Team SKY 強し(ロードレース個人優勝はチームの勝利である証拠)

チーム・スカイ
19ステージでフルームを守りながら集団を牽く Team SKY
 ツール・ド・フランス2017は今日最終ステージ。今年の優勝者は Team SKY の Chris Froome(クリス・フルーム)。もう順位が変わることは、トップの選手が急病で出走できなかったりしない限り、ない。それがツール。

 今年も Team SKY は強さが際立った。去年も圧倒的だったが、去年まではフルームが山岳でのエース直接対決で他のエースに対してタイムを大きく稼ぐという印象が強かった。今年はステージ優勝はないし、山岳で並み居るライバルを蹴散らして差をつけるシーンも、去年よりは少なかった(それでも、何度もライバルを引き離してゴールしてるので、あくまで去年よりという意味。今年のパフォーマンスも優勝にふさわしいものだった)。

 Team SKY はゼッケン一桁という唯一のチームだが、ゼッケン一桁を背負い、イエロージャージを要してステージの半分以上を走るというのは並大抵のことではない。今年も随所でチャンピオンチームとしての重責を担うに足る偉大なチームであることを示した。印象的だったのが14ステージでホイールトラブルで集団から脱落したエースを集団に牽き戻したシーンがそれだ。

 AG2R のペースアップによりふるい落とし(セレクションと呼ぶことも有る)がかかっている最中だった。トラブルを抱えていない選手たちですら集団からふるい落とされ、優勝候補の一人だった(これまでにタイムを落とし今年の優勝の可能性は潰えていたが) Nairo Quintana すらもが脱落してしまう強力な攻撃だった。その際中にマイヨ・ジョーヌを着るフルームがホイールトラブルで止まってしまったのだった(後の報道でスポークが折れた事がわかった)。

 「チームメイトが自分の自転車のホイールをフルームに渡し、他の2名が牽引し、その2名が力を使い果たした後、集団に近づいたエースを前方集団にいた他のチームメイトが待ち構えて集団まで牽引した」起こったことはこれだけだが、Team SKY のチーム力がなければ「集団がスピードを上げているときにホイールトラブルに見舞われて大きくタイムを落とした」となるところだった。

 ホイールトラブルで止まったフルームに自らのホイールを渡して送り出したという時点で、エースの近くにアシストが控えていたことが分かる。近くにアシストがいなければ、チームカーか MAVICカー(ホイールメーカーの MAVIC がサービスのために走らせている黄色い車で、チームにかかわらずホイールトラブルに見舞われた選手にホイールを供給する)が来るのを待たなければならないところだった。

 次に、アシストが2人フルームを牽いて集団に追いついていった。AG2R がチームで作っているハイペースに 2 人で追いついていった。集団から脱落してくる選手たちの間を縫うようにして3人で登っていた。「追いつく」ということは前を行く選手たちより高速で走ったということだ。これが並大抵のことではないことは誰でも分かるだろう。

 さらに、AG2Rの牽く集団に残っていたチームメイトはフルームが近づいてくるまで集団内に留まり、フルームが単独で近づいてきたとき(アシストした2人が力を使い尽くして落ちていった)、スピードを落としフルームが追いついてくるのを待って追撃を開始、集団までエスコートした。自らが総合上位にいるランダが集団に残ることで集団のペースを牽制したのだ。もし、ランダが完全に集団から落ちていたら、AG2R だけでなく他の総合上位の選手たちも協力してペースを上げたかもしれない。そうなると、Team SKY の力を持ってしても追いつけたかどうかは分からない。

 強力なチームメイトが統制の取れた行動と献身的で圧倒的なパフォーマンスでフルームをアシストした。こんなことのできるチームは今は Team SKY しかない。

 右の写真は19ステージで集団を牽く Team SKY。ツールの3週目の木曜日にこれだけの陣容を残している。しかも、マイヨジョーヌを守りながら、ちゃんと集団を牽引するというマイヨジョーヌ・チームの責任を果たす。これがチャンピオンチームだ。

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