ATに対する違和感の正体

 最近のATは本当によく出来ていると思う。1300cc なのにそこそこの出足がある(Alfaromeo 145 のようなパンチ力はないが比較の対象じゃないだろう)し、シフトのショックもない(CVTなので当然かも知れないが)。20年くらい前に乗っていた 三菱Lancer の 1500cc よりはるかにパワフルでスムーズだ。エンジンの最大出力は大差ないので、EFI とATの制御が貢献していると思う。

 しかし、どうしても馴染めない気持ち悪さがついて回る。これは Fit や CVT だからという意味ではなく、Lancer から Rantis 2014 にも共通する違和感だ。

 AT に乗っていて違和感があるのは、慣性走行出来ないこと、停車前のクリープ、パーシャールがないこと、エンジンブレーキの強さの調整ができないことだ。

慣性走行

 数百m先の信号が赤になったのが分かった時に、MTではクラッチを踏んでギアをニュートラルに入れる。その時点の速度と距離、道路の勾配を計算しブレーキで速度を調節しながら車列の後ろに付ける。右足はブレーキペダルの上に置いたままだ。145 だと 60km/h で平地なら 300m くらいは余裕で転がった。

 Fit はアクセルペダルから足を上げた時点で強制的にエンジンブレーキがかかり、速度が落ちすぎるので前が赤信号で並んでいる車が見えているのにアクセルペダルから足を離せない。これが気持ち悪く怖い。

 また、田舎の見通しの良い下り道でニュートラルでもスピードが落ちないようなところをニュートラルで下っていくのが好きだったがATでは出来ない。

 惰性で走っていて、カーブが見えたり交差点に差し掛かったら、その時の速度に合わせて任意のギアに入れてクラッチを繋ぐ。ギアの選択とエンジンの回転数が合えば全くショックはない。

停車前のクリープ加速

 上記のような状況で停止位置に近づいた時、MTの場合はブレーキを緩めなが近づく。10mクラ手前になったらブレーキペダルを踏む力はほとんどゼロだ。慣性モーメントが減っているのでそれに伴ってストッピングパワーを弱めて停止位置で自然に止まるような感じに持っていく。

 しかし、AT車ではこれが出来ない。停止位置のかなり前でアクセルを緩めエンジンブレーキを効かせながら近づき、50mくらい前でブレーキペダルに足を置く。速度と相談しながらブレーキペダルを踏み込み更に近づく。速度が十分に落ちて徒歩くらいの速度になった時点でブレーキをゆるめて近づくとシフトダウンしてクリープで現象で加速する。というか、減速のカーブが寝てしまう。これが心臓に悪い。

 自然に速度が落ちて、目の前に停止してる車が見えてきたところで意に反して加速するように感じるからだ。ATレバーをニュートラルにするという手もあるが、ATトランスミッションを傷める原因になるらしいのでお勧めしないし、自分でもしない。

コーナーリング時のトルク変動

 カーブを加減速せずに通り抜けることが出来ない。コーナーのRにもよるが、MTの場合にはコーナーに入る前にブレーキング・シフトダウンをし、右足はアクセルペダルに置いて加減速しないようにアクセルペダルを調節しながらコーナー出口に向かい出口が見えた時点でそのままアクセルを踏んで加速する。これがスムーズで安全だ。無理な負荷がタイヤに掛かることもない。

 ATの場合にはこれが出来ない。前もってギアを選んで置くことが出来ないからだ。車は車速とアクセル開度によって使用するギア比を選ぶ。ATのアクセルは加速か減速かしかないのだ。だから、等速で抜けようと思っても、エンジンブレーキがかかったり加速したりする。予期せぬ加速でラインが膨らんだり減速でタックインしたりしかねない。当然、その瞬間タイヤにはコーナーリングフォースとは別に前後の摩擦まで要求され斜め向きの負荷がかかる。

 理論的には、コーナーリングに使える摩擦力が減ってしまう。路面とタイヤの摩擦力は路面の状態とタイヤとトレッド面の面積と圧力によって上限がある。コーナーリングフォースは横向きにそれを使うが、無駄な加減速によってコーナーリングフォースのマージンを削ることになってしまう。まあ、ここらは限界ギリギリでしか問題はないし、そんな走りをする人間はATに乗ってはいけないだろうが。

エンジンブレーキの制御の難しさ

 MTの場合はアクセル開度とギアの選択だけでなく、半クラッチによってエンジンブレーキを制御できる。田舎のワインディングなどでは、コーナーに入る前に2速に入れて減速し、コーナーリング中はクラッチを踏んで回り込みながら右足は回転をキープし半クラッチでトラクションをコントロールしながらコーナーを抜けるといった走り方をしていた。

 ATでは当然無理。

結論

 こうやって、気になる挙動を列記していたら共通項がわかった。エンジンに伝わる動力をコントロール出来ないことだ。動力を伝える(エンジンブレーキを効かせる)度合いを自分のコントロール下に置けないといい変えると分り易いだろうか。

 MTで走っている時には常に先の状況を予測している。「この先赤信号やから加速する必要はない。距離があるからエンジンブレーキも要らない」とか、「このカーブは急だから速度を落として、回り込みはパーシャルでエンジン回転数を右足で3,000rpmくらいに保って、立ち上がりは半クラッチ」といった感じだ。これを、ほぼ無意識でこなしている。

 ところが、ATは先の状況を読むことが出来ない。速度センサーとアクセル開度、ブレーキの踏力、エンジン出力(回転数)しかない。これらをフィードバックしているので挙動がどうしても後追いにならざるを得ない。AT の性能に問題があるのではないから、根本的な解決は不可能だ。停止時のトルク変動などはチューニングで軽減できるだろうが、カーブの先を読めない限りコーナーリング中に立ち上がりに備えた動作は不可能だ。そうするための情報が得られないのだから。

 ただ、このような感覚も不要になる。早く自動運転の時代が来て欲しい。すべての車が自動運転になり、道路のインフラもそれをアシストするようになれば事故は大幅に減らせられる。スピード違反や一方通行無視、一旦停止無視なども出来ないから取り締まる必要もない。警察の大幅な人員削減が可能になるだろう。

 ETCというような中途半端なシステムも不要になる・・・って、思考実験は前にもやったなww

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