PCの操作コストについて考える(JWCAD)

左手で使用頻度の高いコマンドを入れられるように入れ替えた例。
左手で使用頻度の高いコマンドを入れられるように入れ替えた例。
 JWCAD キーボードコマンドのマッピング見直しと eSports マウスの導入でほぼ臨戦態勢が整ったが、ソフトの仕様上で解決できない不便さがある。どうしても AutoCAD LT と比較してしまう。

 ミラーリングが不便。AutoCAD ではミラーコマンド一発で任意の仮想直線に対して線対称コピーができる。しかも、文字を反転するかしないかを選べたから、寸法込みで鏡面コピーして反対側を描くことができた。JWCAD は鏡面コピーを複製または移動コマンドのオプションで行うが、線対称の線が必要だし、文字が反転してしまう。文字を含まずに図面を鏡面コピーした上でテキストだけをコピーしなければならない。この手数はかなり多い。

 一番面倒なのは、コマンドや動作を確定する時にキーでできずマウスボタンクリックが必要となること。「実行」とか「・・完了」とかいったことのために画面最上部のボタンを押さなければならないのは大きなストレスだ。AutoCAD はスペースバーだけでいい。

 「マウスクリックとスペースバーと同じ一操作じゃん」と思うかもしれない。しかし、それはCAD作業をしたことのない素人の感覚だ。AutoCAD の操作体系はプロが長年築き上げてブラッシュアップしてきたものだけある。スペースバーが Enter の代わりというのには大きな意味がある。スペースバーは左手で一番押しやすいキーだからだ。右手でマウスを使っている時に Enter キーは押しにくい。マウスから手を話してキーを叩くなどは考えられない。

 また、ポインタを一切動かさなくていいことも大きい。特定の箇所の線を操作している時にその近くの線を引き続き操作することは多い。確定のためのボタンが画面上部にあるJWCADでは一々ポインタを画面の最上部へ往復させなければならない。スペースバーで確定できれば全く要らない操作だ。

 そして、見落としがちだが、画面上部のボタンを押すためには視線を対象オブジェクトから外して見上げる必要がある。その後、視線をオブジェクトに戻しマウスポインタを移動させなければならない。1回や2回なら差はつかないが、図面を描くときにはこれの繰り返しといってもいい。そのたびごとに無駄な操作が入るのは疲労の元になる。

 過度のマウス依存UIはDOSから移植されたソフトに多い。Mac とマウスに憧れて取り入れたが、キーボードコマンドをそのままマウスに置き換えたために、従来キーボードでやっていたであろう操作までマウスのみにしてしまった感がある。自分が勤務している会社の社内開発プログラムは最悪で、タブキーでターゲットが飛ぶ順番がデタラメだったり、プログラムを終了するためにウィンドウのクローズボックスをマウスでクリックしなければならなかったりする。

 一番ひどいのは、操作をプログラムができた時に情報システムが使用部門に対して行う説明に依存していること。作った当座は説明を聞いた人間が操作するとしても異動時の引き継ぎはほとんどないから、担当者が代わっていくにつれて、「とりあえずここには・・・する」みたいなことが増えて、なんでそうするかわからないまま改善されずに終わる。

 Mac を使ったことのない人は知らないだろうが、Mac はマウスをルーズに扱うことが可能だ。目を凝らして小さなGUI要素をクリックしなければならないシーンは少ない。ここが Windows との大きな違いだ。ただし、見栄え重視の GUI が優先されて使いづらくなってきていることは否定出来ないが・・・

 マウスポインタを大きく移動させることは操作コストが非常に大きい。ドラッグ&ドロップと画面の最上部までポインタを移動させる必要があるプルダウンメニューでも全く負担がかからなかった Mac SE/30 の時代とは違う。すべてをマウス操作でできることはプロの道具としては望ましくない。

 JWCAD はコマンドによってオプションを画面上部のボタンをクリックすることで選ぶシーンや確定をボタンクリックに依存するシーンが多い。この時に、tabとスペースバーでボタンクリックできるようになればと思う(Enterではダメ。なぜなら左手で操作する際のコストが大きいから)。

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