捲土重来を期す HP。Androidスマートフォンとタブレットを開発中

IBM-PC AT互換機(この呼び方ももう過去のものだが)の製造やプリンタで世界市場をHPだが、モバイルデバイスでは失敗を繰り返している。そういえば DELL もそうだったし、Compaq(HP に吸収された)も同様だった。コモディティしか作ったことのない企業、または、そういったイメージで捉えられている企業がそれ以上の何かを作り出すことは困難のようだ。

 大企業の名前を冠することで認知度や信頼度を高めるというマーケティング戦略と新しいプラットフォームを作るということは相容れないのかもしれない。マクドナルドがスターバックスと同じような価格帯の商品を作っても売れないだろう(仮に同じ品質のものを作ったとしても、消費者は受け入れないという意味)。

 ただし、Android の躍進によって、モバイルデバイスのプレミアム感は一気に失われた。同じ OS、同じ要素技術(プロセッサ、液晶、回線・・・)での勝負なら大きな企業が有利になる。WebOS を育てるのを諦め、ライバルがひしめく Android 果樹園の樹の実を奪い合うことに決めたのだ。HP は以前から既存市場の後追い戦略を得意にしていたので、このほうが正解かもしれない(HP は元はオフコンやミニコンといったビジネス用コンピュータがメインだったが、この市場が UNIX で標準化されたときにパソコン市場に舞い降り、Compaq を吸収し一位に上り詰めた)。

 しかし、Android 市場に果実は残っているのか?HP が割り込むことでシェアを落とすのはどこか。Android 市場が膨張し iOS のシェアが減るのか。今、従来型端末からスマートフォンへの移行で市場は成長しているが(携帯端末全体の伸びは減った)、近い将来に伸びは止まる。そうなった時にどのような均衡状態になるのか。

 タブレットについては、スマートフォンよりは市場の増加は続くだろう。ただし、ノートPCの需要と引き替えにだ。ノートPCとタブレットの両方を作っているメーカーは影響は一部(平均単価が下がるので売上が下がる可能性はあるし、平均単価が下がることは固定費比率が上がることを意味し、利益率の低下を招く可能性は高いが)だが、パソコンしか作っていないメーカーは一方的な減少にしかならない。だからこそ、HP はモバイルへの再挑戦を選んだのだろう。

 タブレットのシェアチャートは毎年大きく変わっている。2011年は Amazon が現れ、2012 年は Google(ASUS) が割り込んできた(が、Microsoft はその他に埋もれた)。2013 年に Microsoft と HP がパイチャートに名前を載せられるかどうか。日本メーカーが載るかどうかが今から楽しみだ。

 自分は iPad 3 で満足していて買い替える気も iPad mini を買い増す気もないが。

webOSで痛い失敗をしたHP、Androidスマートフォンとタブレットを開発中との報道

ReadWriteの最新の記事によると、HPはモバイル・ハードウェア市場に再参入しようとしているという。Vergeもこの報道を別の情報源から確認したとしている。HPはwebOSを買収してPalmプラットフォームを搭載するタブレットの製造に乗り出し、TouchPadをリリースした。しかしこの製品は無残な失敗に終わり、HPはモバイル・ハードウェア事業から早々に撤退した。

HPはwebOSを使ったスマートフォンVeer 4Gも売りだしたこともある。 しかしこれも消費者の関心を呼ぶことはできなかった。HPはこの失敗後もモバイル・ハードウェア市場への復帰を狙っていたようだ。ReadWriteの情報源によると、NVIDIATegra 4チップを搭載したAndroidタブレットが間もなくリリースされるという。またAndroidベースのスマートフォンも計画されているらしい。Vergeは「順序ほぼそのとおりだが、スケジュールはまだ変更の可能性がある」としている。

Meg WhitmanはHPのCEOに就任した際に、「途上国の多くの人々にとってスマートフォンが入手しうる唯一のコンピュータとなっている事実をも考え合わせ、HPは最終的にこのような人々をも助けるようなスマートフォンを提供していく」と語った。しかし、しかし後にWhitmanは製品のリリースは2013中には行われないと述べた。

しかし2011にWhitmanは「HPはwebOSベースのタブレットを2013年に再リリースする」という意味の発言をしている。HPがWhitmanのスケジュールに合わせるために、自社の独自OS(webOSは現在オープンソースになっている)ではなく、Androidベースの製品の開発に方針を転換した可能性は十分ある。

最初に痛い失敗を経験したとはいえ、HPがモバイル・ハードウェア市場に復帰を試みるのは不思議ではない。モバイルはまさにコンピュータ産業の未来であり、AppleのiPadは一夜にしてほとんど独力でノートなどの既存のモバイル・コンピュータを圧倒して巨大なタブレット市場を成立させた。HPは2012年第4四半期の業績が予測を下回るなどハードウェア事業の不振が続いている。

しかしタブレットもHPにとって救いの神となるかどうかは不明だ。Android版タブレット市場にはまだiPad’シリーズに対抗できるような人気機種が出ていない。しかも市場にはライバル製品は無数に出まわって消費者の注意を分散させている。HPであろうと誰であろうとAndroidタブレットで成功するには既存のライバルよりはっきり高性能で価格にも魅力がある製品を開発しなければならない。

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