自己診断の限界と危機管理

 あれ、これは俺が事故の数日後に可能性として挙げたものだ(ただの思い付きだが)。

GEEK: 事故原因…
* 運転士の突然死(あるいは、無呼吸症候群等に起因する意識混濁、判断力停止、精神錯乱)により、速度調節を失った。

 その頃、高見運転士には病気はなかったとされていたが、こんな杜撰な検査が根拠だというのなら無責任体質を問われても仕方がないだろう。自己診断という診断方法は個人によって極端な偏りが出やすい。病気を訴えるタイプの人とそうでないタイプの人ははっきり別れる。病気であることが業務上のマイナスポイントになりかねないような検査の場合、嘘を書いて病気でないことにする人も多いはずだ。まして、失敗を重ねて指導を受けているような人物が客観的な自己診断ができるはずがないと思うべきだ。そう思うことが危機管理なのだ。

 「睡眠時無呼吸症候群が問題になっているから自己診断をして正常なら大丈夫」などと言っているようなのは危機管理能力ゼロだ。しかも、それを根拠に、個人のミスにしようと躍起になって、直接関係のないような情報を流すなど人として最低だ。そんな最低なのがJR西日本の経営陣だった。まあ、今の経営陣も大差ないようだが・・・

睡眠時無呼吸症候群:03年の自己診断、専門医「無理がある」 JR西、指摘を放置 †医療:MSN毎日インタラクティブ
◇06年春、ようやく簡易検査導入

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の自己診断型眠気指数テスト(ESS)で多数の患者が見逃されていた問題で、JR西日本が03年の山陽新幹線の居眠り運転発覚を受けて全運転士を対象にESSを実施した際、社内の専門医から「患者絞り込みに使うのは無理がある」と指摘されていたことがわかった。しかし、同社は05年4月の福知山線脱線事故まで放置し、昨春ようやく血中酸素濃度などを測定する簡易検査を導入した。同社は福知山線事故で死亡した運転士(当時23歳)について、ESSに基づきSASの可能性を否定している。【本多健】

 関係者によると、同社は居眠り運転発覚直後から、3274人の全運転士を対象にSAS健診を実施。(1)ESSで「病的な眠気がある」とされる11点以上(2)夜間に無呼吸を指摘された(3)昼間に眠気の自覚がある--の3項目で一つ以上該当した83人が簡易検査を受け、最終的にSASの疑いを指摘されたのは17人(0・5%)だった。このうち、ESSで11点以上は2人しかいなかった。

 複数の専門医によると、中年男性が中核の集団の場合、5%程度のSAS患者が見つかるのが普通。JR各社で、JR九州だけが当時から運転士に簡易検査を実施しており、同時期に約15%がSASと診断された。JR西日本の結果について、同社の専門医らは「運転免許停止など資格認定の判定に用いられる場合、警戒感から正確に記入しない可能性がある」と分析した。しかし同社は、健診での絞り込みに、肥満度を示す指数を加える程度の見直ししかしなかった。

 福知山線事故では一時期、運転士に居眠り運転の疑いも指摘されたが、同社は遺族向け説明会などで、事故2カ月前のESSの結果(2点)を根拠にSASとの見方を否定した。一方で昨年4月から安全対策の一環として、全運転士にSASの簡易検査を義務付けた。

 昨年12月に国土交通省航空・鉄道事故調査委員会が公表した「事実調査報告書」では、運転士について▽肥満体形▽いびきをかいていた▽私的なドライブで居眠り運転などで追突事故を2回起こした--など、運転士が睡眠の質の面で問題を抱えていた可能性を示唆したが、SASの可能性には触れていない。

 ◇適切な対応だった--JR西日本広報部の話

 昨年4月から簡易検査を全運転士に義務付けたのは、安全に安全を重ねる意味であり、それまでも適切に対応してきたと考えている。

 ◇東京メトロは細かな対応

 同時期に東京メトロ(当時は営団地下鉄)が取り組んだESSでは、全運転士約1300人の4・6%が「治療を要する」と判断された。

 この違いはどこから生じたのか。東京メトロ保健医療センターの鷲崎誠所長は「乗務できるかどうかにかかわるだけに、SASは早期治療が可能ですぐ復帰できる点や、労使間の合意で職務上の差別はしないことを繰り返し運転士に説明し、理解を求めた」と振り返る。自己診断型テストの性質上、正直に回答するかどうかで結果が違ったとみられ、ある専門医は「患者比率があまりに低い場合、絞り込みに失敗したと公にしているようなものだ」と解説する。

 鷲崎所長は「運転士の立場を常に配慮しつつ、きめ細かい対応を考える必要を痛感した」と話す。

毎日新聞 2007年1月5日 東京朝刊

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