「新趣味」傑作選―幻の探偵雑誌〈7〉

「新趣味」傑作選―幻の探偵雑誌〈7〉 (光文社文庫)

 関東大震災前の2年ほど出版されていた雑誌から探偵趣味系の作品を抜粋したもの。付録の見出し一覧では広範囲な話題を取り扱った総合雑誌だったらしい。

 時代の雰囲気を取り入れた作品ほど、時代の変化に取り残される。風俗やメンタリティまでも違う今となっては、当時の時代感覚をセピア色の写真を眺めるように楽しむ意外にはない。特に、連載作品をコンプリートした「砂漠の古都」にはいろんな意味で興味深かった。欧米礼賛とその裏返しにしたアジア蔑視が当時も(今もそれ以前もだろうが)根強かったことがはっきり分かる。ということは、現在の風俗をセンセーショナルに扱っただけの作品も数十年後には消え去る運命ということだろう。50年後の読者が今の作品を読んだらどんな違和感を持つのだろうかと興味を持った。

 しかし、世相が変わっても取り残されない作品はある。それは、人間を取り扱ったものだろう。江戸川乱歩や久生十蘭の一部の作品などは、これと同じ時代の作品でありながら光を失っていないのだから。

 古本屋で200円で購入。時間を持て余しているときに、古本屋で見つけたならどうぞ。「新趣味」傑作選―幻の探偵雑誌〈7〉

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