開発者にかつてない好機だって??「Windows 8」のエコシステム

 そうかなぁ。企業向けソリューションビジネスが Windows 8 のエコシステム上で構築されるということには依存はない。でも、それは従来 XP や7 搭載の PC 向けのソリューションのプラットフォームが Windows 8 になるだけの話だろう。総額は増えない。総額が増えないどころか、タブレットに市場を侵食されるローエンドのPCは販売台数が減少傾向にあるのが現在だ。ということは、Windows 8 の市場規模は Windows 7 より狭くなるという事だ。

 企業はやっと Windows 7 に統一したというレベルだ。Windows 8 に最適化したシステムなど導入するのは数年先だ。Windows 7 と Windows 8 の実稼働台数シェアを比べればエンタープライズ市場がどちらのプラットフォームで作られるかは一目瞭然だ。タブレットに侵食される Windows PC というプラットフォームにしがみつくのか、iOS か Android に飛び移るか。エンタープライズ市場のプレーヤーは頭がいたいだろう。

 この記事を書いたのが Windows 8 での開発で一儲けを狙っている人物だということはよく分かった。こんな記事に IT の担当者が踊らされないことを切に期待したい。

開発者にかつてない好機をもたらす「Windows 8」のエコシステム – CNET Japan

 「Windows 8」向けアプリの開発者の眼前に広がっている本当の機会というものは、誰もが真似できる10ドルのアプリを開発することにあるのではなく、企業に対して数十万ドル単位の利益をもたらすソリューションを提供することにある。

 Appleは、デバイスやメディア、アプリにおいて、コンシューマーレベルの驚くべきエコシステムを創造したものの、企業向けアプリの開発者という視点が見当たらない。このためたいていの場合、Appleのパートナーは安価なアプリや日常的に使用するアドオンの販売を余儀なくされている。明らかな例外はいくつかあるものの、「iOS」アプリの開発者の大半は大きな利益を生み出せていない。一方、Windows 8のエコシステムは、企業向けシステムの開発における大きな転換を象徴するものとなっている。

 Microsoftは常にパートナー企業のことを第一に考えている(ちなみに筆者が興した企業であるIzendaもMicrosoftのパートナー企業である)。「Surface」というハードウェアを自ら開発するという最近の一手は、現在の市場状況を判断したうえでの優れた戦略と言えるものの、それ自体はMicrosoftの長期的な戦略の中核をなしているわけではない。Microsoftはエコシステムも進化しなければならないというメッセージを送っているのだ。クラウドやモバイルといったものは、10年ほど前のインターネットがまさにそうであったように、新たなパラダイムなのである。Izendaは、数多くの独立系ソフトウェアベンダーとともに仕事をしてきており、新たな世界に適応していこうとするパートナー企業が最も大きな収益を上げているという事実を目の当たりにしている。
セキュリティをないがしろにするIT部門は存続が難しくなる

 すべての企業においてIT部門がずっと存在し続けるとは限らない。多くの企業はIT部門をアウトソーシングしている。そして、クラウドの出現によってアウトソーシングは、クラウドベンダーが提供するサポートの一部となっている。このため、コンピュータの組み立てから報告書の作成に至るまでのあらゆる作業をこなすために専門要員を配置するのではなく、安価なタブレットを注文してクラウドサービスに接続するだけで事足りるようになっている。ベンダーは特に指示しなくても、アプリケーションの管理やデータのバックアップといったIT作業の大半をやってくれる。そして、報告書の作成や設定作業はセルフサービスのプロセスとなり、必要に応じてベンダーの抱える専任の専門家の力を借りるのみとなる。IT部門は何でも屋になろうとするのではなく、セキュリティやコンプライアンス、データガバナンスといったものに注力する組織に進化していくわけである。
宝の山はアプリではなく、ソリューションにある

 筆者は、アプリ開発で大もうけするという夢を抱いた起業家を数多く目にしてきている。しかし実際のところ、企業が大金を投じるのは問題の解決に対してなのである。そして、こういった問題の解決には詰まるところ、企業文化を変革する必要があることも多いため、ソフトウェアや、クラウド上のハードウェア、コンサルティング、訓練といったものを組み合わせる必要がある。

 Windows 8のエコシステムもこの考え方に沿っている。多くの顧客は既にMicrosoftの技術を採用しているため、社内にあるものすべてを他のプラットフォームに移行するという戦略は採りづらい。そうではなく、同じプラットフォームを使い続けながら、Windowsを搭載したクライアントPCとサーバの組み合わせから、タブレットとクラウドサービスという組み合わせに移行するわけである。本当の機会は業務上の難題を解決したうえで、完璧なソリューションを用いて利益をもたらすというものなのだ。

統一されたアーキテクチャを提供するWindows 8と「Windows Azure」

 オンラインでデバイスの購入が行え、IT部門の手を借りずにそのデバイスをクラウドサービスに接続できる今の時代において、Windows 8と「Windows Azure」があれば道具はすべて出そろったと言える。Surfaceのような目に見える製品の背後には、それを支える数多くの脇役がいるのである。

 素晴らしいことにMicrosoftは、既存のウェブアプリをWindows 8に移植するための簡単な方法も提供している。さらに、Windows AzureによってIaaSやPaaSを提供し、顧客が自社でデータセンターを管理する必要をなくしている。
BtoBによって驚くほど多くの機会がもたらされる

 これからの10年を通じて、Windows 8ベースのOSを搭載した数多くのデバイス(携帯電話からスーパーコンピュータに至るまでのあらゆるもの)が登場してくるはずだ。この統合化された夢のようなエコシステムが実現されるまでには、長い年月が必要であった。本当の機会というものは、誰もが真似できる10ドルのアプリを開発することにあるのではなく、企業に対して数十万ドル単位の利益をもたらすソリューションを提供することにある。
機は熟している

 Microsoftは法人市場を重視していたため、コンシューマー向けOSという点では出遅れていた(新規テクノロジへの移行に関して言えば、企業はコンシューマーよりも腰が重い場合もある)。しかし、老朽化した「Windows XP」搭載PCをアップグレードし、Windows 8を採用する、あるいは老朽化した「Windows Server 2003」搭載サーバをWindows Azureや、「Windows Server 2012」上でのプライベートクラウドに移行するという準備を始める時がついにやってきたのである。われわれIzendaは、顧客とパートナーがこの新たなパラダイムに向かって舵を切っていくことに興奮を覚えている。

著者紹介
Sanjay Bhatia
Izendaの創業者兼最高経営責任者(CEO)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です