籍には青空文庫はない。Amazon の青空文庫の作品には青空文庫のデータの末尾に付加された決まり文句「このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。」が入っているが、iBooks にはこれもない。残念だ。

次なる退場者または夜明けはあまりにも遠い:NTTの電子書籍ストア「地球書店」終了

 「電子書籍元年」は数年続いた。ビジネスモデルはシンプルなので、「権利関係者との契約さえできれば、既存のサーバと回線を使い回せば楽勝」とばかりに多くの挑戦者が現れた。しかし、元日の初日の出を待たずして淘汰は始まった。

 今日の退場者は「地球書店」。NTTという名前が付いている時点でキャリア縛りへの意図が透けて見えるようだ。自分なら絶対にこんなところの電子書籍は買わないだろう。デジタルコンテンツは普及率が命だ。ロックのかかっていないファイルを売ってくれるのなら話は別だが、著作権保護がかかったコンテンツはサービスが終了したり対応する専用端末がなくなったら読めなくなる。

 「ダウンロードしたタイトルはそのまま読めるのだから紙と一緒だろう」というのは受け入れられない。端末の寿命は紙の本よりはるかに短い。互換性のある後継機が出ないと端末が壊れた時点で購入した本を読む権利まで喪失だ。専用端末を使わなくても事情は一緒だ。著作権保護がかかった特殊なファイルは暗号を解除するための仕組みが必要だ。それをサービス側で管理しているのであれば、認証サーバが止まったらPC上のファイルも読めなくなる。専用のローカルアプリで読むような場合も寿命はある。PCを入れ替えたりOSのアップデートを行った場合にアプリがアップデートされなければ動かなく可能性が高い。

 電子書籍を買うとしたら購入先は限られる。Amazon kindle、Google play、Apple iTunes のどれかだろう。プラットフォーム・ネイティブな端末やソフトが使えなくなる心配がない。

 しかし、「地球書店で購入した金額分のポイントを電子書籍書ストア『コミックシーモア』のポイントで進呈」というのは、「買ったものはダウンロードできたんだからあとは知らん」とした楽天に比べれば良心的だが、ユーザにしたら「コミックシーモアだっていつ終わるかわからん」だろう。

スマホ向け電子書籍ストア「地球書店」終了 購入代金を「コミックシーモア」ポイントで返金 – ITmedia ニュース
 NTTソルマーレは、スマートフォン向け電子書籍ストア「地球書店」を3月31日に終了する。希望者には、地球書店で購入した作品金額分ポイントを、同社が展開する別の電子書籍ストア「コミックシーモア」のポイントで進呈する。

 2011年にiPhone、iPad向けに開始したサービス。現在はGooglePlay、au Market、LG Worldでも展開している。

 3月31日午前10時のサービス終了後は、サービスへのログインや作品の新規購入はできなくなるが、購入済みの作品の閲覧は可能。購入済み作品の再ダウンロードは、6月30日まで可能だ。

 3月31日午前10時までに申し込めば、1月31日午前11日までに地球書店で購入した金額分のポイントを、スマートフォン/PC/タブレット向け電子書籍書ストア「コミックシーモア」のポイントで進呈する。

BookLive!、DMM電子書籍ビューアをwindowsで使っている人はご注意

 BookLive! も DMM電子書籍ビューアも使ってないので、自分には影響はないが、電子書籍に対する批判の一つである技術的なトラブルの実例として記録しておく。

電子書籍リーダーに含まれるDRMソフトでPCがフリーズ、BookLive!やDMMで影響1月17日(金)16時0分配信

 株式会社BookLiveは16日、電子書籍ストア「BookLive!」で提供中のWindows向け閲覧用ソフト利用時に不具合が発生する可能性があると発表した。「BookLive!Reader for Windows PC」をインストールしたPCで特定の別ソフトを使用すると、OS全体がフリーズする、さらにはフリーズ直前に書き込みを行っていたファイルの内容が破損する場合があるという。暫定的な修正ファイルをすでに公開中だが、さらなる対応を引き続き実施していく。
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