補助金廃止、落下事故が「追い打ち」…“失速”する風力発電

 原発事故の後で、再生可能エネルギーの一つとして風力発電を挙げている人がいた。それ以前のプラントの問題の大きさから懐疑的だったが、今頃になって下のような記事が出てきた。

 不安定な出力なんてわかりきっていたことだろう。「風まかせ」なのだから。予定の発電量を見込む時のメーカーの示した発電量が現実に基づいた合理的なものではなく、採算性から逆算したものだったのではないか。その検証こそが重要だ。「風力発電はコストが悪く(出力が不足することが多くメンテナンス費用や事故対応費用がかかる)、弊害(音や振動による地域住民への負担)もある。だから、再生可能エネルギーとして推進しないほうがいい」という結論が出れば(そんなことはとっくに出ていると思っていたが)、それはそれでひとつの礎となる。

 落下事故や故障についても、以前から発生していたことだし、機械を使う以上見込んでおかなければならない。「全てが予定通りに稼働したら採算が取れます」などという希望的観測に基づいた計画を進めるのは、使用済燃料や原子炉の廃棄にかかるコストを無視した原子力政策や、道(橋、空港)ができたら利用者が増えるとして大金を投じたのと同じだ。

 そもそも、補助金がないとランニングコストを回収できないようなものは社会的な負担を増やすだけの無駄遣いでしかなく「再生可能」とは言いがたい。 

 ただ、前にも書いたと思うが、これは2013年のコスト体系を基にした採算性だ。将来的に化石燃料が枯渇したら、全てのコストを含んでも風力発電の採算性が上がる可能性はある。「採算性」は相対的な比較でしかないからだ。なお、「化石燃料」には原子力発電も含んでいる。原子力も希少鉱物資源を熱源にしているからだ。メタンハイドレートもシェール・ガスも同様だ。すべて植樹せずに木を切るのと同じ行為だ。

補助金廃止、落下事故が「追い打ち」…“失速”する風力発電 (産経新聞) – Yahoo!ニュース
産経新聞 5月9日(木)8時8分配信

 東日本大震災以降、改めて注目が集まり始めた「再生可能エネルギー」の一つ、風力発電の新規導入が伸び悩んでいる。もともと予定通りの出力が出ないといった性能面の課題に加え、固定価格買い取り制度導入に伴う助成金の廃止や環境影響評価(アセスメント)の導入などが影響したとみられる。今年に入ってからは風車の落下事故も相次ぎ、勢いがさらに“失速”する可能性も出てきている。

 ◆助成金は廃止
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、風力発電は平成2年度のわずか9基から年々増加。23年度には全国1870基、総発電量約255・5万キロワットまで増えた。

 しかし23年度以降、新規導入数が伸び悩み、23年度39基、24年度49基にとどまった。国(経済産業省)は13年に「22年度に総発電量300万キロワット」との目標を打ち立てたが、日本風力発電協会によると達成は27年度以降になる見通しという。

 伸びを鈍らせた原因とみられているのが、再生エネルギー買い取りを法律で保証する「固定価格買い取り制度」への切り替えで行われた助成金廃止。また騒音問題などを背景に、環境影響評価の導入など明確な設置基準も設けられ、新規設置のハードルは上がってしまった。

 ◆不安定な出力
 風力発電は太陽光発電に比べて設備容量あたりのコストも安いなどセールスポイントがある一方、想定していた出力に達しないケースもみられる。今年3月に風車の落下事故が起こった太鼓山風力発電所(京都府伊根町)。6基の風力発電機で、年間計850万キロワット時の電力量を見込んでいたが、23年度の実績は半分の約427万キロワット時。

 雷によって風車が壊れるなどの被害が相次いだことが原因といい、京都府の担当者は「故障すれば出力も下がるし、コストもかかる。当初はまったく想定していなかった問題だ」と表情を曇らせる。

 昭和61年にJR山陰線の余部鉄橋から列車が突風にあおられ転落、6人が死亡する事故が起きた兵庫県香住町(現・香美町)の元町長、藤原久嗣さん(73)は、平成14年に町として導入を試みたが、断念したときのことを振り返る。

 「簡単に導入できると思っていたが、季節によって風量も違い、条件にあう場所がなかった」

 ◆事業見直しも
 こうした中、京都府と三重県で今春、落下事故が相次いだ。太鼓山風力発電所では3月12日、発電機1基の支柱が折れ、先端に設置されていた風車と発電機が落下。金属疲労の可能性があるとみられる。

 また4月7日には、津市と三重県伊賀市にまたがる風力発電施設「ウインドパーク笠取」でも風力発電機1基の風車と発電機が落下した。津市では同日、最大瞬間風速20・2メートルを観測しており、部品の強度不足が原因だった。

 経産省は「風車や発電機が落下する事故は国内で例がなかった」として、各地の事故数を調査するなど実態把握に乗り出しているが、ある自治体の担当者は「事故が増え、補修のコストを考えると、事業を見直さざるを得ない」と話す。

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