交通インフラ空想的近未来 05 リスク

 光ある所に影がある。

・ネットワーク犯罪(クラッキング・テロ)
 インフラに依存するのでインフラが機能しなくなったら止まるしかない。ハンドルやペダルもなくしたら、その場に立ち往生して途方に暮れるしかなくなる。歩いて帰れるようなところならいいが、寒冷地の冬だと命にかかわるだろう。
 また、走行中にインフラがデータを送れなくなったら自動車の自律GPS情報とナビで帰ることになるだろう。個々の端末同士の近距離ネットワークで情報を共有し接近情報で事故を防ぐことができるが、交差点の事前安全確認は難しい(自動車通りの通信距離は短いし、交差点は障害物があるので見えない車との通信は難しいだろう)。そうなると、速度を落とすしかない。また、そのことで渋滞している交差点があっても遠くからその情報を知るすべがないので、渋滞は発生するだろう。自動車同士の通信で共通したデータを対向車の後続に教えることはできるかもしれないが、代替ルートが混んでいないという保証はどこにもない。
 走っている車は目的地までは走り続けるだろうが、他の車はドックスペースに帰るしかない。「XXに来てほしい」という情報はネットワークからしか来ないからだ。ドックスペースに帰った車がドックスペースに入りきれなくなるだろう。

 ネットワークとソフトウェアに制御を任せるからセキュリティの堅牢性は重要だ。危険に直結するので銀行のATMとは比較にならないほど重要だ。インフラへのクラックも影響の大きさは計り知れなくなる。クラッカーが乗っ取れる状態にして政府を脅迫することも可能になるだろう。

 また、インフラがクラックされなかったとしても、端末レベルでクラックしようとする輩が出るだろう。端末のソフトウェアをクラックして高速道路タダ乗りしたり、使用料を払わずに済ませようとする奴らは後を絶たないだろう。インフラが強固になればなるほど、依存度が高ければ高いほどクラッキングのメリットは大きくなる。自動車インフラのログを触れたら強いアリバイになる。

 最後に、AIの暴走の可能性も大きい。ネットワークが意思を持った場合、現状では自動車まではコントロール出来ないが、このシステムが実用化すれば全てコントロール下に置かれる。これはターミネータの世界観につながる。

 と、ここまで下書きに書いていたら下のような記事があった。

クライスラー社の車、システムハッキングで遠隔操作される危険性が明らかに : ギズモード・ジャパン

ハッキングで、車が危険に晒されるなんて…。

クライスラー社の車に関するセキュリティ調査で、重大なことがわかりました。47万1000台もの車に影響すると思われるこのセキュリティ問題は、なんとハッカーが遠隔操作して車のコントロールを奪うことができるという恐ろしいものなのです。

セキュリティを調査した研究員のCharlie Miller氏とChris Valasek氏が、ネタ元のWiredにて、クライスラー車におけるハッキングの危険性を語り、デモンストレーションまでしてみせました。デモでは、WiredのGreenberg記者が運転するジープチェロキー(クライスラー社の四輪駆動車)をハッキングして、車のコントロールを奪うことに成功してしまいました。車はセントルイス郊外のハイウェイを走行中だったので、ハッカーの姿はGreenberg記者の視界にはありません。つまり、いきなり車の制御がきかなくなったという状態なわけです。

ハッキングは、ジープに搭載されているUconnectシステム(セルラーネットワークに繋がる仕組み)を使うことで、車のエンタメシステムのコントロールを掴み、そこからファームウェアを書き、その他のシステムにコマンドを送るという方法。この他のシステムというのが、例えばブレーキだったり、ステアリングだったりするのが車ハックの何より恐ろしいところ。何百キロも離れたところにいるハッカーが、自分の車のハンドルを勝手に握るということなのです。

車でのハッキング体験をしたGreenberg記者は、「エアコン、ラジオ、ワイパーが勝手に動いたと思ったら、次は急に車が減速しはじめた。これは笑いごとじゃない」とコメント。ハッキングのデモとわかっていても、自分の乗っている車の制御を失うのはかなり恐ろしい体験だったのではないでしょうか。

このシステムの脆弱性の恐ろしさはもちろんですが、最も恐ろしいのはクライスラーはこれを知っていて適切な対処をしていないということです。もちろん、対応用パッチはクライスラーから配布されています。が、パッチはディーラーで入れてもらうか、USBドライブ経由で自分で入れなければなりません(Uconnectのソフトウェアアップデートはこちらから)。あまりに危険で恐ろしいハッキングの可能性があるというわりに、この対応では十分とは言えないと思います。

いろいろなモノがシステムと繋がりデータのやりとりをする機会が増えるということは、ハッキングの可能性も広がるということです。今回のリサーチで、システムの弱点が明らかになったものの、まだ事件は起きていません。何か起きる前に対処すべきなのですが…。

このセキュリティ問題に関しては、近日中に研究員がさらなる詳細を発表予定。

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