デジタルアーカイブと著作権

 asahi.com : ネット最前線に、著作権についての、面白いインタビュー記事があった。

● 「インターネット・アーカイブ」代表、ブルースター・ケイル氏に聞く  
# 上:人類のすべての知識をオンラインに (2004/09/22)
# 中:低コストのスパコンでデータ保存 (2004/09/23)
# 下:「長すぎる著作権保護の被害者は、我々の子どもたちだ」 (2004/09/24)
●ロング・ナウ協会代表、スチュアート・ブランド氏に聞く  
# 上:「『時計』は、新たな1万年を考えるためのツールだ」 (2004/07/24)
# 中:「我々は10年前の情報すら引き継げない」 (2004/07/25)
# 下:「情報は、なお自由を求めている」 (2004/07/26)
●「FREE CULTURE」を出版したレッシグ教授に聞く  
# 上:「出来損ない」の著作権保護が創造性をダメにする (2004/05/12)
# 下:新たなライセンスの仕組みを作る (2004/05/12)

 インタビューの中身は興味深くいい特集だと思う。納得することも多い。しかし、これが著作権意識の強く閉鎖的な旧メディアのサイトに載っているところが皮肉だが。

 電子図書館のイメージを唱えたヴァネヴァー・ブッシュやテッド・ネルソンによって、理論的には実現可能なこともわかっていた

 もうひとつは1995年に、(米ディジタル・イクイップメント〈DEC〉が開発した)大規模なウェブの情報収集能力をもつ検索エンジン『アルタビスタ』を目にしたことだ。

 私のイメージは、紀元前3世紀の世界最大の図書館『アレキサンドリア図書館』だ。世界中のすべての本を収集しようとしていたわけだ。ただ、この図書館にもできなかったことがある。アクセスの問題だ。利用者は、ともあれアレキサンドリアに行かなければならない。だが、我々はアレキサンドリア図書館の理念に通じる取り組みが可能になった。しかも今度は、すべての情報を、すべての人がアクセス可能な形で提供できる。インターネットを使ってね。すばらしい目標じゃないか」

「カネを生むコンテンツはきちんと保護しよう。カネを生まないコンテンツは? 手放してパブリック・ドメインにすればいいじゃないか。そうなれば、だれかがはそのコンテンツを有効に利用する方法を考え出す。」

 特に、これには強く同意する。すぐに廃盤や絶版にしておきながら、二次使用を認めないのは納得がいかない。売ってないものの売上が下がるなんてありえないのだ。しかも、その作品の作者にとっても不幸なことだ。公開されれば誰かの目に止まるかもしれないのに、流通業のために公開を差し止められている名作があるかもしれない。

 それはともかく、デジタルアーカイブについては色々と考えさせられる。今、デジタルアーカイブ化しようとする動きがある。NHKはデジタルハイビジョンで行おうと文化財の取材を続けているらしい。

 しかし、本当の意味でのアーカイブを作るのなら、フォーマットは閉じたものではダメだろう。NHKのデジタルハイビジョンがどのような規格なのか、.docなのかtextなのか。大金をはたいて作ったアーカイブが、一部の機材を保管しているところでしか閲覧できないようなものになるのでは意味がない。

 また、技術的限界というのもある。RD-X4を買ってから、急いで観なくてもよいような映画はDVDに保管している。しかし、一般家庭に配信されている電波放送を録画したところで、マスターDVDのような画質は望めない。アナログビデオの標準録画よりはマシという程度だ。これも、新しい規格の放送・録画機材が普及すれば駆逐されてしまうだろう。今、ビデオテープが邪魔なゴミでしかなくなっているのと一緒だ。

 これは民生レベルだが、デジタルアーカイブもそれと同じことが言えるのではないか。しょせん、今の放送レベルの採算性と帯域を満足させるための技術でしかないだろう。将来的に通信手段が高速化されて圧縮しなくてもよくなれば非圧縮の高画質が標準になるだろう。そのときに、今アーカイブしたものでは物足りなくて再度データを作り直さなければならないのではないか。だったら、デジタル化するより、原本の保管に金をかけたほうがいいのかもしれない。高松塚の二の舞は慎まなければならない・・・

 名画の補修とか再生とかいうプロジェクトが世界中であって、「作成当時の輝きを取り戻した」りしている。そして、「XXX年前の修復時にこんな乱暴な方法がとられていたためにこんな状態になっている」というコメントを良く聞く。しかし、500年後に「2004年に行われた修復で使われた薬品のために・・・」と言われるのではないか。

 ところで、このエントリは朝日新聞の引用ガイドラインに沿っているのだろうか。まあ、連絡はしないがな。

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