ヘルスケア フィットネスクラブが目指すべきビジネスモデル

 こちらのエントリを見れば自分が通っているジムがデータを取る機会や使う機会を全く活かしていないことが分かる。

 今のビジネスモデルは場所の時間貸しモデルだ。一番儲かるのは月会費を払いながらも施設を利用しない幽霊会員だ。カインには来てほしくないと思っているかもしれないので、顧客満足度を上げればいいというものではないかもしれない。しかし、幽霊会員は必ず気づく。「俺、なんでジムの会費払ってるんやろ」と。これが今のビジネスモデルの限界だ。

 顧客満足度を上げてジムの利用者を増やす。増やすためには新規の客を集めるのと同時に退会者を減らさなければならない。そのためには、顧客満足度を上げるしか無い。ただ、今の状態のまま客が増えるとマシンが使えない状態が発生し顧客満足度を下げることにつながる。来館する客を増やしながらも顧客満足度を上げなけれならない。

 ジムに行って気づくのは、60歳以上の利用者が予想外に多いことだ。老人の運動機会を増やすのにジムは最適だ。外を歩いたり走ったりはなかなか難しいし負荷がかかりすぎても体を痛める。ジムでトレーナーの適切なアドバイスのもとで運動すれば効果は大きいと思う。昼間の利用料金の安い時間帯が使えるし。高年齢割引も充実させればいいと思う。後、肥満体型の人も頑張っている。素晴らしい。歩こうと思っても膝や腰を痛めてしまいそうなまでになってしまったら、ウォーキングすら危険だ。自分的にはリカンベントバイクをオススメしたいが、トレーナーが教えるのか、アップライトのバイクに乗っていることが多い。アップライトだと尻が痛くなるから長時間漕ぐことは難しい。リカンベントバイクで1時間以上回したほうがいいと思う。これらの人に適切にアドバイして健康にすることは社会的にも価値のあることだし、顧客にも喜ばれるだろう。

 場所やマシンを貸すだけでなく、サービスを提供することへのビジネスモデルの変更が必要だ。スタッフ全員がディズニーの「キャスト」のようにサービスを提供できるようになれば顧客は増えるはずだ。

 これを達成するための方策を考えてみた。

顧客データの収集と活用

 実は、これが全てと言っても過言ではない。入会時に提出される個人情報は貴重な資産だ。そして、ジムで取得できるデータはそのデータの価値を更に高めるだろう。(これについては後日まとめる)

IDバンド
fitbit AltaHR データを収集するためのキーは、個人情報とデバイスからの情報をつなぐためのIDだ。誰がいつ、どのマシンでどれくらいの時間運動をしたか。体重や体脂肪率がどう変化したかが個人別に把握することが重要だ。そのために提唱したいのが、IDバンド だ。Bluetooth 又は NFC を使ってジムのセンサーや他のデバイスと会話する。単体ではフィットネス・トラッカーとして生活習慣のデータを収集すると同時にアプリでその情報を提供する。

 形状 は fitbit Alltar HR のようなものとなるだろう。ジムのオリジナルロゴを入れて、IDバンドをしていることでそのジムに通っていることを表現できるようになるのが理想だ。何かの機会で同席した人同士がIDバンドを見て「ジムにいかれてるんですね。」となれば最高だ。

使用例
 来退館時は無人のゲートをくぐる。NFC で来館時間が記録され、登録した顔とIDバンドの照合を行う。バンドを他人が使用するのを防ぐためと、スタッフを出入り口に常駐させる必要をなくすことが可能。

 チェックイン情報をサーバに登録すると同時に、IDバンドに使用するロッカーの番号を表示する。ロッカーの情報もサーバで管理し、使用開始時刻や使っている客の標準的な滞在時間から開いているロッカーのどれが最適かを割り出してロッカーを割り当てる。隣り合ったロッカーを使っている人同士が同時に着替えるのは窮屈だ。ロッカーを使うのは入館時と退出時のそれぞれ数分だけだ。これをずらすことはそれほど難しいことではないだろう。これが実現すれば今のままのロッカー数で利用者が増えても困らないだろう。(実際に、SD fintess のロッカーは上下2段になっているが上下のキーが抜かれているのを見たことがない。)

