東京ゲーム事変というポッドキャストを聴いている。息子と同い年の美大生さんがやっている番組で、いろいろと刺激になる。そこで音の知覚について興味深い話を聴いた。「祭りに行った時に祭りの音を録音したが、家で聴き直したらただの雑音のように感じた(第068回「ゲームと共にあらんことを」)」というものだった。
昨年から何冊か読んだ心理学の本で人間の近くについて、主に視覚情報について興味深い話を知った。人間は外界の情報を感覚器官から脳が受け取った時に、脳の中で自分にとって都合のいい像を作り当てはめて「知覚する」というものだった。そして、脳は無意識のうちに注意しているものの情報を優先的に知覚する。
祭りの喧騒の中で口上が聞き取れたのは、視覚でとらえた猿回しの姿に注意していたために脳がそれに整合する音を拾いだしていたのではないか。そして、家に帰って視覚情報がない中で音だけを聞いたら、口上の声は特別なものではなくなってしまい、雑音に埋もれてしまったのだと思われる。
雑踏の中での会話も同じことが起こるのではないだろうか。「相手と話したことのある人なら雑踏の音の中からでも会話を拾い出せるのに、その相手と話した経験がないと聞き取れない」といったことは起こりそうだ。
後、音は指向性がないというところが写真と違うとはいえそうだ。写真だと人間が視覚から得た刺激のうち脳で”見た”と知覚したものとほぼ同一の範囲しか写せないが、無指向性のマイクは360度から音を拾う。人間の耳は構造上後方からの音は拾いにくくなっているので、音源が後ろにある音は現場では聞こえない(邪魔にならない)が、録音では顔の前方の音と同じくらいの音量で入っているので感覚とずれることはありそうだ。
年末から年始にかけて、写真撮影(ひいきびいき)や音についての刺激になる話を podcast で聴けて楽しかった。感謝!