意外と人気がないiPhone 5c, Appleは年末商戦に向けて減産を決定

5c5s 記事にもあるように、Apple の新製品発表を夜中に観て機種変更を待ったり、予約受付日や発売日にショップに並んだりするような人向けの製品ではないだろう。

 昨日観たように(携帯販売ランキング(9月30日~10月6日)ドコモのiPhone 5sが初の1位 | GEEK_XP)、iPhone 5s が発売された週に旧機種の iPhone 5 を買う人も多い。この層をiPhone 5c に切り替えるのが apple の目的だろう(iPhone 5 より iPhone 5c のほうが製造原価が安い)。日本のランキングを見る限りでは、iPhone 5 の流通在庫が残っていてこの層の需要をカバーしてしまったように見える。

 従来の新モデル発売時にはなかったパターンなので、需要予測と流通在庫の予想が外れた結果なのではないだろうか。コンピュータや iPod ではモデルチェンジ前には在庫を絞ったり流通価格を下げることが多かった。これが次期モデル発売の予兆だった。これは、新モデル発売時に大きく価値が下がってしまうであろう旧モデルの在庫を減らすことと、需要を全て新モデルにつぎ込んで売上を上げるための施策だ。そして、この 10 年近く Apple はこのオペレーションを上手くやり、Apple 製品の在庫期間は数週間にまで短縮され、利益に大きく貢献した。

 従来 iPhone は新モデルが出ても旧モデルが売れ続けるというコンピュータでは考えられない商材だった。数千万台も作った後の歩留まりが高く要素部品の価格も下がったモデルなので、在庫価格の低下があっても大きく利益を下げることはなかった。なので、流通在庫を絞り込むことなく新モデルの発表を行っても問題はなかった(卸価格の改訂や、出荷済製品に対する価格の調整は行っているとは思うが)。キャリアにとっても、価格志向の顧客に対して売れ続ける商品がバックヤードに残っていても困らなかったはずだ。なので、在庫を切らさずに済むだけの流通在庫を確保するよう発注していたはずだ(自分ならそうする)。しかも、Apple が新製品の発表や発売時期をギリギリまで教えてくれないならそうするしかない。

 ところが、今回は違う。iPhone 5 の生産効率が iPhone 4S 以前の機種ほど下がらなかったために iPhone 5c という新モデルを出さなければならなかったのだ(複数ソース)。iPhone 5 が売れ続ける旧機種からいきなり完全に過去のモデルになってしまった。キャリアが在庫処分に走るのは当然だ。これが、iPhone 5 がランク入りしたのと、iPhone 5c が期待ほどの売れ行きにならなかったことの原因だろう。

 ただ、チップの違う機種が出たら最新型のチップを迷わず選ぶようなヲタには想像するしかないが、これまで旧モデルを選んできた人たちにとって「最新モデルと同じデザインなのに安い」ということを重視している人がいるかもしれない。そういう人が今後 5s にするのか Android に流れるのかは分からない。こういう志向の人がどれくらいいるかを読み違えているとしたら iPhone 5c は失敗モデルということになるかもしれない。また、製造原価の低い旧モデル(iPhone 5c は旧モデルのリメイクだろう)が iPhone 5 世代の iPhone 4S のように売れ続けなければ Apple の利益率に悪影響があるかもしれない。

 一方で、iPhone 5c という旧世代要素技術搭載モデルを併売することで、iPhone 5s の A7 チップ、M7 チップ、指紋認証、64bit アーキテクチャといった技術の先進性がデフォルメされて市場に伝わり、その結果 iPhone 5s への需要シフトが起こったのかもしれない。iPhone 5c の減産分を iPhone 5s の増産でまかなえるとしたら Apple としては嬉しい誤算だろう。

 どちらかは 2013 4Q の成績が分かる Apple 2014 1Q 決算で分かるだろう。

意外と人気がないiPhone 5c, Appleは年末商戦に向けて減産を決定 | TechCrunch Japan
Appleは第四四半期におけるiPhone 5cの発注量を減らす、とWall Street Journalの最新の記事が報じている。状況に近い筋の話としてWSJ紙は、AppleはiPhone組み立てパートナーPegatronとHon Haiの二社に対し、同社のローコストスマートフォンの年末までの発注量を減らすよう求めた。P社は20%減、H社は1/3減、といわれる。

ただしHon Haiの役員がWSJに語ったところによると、iPhone 5cの減産にはiPhone 5sの増産が並行して伴う。Appleはとくに、iPhone 5sのゴールドバージョンの売れ行きが予想以上に好調だったことに着目している、と記事は報じている。それが増産決定の契機でもある、と。一方iPhone 5cの発注減は一部の部品供給社にとっては50%の減産に結果する、というから、最終的な減産の規模はもっと大きいのかもしれない。

Wall Street Journalからのこの新しい情報は、アナリスト企業Consumer Intelligence Research Partnersが今週初めに述べた主張を支えるものだ。その主張は、iPhone 5sはiPhone 5cの倍売れている、というものだった。またモバイル方面の分析企業Mixpanelは、両機のローンチからわずか1か月あまりでiPhone 5sの採用数はiPhone 5cの倍以上だ、と自らの分析結果を発表している。

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