 ジムフロアのゲートを通るとバンドにオススメのトレーニングマシンがIDバンドに表示される。オススメのトレーニングマシンは、各人のトレーニング履歴やトレーニングプラン(*)と使用中マシンの状況(残り使用時間や予約状況)から割り出される。オススメのマシンに行く場合にはIDバンドをタップして予約する。

 別の順番で行いたい場合にはIDバンドのボタンでキャンセルし、任意のマシンの前に行きセンサーにかざす。予約なければ解除され、予約が入っていれば、そのメッセージが返される。

 筋トレ系マシンには動作・強度センサー 、液晶タッチパネルとIDバンドとの通信装置を付けられている。使われていない間、液晶パネルには使い方や効果を説明する動画が表示されている。予約が入っている場合には予約状況も表示される。

 マシンはIDバンドをかざさないと使えないように安全装置でロックされている。

 ユーザがIDバンドをかざすと、液晶パネルに使用履歴とトレーニングプラン(*)が表示されるので、オススメのプランに従うか「強め」「弱め」のボタンをタッチして負荷を決定する。

 運動中には液晶画面に、推奨する運動のスピードをガイドする動画や音を出力する。IDバンドの心拍センサーで取得した心拍数を液晶に表示するとともに、異常時に緊急停止する。 応援アニメや普通の映像コンテンツを表示することも可能にする。インターバルにはジムからのメッセージを流してもいいだろう(広告なども考えられる)。

 運動を終えてその場を離れれば、その記録(負荷・回数・時間等)がクラウド(**)にアップロードされ、 使用履歴に登録される。次回の履歴画面やトレーニングプランに反映される。そのデータはジムのスタッフからもアクセス可能(入会時に断っておくこと)。

トレッドミル(リカンベントバイク、エアロバイク、エリプティカル・ワークアウト)
 マシンのデータ収集については前に書いたとおり

体組成計、血圧計
 全てのセンサー情報は個人情報に記録され推移を見られるようにする。

スタジオ
スタジオの予約は入り口の端末またはネットで行えるようにする。スタジオの予約を入れた日にはリマインダーを送信する。

 スタジオの出席状況から、トレーナーからのアドバイスを行う。ダンスなどはミルと同様に動画撮影を行い、フィードバックとコーチングに使用する。

◯トレーナー、スタッフ
 今行っているジムでは、スタッフは来退館時のバーコードチェックでしか関わっていない 他に、事務手続きと 入会時にマシンの使い方を教えてくれるのと、体組成を測ってくれるのと、物販も行っているが普段は無関係だ。これはがもったいない。が、彼らは客のデータを全員が共有してはいない。客が記録しているトレーニング記録も全く見ていないし、紙ベースの手書き情報を全部把握できないのは当然だ。客が記録したトレーニング記録は重要だし貴重なものなのに、全く使われていない。

 提案していることが実現されれば、全スタッフが客のデータを手元の端末で確認できる。誰がどのような目的で来ていて、今どのような進捗なのかが分かる。それをきっかけに話しかければ客の満足度は大きく上がるはずだ。来週初マラソンに挑戦しようとしている人がいたら、「XXさん、いよいよですね。今週は調整だけにしましょう。」といった声掛けができる。ダイエット目的の人を励ますこともできるだろう。それらは継続の糧になる。そして、ジムにとっては金づるをつなぎとめる役に立つ。

◯サービス
*トレーニングプラン(ダイエットプラン)
 トレーニングプランは使用履歴データと入会時のカウンセリングデータ、身体データ、バンドから収集した生活習慣トラッキングデータから作成する。

