「提灯持ち」あるいは「あたらしもん好き」な日本経済新聞社だ。まるで、それが流行っていて、誰でもが消費している(使っている)かのような印象を抱かせるような記事で、企業経営者に積極投資を持ちかけている。特に、ネット関係ではその傾向がひどい。昔は、「個人ホームページ」であり「個人メルマガ」もあった。最近では「ブログ」もその一つだろうし(マスコミが騒ぐほどブログを書いている人間は多くないし、ホスティングもビジネスとしては不十分なままだろう)、今の一押しは「web2.0」だろう。
他にも、高機能ケータイで日本が世界をリードしているかのような煽りで市場やメーカーに幻想を振りまいた(i-mode革命とかなんとかの大はしゃぎは忘れられない)。気付いたら、スマートフォン市場では日本は普及率からは考えられないようなスマートフォン後進国になっていた。まあ、日経新聞だけがミスリードしたのではなく、マスコミやメーカー、キャリア、政府、ユーザが一体になって踊ったのではあるが。
今は、地上波デジタルテレビがターゲットらしい。そして、その中でも、最近の話題。ワンセグ放送については、良くあるアンケート調査で肯定的な意見を引き出している。これなら、総務省、経済産業省、テレビ局、端末メーカの御機嫌は麗しいことだろう。
そこで、右の記事。いちいち指摘するのが面倒になるくらいに恣意的だ。継続してここを読んでくれている人には不要だろうが、一応。まず母集団。こんな偏った層にヒアリングした結果なんて参考にならないだろう。調査したところが、市場を限定して調べるためならともかく、新聞で一般的な傾向であるかのように書くのは間違い。というより、「ミスリード」。というよりさらに正確に言うなら、「煽り」か「提灯持ち」だ。
調査は日経新聞とインフォプラント(また?)。調査の方法があいまいで誤差も書いてないという調査結果とは呼べないような稚拙なもの(正式の報告書にはあるかもしれないが、原本にあるのに紙上に載せないのなら日経産業新聞が稚拙だ)だ。母集団で分かるのは「携帯電話ユーザー1000人」ということでしかない。こんな調査で一般的な傾向を分析することは不可能。
それは別として、気になった数字だけピックアップする。見出しでは「調査対象の5割が満足している」ような錯覚を持たせるがそうではない。「使ったことのある16.1%のうちの約5割がまあまあ満足以上の評価をしている」に過ぎない。しかも、その161人のうち実際に端末を所有した上で使用経験のある人は5分の1(全体の37名)に過ぎない。自分で所有していない端末については物珍しさもあり、高評価を与えるケースが多い。それを加えてもこの数字でしかないのが現実だ。
本当にワンセグに対するユーザの満足度を調査したいなら、サンプル数が少なすぎて統計的に有意なものではないが、実際に端末を持っている37名にヒアリングするべきだ。俺の偏見かもしれないが、端末所有者の満足度を調査したら表に出せないくらい低かったんじゃないだろうか。それで、提灯持ちとしては表に出せなかったのではないか。
ワンセグの街頭デモで、「すごいきれいに映るんですねえ」「欲しいです」とかいう光景をニュースで流していたが、実に嘘くさい。地上デジタルやワンセグを普及させたい放送局が流すニュースの取材で、否定的なコメントをしても流されないだけだ。また、その取材をしているのはワンセグがクリアに入ることが分かっている場所だけだろう。地下は当然、電車や建築物の陰などで電波状態が悪ければ映りは悪くなるはずだ。
本当に「ジャーナリスト」が発信すべきは、ユーザが端末を買い換える(或いは買い換えない)選択に役立つ情報だ。それは、普及させたいことを肯定的に流すことではないはずだ。「テレビのニュースや広告は無責任だ。特にマスコミに関するニュースは全くあてにならない」と朝日新聞のジャーナリスト宣言でも言っているじゃないか・・・言ってないか?
ワンセグについて、認識を新たにする情報もあった。
見切り発車の「ワンセグ」焦る携帯事業者が抱える”爆弾”
http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/itpro/hansoku/pdf/ncc20060401_1.pdf
日本テレビ放送網は3月,バラエティ番組「ダウンタウンDX」内で番組連動コンテンツをワンセグ向けに配信した。ここでは,それぞれのゲスト・タレントに画面が切り替わる直前に,そのタレントに関連したエピソードをデータ放送画面に表示する仕組みを取り入れた。日本テレビのメディア戦略局メディア事業部の佐野徹氏は「これまでのテレビでは体験できなかった,新しいサービスをワンセグで創造できる」と胸を張る。
バラエティ番組に出演している芸能人のエピソードをデータ放送で流した日本テレビのメディア戦略局メディア事業部の佐野徹氏は胸を張っているらしいけど・・・バカにしてるのか?冗談か?本気で言っているならますますダメだ。
否定的なことばっかり書いていても嫌われるばかり。少しは用途も考えてみたいと思ったが、現在の液晶ポータブルテレビを代替することくらいしか思い浮かばない。Wカップの結果をどうしても知りたければケータイのwebアクセスで分かる。移動中でケータイでテレビを観られるような条件のときに試合をやっている可能性などほとんどない(ほとんどのゲームが日本時間の夜中だろ)。やっていたからといって、野球のような緊迫的なシーンなどというものはサッカーという競技の性格上ない。数分から数十分の視聴時間のうちにいいプレーがあるなど考えられない(ま、元々そんなサッカーファンというわけでもないしな)。
後一つだけ、これがあったらいいなと思えるのは、短い情報番組だ。短いニュースをエンドレスでループ再生するというのはどうだろう。どこで聴き始めても10分とか15分くらいで全部聴けるようなものを2時間おきに更新、あるいは回る寿司のように、ニュースを次々差し替えて最長2時間とか3時間とかで全て置き換わるとか。CNNのニュースヘッドラインpodcastは1時間ごとに一本約2分のニュース速報をアップロードしている。事件の大きさによって、流れる回数が調整されていて、重要なニュースが見過ごされることがない。このやり方を応用すれば移動時に最新ニュースをチェックすることが可能だろう。これなら、乗り換え時間とかで一本の番組を全部見ることができる。番組は1時間程度のスパンで入れ替えればいい。これなら月額150円程度なら払ってもいいと思う。昔のJ-phoneにあったブロードキャストメール配信サービス(「ステーション」と言ったような記憶がある)と同じような考え方だ。前の日本・韓国共催のときには、帰宅時間が放送時間に重なることが多く、電車の中で勝敗とか得失点とかが配信されたりした(ちなみに、このサービスも導入当初は日経新聞が大きく肯定的に採り上げていたな)。
この考え方は、昔短波放送の深夜に繰り返し放送されていたニュースがヒントだ。その番組は、0時半から5時半まで1時間番組を5回流すというものだ。これが意外に便利。いつからはじめても1時間で必ず全部聴くことができる。そして、聞き漏らしていても1時間待てば必ず聞くことができる。ちなみに、ジョン・レノン射殺のニュースを聞いたのもこの番組だった。最初は信じられなくて、1時間後に聞きなおしたのだった。(蛇足失礼)
しかし、この放送も実際には導入できないらしい。ワンセグは通常の地上波テレビと同じ番組を流さなければならないと法律で決まっているらしいから始める前から終わってる。お気の毒としかいいようが無い。
ワンセグ