enchantMOON…

 予想以上の受注があったというのは喜ばしい。1000枚単位程度の発注を単発で行うというのでは、供給会社に強く出ることもできないから部材調達が遅れるのは仕方がない。また、この製品に興味をいだいて4万円をドブにすててもいいという人柱上等な人たちなら数ヶ月の遅れなど気にもしないだろう。「この製品がないと仕事に支障をきたす」というような人は皆無だし。

「enchantMOON」出荷延期 想定以上の予約で部材確保に遅れ – ITmedia ニュース

 想定以上の予約があり、高精度タッチパネルの部材確保に遅延が生じ、組み立て行程が当初の想定から遅れたという。6月上旬には部材がそろい、順次生産を開始するとしている。

 上の記事のリンクで、下の記事を読みなおした。そして、前に自分が抱いた残念さが明確になった。

g074_my_graffiti[1] それは、「俺は手書きデバイスなんか欲しくない」ということ。自分がこのデバイスに興味を持ったのは手書きではなく手書き UI であって手書き入力ではない。手書きが嫌いでデジタルデバイス使ってるから手書きを忠実に実現することに価値を感じないのだ。

 また、下の記事にあるように、フリーハンドで入力された軌跡の表示が遅延しても座標取得は行われているというのは全然新しくない。zaurus でも palm でもそうだったし iPad の Penultimate だってそうだ(Penultimate はけっこう取りこぼすが)。遅れて表示されるのは快適とはいいがたい。手書きをするなら Graffiti のようなアプローチこそ正しいと思う。ペンと紙というインターフェースを忠実に再現するのではなく、ペンタブレットという UI を目指して欲しい。

 「紙とペンで人は考える」というのは今なら「タブレットやスマートフォン、キーボードとモニタで考える」になった。それだけのこと。

 この機種の本質は手書き入力ではないと思っている。手書き入力の精度など従来の技術の延長上だ。ハイパーテキストオーサリング機能、「No UI」コンセプトこそが enchantMoon の価値だろう。これらがどのように機能するのか。1984 年に Mac が提示した GUI に革新的な進化が見られなくなってきた今、全く新しい可能性を開くのか、ヲタの記憶に留まるだけなのか。一般出荷が開始されるのが待ち遠しい。(自分は発注してないけど)

UXClip(28):ドリキンが斬る! enchantMOONファーストルック (2/2) – @IT
enchantMOONにおけるshi3z氏の最大のこだわりは、「紙の手書きノートに書き込むのと同等の精度をペン入力タブレットで実現したかった」という点です。

 仮に最新のCPUを搭載したデバイスを用意したとしても、現状のハードウェアスペックで、入力から出力まであらゆるレイヤにおける処理を最適化しても、すべての処理を16msecで完了させるのは不可能に近いと判断したshi3z氏は、最適化のアプローチの発想を変えたそうです。

 常に16ms以内に画面更新処理を終えるということ自体はあきらめ、ペンから入力した入力データを、OSなどは介さず、入力から一番近いデバイスドライバのレイヤで、いったん蓄え、システムが描画の準備ができ次第、データを取り出して表示する手法に切り替えたそうです。

 これが、enchantMOONの手書き入力の独特の感覚につながっているのですが、ペンで入力したときに、即座に画面に反映されずに、線などを引いてみると、手描きから一瞬だけ遅れて画面が表示されます。

 この遅れ自体も最小限になるように、最適化はされてはいますが、やっぱりこの表示の遅延に気付く人はいて、「やっぱりちょっと反応が遅れますねぇ」という意見を、enchantMOONを触ったほかの友人からも耳にしました。

 ただ、ここがenchantMOONの最大の特徴でもあり、ほかのタブレットデバイスと決定的に違うところだと思うのですが、表示は遅れてもデータは取りこぼしていないという点です。

 実際、shi3z氏に聞いてみたところ、入力データに関しては1秒間に60回どころか120回以上のサンプリングレートで取得しているそうです。

 また、ペンが取得できる入力データの解像度は815PPI(Pixel Per Inch)とのこと。これは、iPadやiPhoneなどが搭載するRetinaディスプレイの解像度と比べても2倍から3倍近い解像度であることを意味してます。

 つまり、液晶の解像度はiPad mini相当ながら、実際にペンから取得しているデータ自体は、Retina液晶の倍以上の精度があるということです。

 もちろん、厳密に手書き入力と同じ書き心地を実現したかといえば、それは違うのですが、従来のタブレットデバイスなどで見られる遅延とは違い、enchantMOONにおける遅延は描画だけに起きていて、実際にペンから入力されているデータは、きちんと取りこぼされることなく取得されているということが重要です。

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