「Android」上の支配力に「Facebook Home」がもたらす影響

 Google はオープンにすることで普及を図った。強力な先行者がいる市場に割って入るためにはこれしかないという判断だったのだろう。自社の利益を常に優先する Microsoft が Symbien や Blackberry、iOS が支配する市場に割って入れなかったのはこれが原因だろう。因みに、Microsoft は Apple よりずっと早くからモバイル OS に挑戦し続けてきた。

 そして、それはプラットフォームになった。IBM PC-AT がパソコンのハードウェアをオープンにした時のことを思い起こさせる。これをなぞってみたい。パソコン事業参入に遅れた IBM は Microsoft の MS-DOS を搭載し(パソコン用の OS を自社で開発できなかった。というより、汎用機メーカーの技術者が本気で取り組まなったのではないかと素人は思っているが)たパソコンを作り、市場参入の弾みをつけるために他のメーカーも同じ企画のパソコンが作れるように回路の設計を公開した。そして、パソコン組み立て専業メーカーが多数現れた。そして、Tips and Technology (だったかな)が多くのLSIを集約したチップセットを作成し、ここからパソコン製造業の性格が一変した。要素技術を買ってきて組み立てることがパソコンメーカーの仕事になった。そして、それらのメーカーの攻勢にさらされた IBM はパソコン市場から退場を余儀なくされた。

 Google がこの轍を踏むのかどうかは分からないが、多くのメーカを巻き込むことで、プラットフォームとして成功したが、Amazon と Facebook は Android を単なる OS として利用している。オープンを標榜し、自由度をアピールしてきた Google がこれらに制限を加えることは難しいだろう。かといって、「Android 栄えて Google 滅びる」というのは防ぎたいところだろう。

 モバイル端末市場に新しい戦闘の構図が現れた。Amazon とも Samsung とも異なるアプローチで Google を純粋にプラットフォームとしてのみ使用する Facebook の登場だ。ただ、まだ Android 端末は全機種が Facebook アプリを使えるわけではない。まだ分からないが、Facebook のようなレイヤーをOSの上にかぶせるにはCPUパワーと電力が必要になるだろう。これが、普及の足かせになるのかならないのか。楽しみだ。

グーグルに迫る新たな脅威–「Android」上の支配力に「Facebook Home」がもたらす影響 – CNET Japan

androidOnFacebook Facebookは同社のユーザーベースを直接コントロールしたいと考えており、それをスマートな方法で行うつもりだ。4月12日から一部のAndroid搭載スマートフォンでダウンロード可能になる「Facebook Home」は、新しい携帯電話でもOSでもなければ、Amazonの「Kindle Fire」のような、根本的にカスタマイズされたバージョンのAndroidでもない。

 Facebook Homeは、一連のアプリとユーザーインターフェースを1つにまとめて、新しいスマートフォンエクスペリエンスの外観を作り出そうというものだ。このことはFacebook Homeを一層危険なものにしている。それは一部の人々、特に非常に熱心なFacebookファンにとっては、Androidに取って代わるものになる可能性がある。このことはGoogleを心配させるはずだ。

 Creative StrategiesのアナリストのBen Bajarin氏は、「Facebook Homeがスマートフォンを乗っ取るさまを見ることになるだろう。そしてユーザーは、Facebookが見せたいものをより多く目にし、Googleが見せたいものをあまり目にしなくなる」と述べている。

 このソフトウェアはAndroidの上で動作するので、FacebookはFacebook Homeを多くの端末に素早く、そしてほとんど制約なく追加できる。Facebook Homeのユーザーはことによると、新しく構築されたこのソーシャル中心のバブルの中にとどまるようになるかもしれない。あるいは少なくとも、Googleが構築したコア機能への依存度や利用を減らすだろう。

 「Googleにとって本当に重要なのは、自社の検索がすべての端末で使われることだ。(Facebook Homeが)Googleの検索ビジネスモデルを踏みにじるような事態にならない限り、Googleが必ずしも懸念を抱くとは思わない」(Bajarin氏)

 Homeには、「Cover Feed」によるスライドショー表示に加えて、アクセスしたい基本的なアプリをブックマークするアプリランチャーや、誰かからメッセージが届けばすぐに通知する「Chat Heads」などの機能がある。Chat Headsは、ユーザーがほかのことをしていても、メッセージに返信するか表示を消すまで、画面から消えることはない。

 Androidが無料のオープンソース製品であるのには理由がある。Googleは売り上げの大部分を、スマートフォンそのものに表示される広告で生み出しており、その検索や電子メール、そして関連製品にアクセスするユーザーに頼っている。Facebookは4月4日のFacebook Homeの発表では、独自の検索ツール「Graph Search」について言及しなかったものの、同社がそうした検索機能を新製品に追加するのは想像に難くない。またFacebookが、競合する独自のアプリストアを立ち上げたり、地図プログラムを構築したりするつもりがないと言えるだろうか。

 結局のところFacebookとGoogleは、Googleがソーシャルネットワークに参入したり、Facebookが検索に手を広げたりするなど、絶えず多くの分野でぶつかり合っている。モバイルはこの2社にとって重要な戦場であり、両社とも市場を支配しようとすることは目に見えている。現在のところ、Androidが圧倒的に普及しているGoogleがかなり優勢な立場にある。

 OvumのアナリストのJan Dawson氏によれば、FacebookはFacebook Homeによって、モバイル端末でのユーザーの行動をより詳しく追跡したり、より多くの広告を表示させたりできるという。どちらもGoogleがAndroidから得ている重要な強みだ。

 「Facebookがモバイル端末向けのOSを作らないとするならば、これは2番目に良い方法だと言える」(Dawson氏)

 現在のところGoogleはFacebook Homeについて、中立の姿勢を保っている。

 Googleの関係者は次のように述べている。「Androidプラットフォームは、数多くの異なる種類の端末の開発を促進してきた。最新の端末が示しているオープン性と柔軟性は、これまでのAndroidの広い普及に貢献してきた」

 一方、Facebookの最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏は4月4日の発表の中で、Facebook Homeが実際には「Androidとって非常に良いもの」であることを述べている。Facebook Homeによって、アプリ開発者はAndroidに「高品質なエクスペリエンス」をもたらすはずだからだ。しかし同時にZuckerberg氏は、Facebook Homeが最初に登場するのがAndroidであって「iOS」ではないのは、AndroidではFacebookがやりたいことを何でもできるからだと述べている。

 「GoogleのAndroidはオープンなので、われわれはGoogleに一緒に働いてもらう必要がない」(Zuckerberg氏)

 このシンプルなコメントは、Facebook Homeに関する2社の立場をはっきりと示しているように思われる。Googleはオープン性を保つという約束のために、表面上はHomeに反対していないが、それについて喜ぶことはできない。

 もちろんZuckerberg氏の言い分が正しく、Facebook HomeがAndroidに利益をもたらす可能性はある。Facebook Homeが本当に軌道に乗れば、人々がAndroid搭載端末でHomeを使うために、「iPhone」を使うのをやめることもあり得る。そしてFacebook Homeが軌道に乗っても乗らなくても、ユーザーの大部分がつねにFacebook Homeにとどまって、ほかのアプリにアクセスしなくなるという事態は起こりそうにない。

 いずれにしてもGoogleは、Facebookの取り組みと、Zuckerberg氏が次にひそかに用意しているものをしっかりと監視してくことだろう。

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