「読書量>新刊書売上」|出版物売り上げ減 約30年前の水準に

書籍売上推移 ダラダラと数字が並んでいて分かりにくいので表にしてみた。記事からは2013年度に急激に下がったような印象を受けるが、右の表を見れば昨年までの傾向が続いているだけだということが分かる。ピーク時の比較で言えば去年と今年の差はピーク時の 2% に過ぎない。

 17 年かかって60%まで減ってきたのだから年間平均減少率は2%前後でも不思議はない。途中経過の情報がないのでこの記事からはどのようなカーブを描いたか分からないが、もっと急激に減った時期を挟んで減少率が減ってきているのかもしれない。

 雑誌の減少率が高いのは分かる。以前にも書いた気がするが、インターネットの充実で印刷物の雑誌の存在価値は消滅した。以前は速報性ではテレビに勝てなかった雑誌にも情報の幅広さや深さにおいてテレビを補完する価値があった。F1のテレビを見た後で数日後に発売されるF1雑誌を読むのは楽しかった。また、テレビが取り上げないような種類の情報(アメリカンフットボールの試合結果や MacWorld Expo など)について最速の情報は雑誌しかなかった。ウェブ情報はここを直撃した。テレビより広く深い情報が雑誌より短いタイムラグで読めるようになった。

 人々が雑誌で得ていた情報をウェブで読むようになったために、雑誌に出稿していた広告もウェブに流れた。雑誌出版社は売上金額の減少と同時に広告料も失った。実は、雑誌廃刊(休刊)の原因は売上の低下より広告料収入の減少の方が大きいだろう。同時に起こっているので分かりにくいが、広告出稿者の選択肢が広がったために雑誌広告に対する競争が激化したことは間違いない。雑誌とネット広告と費用対効果を比べて雑誌の広告が不利なら雑誌の売上にかかわらず広告主は雑誌広告を取りやめる。

 また、この統計が電子書籍の売上を出版物に入れているのかどうかわからない。もし入れていないのなら、売上に加算する必要がある。

 出版物業者はともかくとして、新刊書の売上と日本人の読書量とは無関係だ。読書の方法が変わったのだ。この統計は日本人の読書量を1996年は示したかもしれないが、今のものは示していない。テキスト情報を媒介するものが紙からネットになった。今ではネットでテキストを読まない人も多く残っているが、この比率は減る一方だ。30代以上の女性にもスマートフォンが普及してきているタブレットを持っている人も増えている。雑誌の売上は減る一方だろう。

 なお、紙の出版物の販売数量が減ることを「読書離れ」というのは早計だ。これについては別の機会に書きたい。

出版物売り上げ減 約30年前の水準に NHKニュース
ことしの国内の出版物の売り上げは、去年よりおよそ550億円減り、29年ぶりに1兆7000億円を下回り、ピーク時の5分の3程度にまで縮小する見通しとなりました。

出版業界の調査や研究を行っている東京の出版科学研究所のまとめによりますと、ことし国内で出版された書籍と雑誌の売り上げは推定で、合わせて1兆6850億円程度と去年よりおよそ550億円減る見込みです。
これは、昭和59年以来、29年ぶりに1兆7000億円を下回り、売り上げが最も多かった平成8年の5分の3程度にまで減ることになります。
このうち書籍の売り上げは、村上春樹さんの新作や人気テレビドラマの原作の小説など、文芸書で大ヒット作が続いたものの、全体では去年よりおよそ120億円減り、8000億円を割り込むと見られています。
また、雑誌の売り上げは430億円減って8950億円前後になるとみられ、30年前の水準にまで落ち込む見通しです。
出版科学研究所では「書籍は売れる本と売れない本の二極化が深刻だ。雑誌はネットの普及や少子化により、購入する若い世代が減っている。一方で、30代以上では女性誌などが好調で、当面は雑誌に親しんだ世代の動向が売り上げを左右する」と分析しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です