広告にリーチされたくないんだが

 先日のNRIの調査報告以来、HDDレコーダーによる録画・CMスキップが色々取り上げられていて楽しい。後出しジャンケンの感も否めないが、大和総研、矢野経済研究所もこれについて取り上げている。

矢野経研、HDDレコーダーによる視聴スタイルとテレビCMへの影響を調査 – CNET Japan

 ユーザー調査にて、HDDレコーダー所有者に対し、ビデオデッキ時代と比較して週あたりの視聴時間にどのような変化があったのか調査したところ、録画時間で76.3%、再生時間で71.0%「視聴時間が増加した」という結果が出た。また、リアルタイムでテレビを視聴する時間は、63.5%が「変わらない」とする一方で、23.1%が「減少した」と回答した。YRIでは、こうした結果を基に各時間を推計し、「週あたりで録画は3時間7分、再生は2時間29分増加し、リアルタイム視聴は20分減少した。リアルタイム視聴は微減したが、再生視聴が増加したため、テレビとの接触時間は合計2時間9分増加したことになる」としている。

 CMスキップについては、「ほぼ毎回(90%以上)」CMをスキップするユーザーが45.5%で、「頻繁にする(70~80%)」が23.6%、「半分程度(40~60%)」が12.6%となった(図1)。このデータを基にYRIではCMスキップ率を69.2%と推計し、「CMスキップは日常的に行われている」とした。

 こうした結果に対する広告主へのヒアリングでは、「リアルタイム視聴が微減であれば、テレビCM優位の方針に変更はない」という意見がほとんどで、CMスキップを大きく問題視する声は少なかったという。

 この調査は広告主にヒアリングしているところが特徴だ。また、野村総研の調査ではテレビの視聴時間は減り続けることを予想していたが、この調査ではHDDレコーダーのユーザーは増加傾向にあると出ている。この調査結果が正しいのならテレビ局も広告会社も広告主も文句はないだろう。普及が進むHDDレコーダーのユーザーが視聴時間を増やすのなら、PCの前から視聴者を引き戻してくれる原動力として考えることもできる。

 ここから、「テレビ広告を肯定的に捉える矢野総研とネット対応を勧める野村総研」というスタンスの違いが感じられる(野村総研の調査では、HDDレコーダーユーザーのテレビ視聴時間の増減を表すものはない)。これは、調査を売り込む相手、或いは調査を依頼してきたクライアントへの何等かの意図があるのかもしれない。

 ユーザー調査では、リアルタイムで視聴できるにもかかわらず、CMスキップや早見再生を使って効率的にテレビを視聴するために、あえてHDDレコーダーに録画するユーザーが増加傾向にあることも判明している。こうした視聴スタイルが「増加した」とするユーザーは45.6%にのぼり(図2)、YRIでは「リアルタイム視聴を直接減少させる視聴スタイルが増加すると、テレビ広告事業モデルという観点では将来問題となる可能性がある」としている。(矢野総研)

 という指摘も忘れてはいないが。

 これらに対して、大和総研は、「テレビは録画されてCMスキップされて消費される」ことを前提にするべきと提言している。

大和総研/コラム:CMスキップとテレビ局のビジネスモデル

 テレビ局は、CMスキップを敵視するよりも、DVRに保存されるCMデータを活用し、効果あるリーチの獲得とその測定へ取り組んでいくほうが建設的と見られる。そのためには、家電メーカー、インターネットサービス事業者との連携が不可欠である。テレビ局は、デジタル放送への移行を契機にコピーワンス制御によるコンテンツ保護の方針を打ち出したが、視聴者の利便性向上なしにメディアとしての発展は望めない。今一度リーチの量的・質的変化を見据え、視聴者のロイヤルティ向上を図ることが優先課題であろう。

 ネット対応HDDレコーダーなら技術的に可能だろう。それどころか、HDDレコーダーのチューナーを経由したものに限定されるが、従来の視聴率調査より高精度な視聴率記録装置にもなるかもしれない(速報には向かないが)。

 しかし、これらはすべて企業側(広告の送り手)からの問題意識だ。ユーザーは(というか俺は)、押し付けがましいうるさい広告にはうんざりなのだ。バラエティの「答えはCMの後」とか、CM後にCM前の映像を繰り返されたりするのが大嫌いなのだ。そんなことをしている番組ほどHDDレコーダーの時間節約機能が活きてくるのだ。こんな、クソな編集の番組を垂れ流しておいて、「HDDレコーダーのCMスキップ機能は著作権の侵害だ」とほざくような寄生虫は消えろと思う。

 少なくとも、俺は広告を見せられるのが嫌いだ。自分が必要な情報を簡単に探しだせる方法さえあればいい。「あなたの好きなDVDが発売されましたよ」などと教えてくれなくてもいい。それより、MagicCapのようなサービスで探したい情報を登録すれば横断的に探して結果をレポートしてくれるようなサービスが欲しいが広告という枠組みでは無理だろう。

 娯楽を分け与えることにより持てるものが持てざるものの支持を得るという、ローマ帝国から続いた統治モデルが変わるのかもしれない。その結果が混乱か新たなる統治方法かは誰もわからない。

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