価格交渉と家電量販店の衰退

yodobashi_nebiki_011076_お買い物にまつわるエトセトラ。: 人間的。-新・師匠的。がスピンオフ中!」で買い物のスタイルについて話していて面白かった。

 家電量販店で値切るかどうかについては、「ダメ元で言ってみる」といった程度だ。家電の型番を控えて他の店に行って比較することはめんどくさくてやっていられない。店員との交渉もだ。

 以前、自宅のテレビが映った頃のバラエティ番組で、家電量販店で値切るコツを得意げに語っているナントカ評論家がいた。しかし、そういうのを聞くと、「これを参考に、自分も家電量販店で上手に買い物しよう」というより、「そんなことするくらいなら Amazon か価格ドットコムで買おう」と思う。

 このような価格交渉は家電量販店を魅力ないものに貶めるリスクを家電量販店は知っておくべきだろう。今、自分が家電量販店で買い物するのが面倒くさいのは価格表示が信用出来ないからだ。「交渉したら値引きされる」というのでは、一々店員を捕まえて聴かなくてはならない。しかも、その時の交渉次第で価格が大きく上下するなら、交渉下手な人間は、上手な人間に比べて同じ物を高い価格で買わされる結果になる。うるさい客にだけ安く売って、おとなしい客には高く売るというのは不誠実な裏切り行為でしかない。接客を受けずにレジに行くような客のほうが手間もかからない上客と言えるのに。

 家電量販店が Amazon を代表とする通販ショップに需要を奪われている理由を価格だけだと思っていたら大間違いだ。こういう価格交渉や店を回って価格調査するのがめんどくさくて通販ショップに流れるというのを家電量販店は知っておくべきだ。どこぞの、意識の高い方は家電量販店で Amazon との価格を比較して Amazon で買う行為を批判していたが、人を見て値引きする家電量販店への反発心ということも忘れずにと言いたい(日本の家電量販店とシリコンバレーとは違うかもしれないが)。

 家電品の品質や性能が拮抗しコモディティ化したことで、メーカーや小売店への忠誠心や愛着も失われた。どこで何を買っても大差がない。だったら、人の足元を見るような店で買うより誰でも同じ価格(表示価格が時とともに変わるのとは違う)で買える通販ショップのほうが納得度が高い。

 この、「納得度」は重要だ。消費者は何か物を買った時に「自分行った決定が正しかった」と思いたいのだ。ところが、家電量販店のような売り方では、「自分はX千円の値引きを受けられたが、粘ればもっと値引いてもらえたんじゃないか」という懐疑が常に付いて回る。

 この感覚は、通販ショップで買ったあとでその値段が下げられたのを見るのとは本質的に違う。跡で値下げがあったのは買ったタイミングが悪かっただけで、買ったその日の決断を否定するわけではない。その日に買った人は全員が同じ価格だったのだから。

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