 機械的なプラン作成は自動的に無料で行い、対人カウンセリングを有料にすればいい。そこで顧客満足度がトレーナーの評価につながるようにすべきだ。

**データクラウド
 全てのデータはヘルスケア産業にとって垂涎の的となるだろう。保健データ(健康診断結果や病院の履歴データ)と運動習慣や生活習慣を結び付けられれば、新しい知見が得られるだろう。自社で分析して、効率の良い減量プランや走力強化プランを提供することも考えられる。ジムにとって、そこで取ったデータを欲しがるヘルスケアや医療関係者をも顧客にするのだ。

 その際に、他社と提携して、用品(シューズやウェアなど)の優先販売を行うこともできる。相当絞り込んだ広告が打てるはずだ。店内のタッチパネルから発注することも可能だろう。引き落とし口座や住所情報はジムで持っている。バンドがキーなので認証も可能だ。ジムの端末からでは登録住所以外に送れないようにしておけば、他人のバンドで物を買うことは防げるだろう。

 また、客に対してはクラウドのデータを個人のネットワーク端末で見られるようにする。来館頻度の落ちている客にサービスを行ったり、モチベーションアップを促すプロモーションを行ったりもできるだろう。例えば、「10月にマラソンに出る予定」を申告しているのに足が遠ざかっているような人がいれば「トレーニングの進み方はいかがでしょうか?アウトドアのトレーニングは重要ですが、トレーニングの成果を確認したりフォームのチェックをするためにジムに来られてはいかがでしょうか?」といった投げかけが可能だろう。

 そして、個人情報をマスクして外部に販売するというビジネスに繋げられる。また、API を通じて他のサービスとの連携も考えられる。外を走ったデータをジムでは把握できないが STRAVA や Runkeeper のようなサービスと同期できれば、その人がサボっているのか、外でのトレーニングを重点的に行っているのか一目瞭然だ。それによってトレーニングメニューやアドバイスを変えられる。

 外でのランニングを繰り返しているのに「最近サボってんちゃうん?」みたいなメッセージが来たらジムを辞めようかと思うだろう。でも、ジムに何週間も行ってないのに「トレーニングは順調ですね。フォームのチェックのためにジムにいらしてはいかがでしょうか?」というメッセージが来たらジムを続けようと思うだろう。

 考えて欲しい。初マラソンの前に「がんばってください」と言われ、マラソン後にジムに行ったら「XXさん、おつかれでした。完走おめでとうございます。ジムのバンドのログを使ったアドバイスをしましょうか?一回1,000円ですが、STRAVA のログを使った分析とアドバイスもありますが」と言われて断るランナーがいるだろうか?

ビジネスモデル

IoT
http://www.irasutoya.com/
 顧客に場所を貸すだけでなく、サービスを提供するビジネスモデルへの変更だ。更に、顧客のトレーニングログのデータを分析し研究機関や医療機関に提供したり、新しいヘルスケアサービスを作ることも視野に入れなければならない。

 早くしないと、Life fitness にデータを全部持っていかれる。ライバルはそれだけではない。個人の運動やライフログデータを欲しがっている企業は雨後の筍状態だ。これについては別に書く。

 フィットネスクラブは身長・体重・年齢・性別といった個人情報と紐ついた運動ログをとる一番有利な位置にいる。このアドバンテージに気づくかどうかで、10年後に生き残れるかどうか決まる。

 「今のままでも入会者と退会者が同じなら存続できる」というのは甘い。そのうち退会者のほうが上回る。商圏内の人口が増えているところならともかく、人口が減少しているところで、需要が一巡したら必ず退会者が上回る。一度退会した人を呼び戻せるようなサービスをしない限りジリ貧だ。今のままでは SD fitness 福知山は10年以内に閉館するだろう。自分は4月で退会するので、寂れていく様子をレポートできないが、閉館したら書くww

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です