世界変人型録

世界変人型録

 1900年前後のアメリカを中心に奇行を演じた天才・変人を短く紹介した本。近代にかけて、資本主義と産業構造の変化から特定の個人に冨が集中し始めた。一方で、社会の前近代的な制約から解き放たれた人間が新しい価値観の芽を伸ばし始めた頃でもあった。

 この本では、その両方を取り扱っていて、登場する人物は今でも語り草になるようなエピソードを残している有名人ばかりだ。そのような有名人の、人間的な側面(ゴシップ面)を中心に描いている。

 ただ、作者の登場人物に対する愛情はほとんど感じられないし、内面に踏み込むこともない。また、社会的な側面についてもまったく無頓着。

 この作品で取り扱われている人物のうち何人かは、種村季弘や荒俣宏にも取り扱われている。種村は主に、社会的背景やそれを生む個々人(我々自身も含むだろう)の心にスポット当てて読み応えがある。荒俣は種村より少しエンターテインメント寄りでではあるが、本書の作者より登場人物に対する共感や愛情が感じられる。

 古本屋で見かけたら買ってもいいが1,300円の価値はない。種村や荒俣を買うことをお勧めする。

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