掛け時計の文字盤に伊勢エビ・・・

clock-ebi 会社のデスクで何やらを直していた。10cm程度のプラスチックで金属の細い棒が渡されていてそれに小さなプラスチックが数センチおきに並んでいた。ところが、そのうちの一つが外れてしまってはめようとしたら、はずみで落としてしまい見つからなかった。それは、電卓らしかった。「まあ、電卓なんて使わないし」と思いながらも自分のミスでパーツをなくしたことがいやで探していた。

 イライラしながら右隣を見ると、30代の男性がいて見覚えがあった。見覚えはあるが名前は思い出せない。名前が思い出せないので話しかけられず、パーツを探してくれるように頼むこともできない。そちらは私のことを知っていてXXさんと話しかけてくれる。そして、パーツの事を言うと3色ボールペンをカチカチやりながら、「電卓ですか。僕もこれは壊れちゃって、今はXXさんがくれたノーパソが電卓代わりですよ」と私が大昔に持っていたCompaq contra Aero を示した。まだ動くんやと思っていた。

 そうしていると、他の同僚から「XXさん、様子が変」と言い出した。そして、それについて何をするわけでもなく、「今日は全員でゴルフに行く日だった」と席を立ちフロアから立ち去っていった。

 私は、「俺はゴルフなんかせんがな」と思っていたが、その時に隣の席に座っていた男性の名前を思い出した。そして、彼が2年くらい前に若くして亡くなっていたことも。

 「ホントに俺はおかしいんかな」と、時計を見ると文字盤に大きな鯛が貼り付けてあった。それも生で水が滴り落ちていた。もう一度見ると伊勢海老の開いたものだった。「こんなんじゃ時間わからんやろ。誰も怒らんのか?」と近くを通りかかった人に時計を指さしたら、何事もなかったかのように「うん、急がなアカンやん」と言うだけだった。

 どうやら自分にしか見えてないらしい。亡くなったYYさんも時計のエビも、天井からぶら下がっているワカメのようなものも・・・

 その時ふと、澁澤龍彦の「都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト」を思い出した。天井に丼が現れたと書いてあった。そういうことが自分の体に起こっているのではないか。だとしたらこれは精神分裂病ではないか?この調子で人が見えないものが見え続けたらどうしようと不安になった。黙っていれば気づかれないかもしれないが、時計を読めないようでは困るし、電卓も使えない。仕事もできないかもしれない・・・

 「病院かぁ・・・、そういえば精神分裂病とは呼ばなくなったんやったな・・・なんやったっけ・・・」と思っているところで目が覚めた。
 

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