資本主義と搾取の構造

 なぜ、Foxconnの労働環境の話が Apple の工場の労働環境のようになっているのか分からない。単に、人気の家電品の名前を使って読者の気をひこうとしただけにしか思えない。

 それは置いておいても、Foxconn の労働環境は先進諸国(?)に比較すると劣悪かもしれない。しかし、中国の労働者の間でどうなのか考える必要がある。労働条件を改善した結果競争力を失い大量解雇になることは労働者にとって望ましいことか?

 資本家の搾取は今に始まったことではない。アメリカも日本も自国内での製造を止め過酷な労働条件を受忍する他国に生産工場を移した。自国の労働条件を改善されたかもしれないが、失業者を多数生んだ。(結果、国内の購買力が落ちてしまった。そのつけを押し付けあっているのが今の日本だがそれは別の話。)Foxconn の労働条件が改善されコストが上がれば、生産工場が他の国に移るだけだ。今の世界は経済格差を使って搾取するというビジネスモデルが幅を効かせている。そして、それを上手に利用した経営者が賞賛されるのだ(ユニクロの柳井社長のように)。

 元の記事を書いたNYTの記者は義憤に燃えたジャーナリストなのかもしれないが、資本主義を否定するところまでは踏み込めていない。まして、2つ目記事で取り上げられている不買運動なんて噴飯物だ。自分の着ているTシャツがどこ製なのか知っているのか?そのTシャツを作った工場の従業員がFoxconnの社員より高待遇だとでも思っているんだろうか?

汚れた金か?―ニューヨーク・タイムズのApple記事を考える.

New York Times紙が掲載したFoxconnの実態に関する長い記事が大きな反響を呼んでいる。さほど多くの新事実が明かされているわけではないものの、ここにはAppleがかくも巨額の利益を上げることを可能にした仕組みが容赦なく明らかにされている。

われわれのJohn BiggsがFoxconnを取材した際はその巨大なスケール、今後の戦略などFoxconn自体に焦点を当てていた。私自身はAppleの下請け企業が環境基準を満たしていないことについて書いたが、ここでは主として中国の環境保護当局の怠慢を問題にした。

しかし今日(米国時間1/26)のNew York Timesの記事はAppleが主役だ。Foxconnを支え、成長させた原動力はAppleだという。しかし記事で明らかにされた部内者、関係者の証言は、Appleの行動は是認できないものだとしている。

Appleには値切りの天才がいるという。ネジ一本、ワイヤ一本にいたるまで徹底的に値切り、絶対に必要な以上は1元たりとも払わないですませる。ライバル各社は、デザインと品質同様、Appleのこの値切り能力にも脱帽しているという。

しかし、この記事があまりにも簡単にしか触れていない点がある。Foxconnを下請けに利用しているのはAppleだけではない。Microsoft、Amazonを始め、世界中の有力エレクトロニクス・ブランドがFoxconnの顧客であり、Foxconnに製品の製造、組み立て、仕上げを委託している。以前問題になった従業員の大量自殺が起きたのはXboxの製造ラインだった。記事の記者はHPとNikeは下請け企業の社員待遇を改善させようと努力しているが、Appleはそうした努力をしていないとしている。

もっとも、この点についてはさほど具体的な証拠が明かされているわけではない。とはいえAppleが不当に狙い撃ちされているのでもなさそうだ。Appleの関係者が同社の下請けに対する態度を説明しているところによれば「われわれは〔下請けを労働条件などについて指導するものの〕脅しを実行することはめったなにない」そうだ。先週、FoxconnがAppleの直前の仕様変更にも即座に対応して深夜から組み立て作業を開始してiPhone 4Sを納期に間に合わせたというというニュースが話題になった。こうしたAppleの要求に応えるのは容易なことではあるまい。

〔略〕

しかし以前にも書いたとおり、Appleが厳しい要求をするのはすべて消費者を満足させるためだという点を忘れてはなるまい。毎年毎年、より優れたより安い新型iPhoneを欲しがるのはわれわれだ。いくらすばらしいコンピュータでも1000ドルでは高すぎると不平を言うのはわれわれだ。われわれはより大きいテレビを求め、より薄いカメラを求める。そしてわれわれが求めるのでAppleがiPadの注文を倍増させ、Foxconnの従業員にさらなる長時間労働を強いていることにわれわれのほとんど全員が無頓着だ。工場は換気が悪く、アルミの削り屑が火花で着火するという爆発事故で死傷者を出している〔成都のFoxconn工場〕。しかしわれわれはそれはAppleの問題だ、Foxconnの問題だ、中国の問題だとして顧みない。いい気なものだ。.

NYTの記事では夢想家が「理想的な労働条件でiPhoneが作られるようになればテクノロジーは変貌するだろう」などと言っている。テクノロジーが変貌するかどうか知らないが、Appleは倒産するだろう。そんなiPhoneは現在よりはるかに高価で、おそらくは品質も劣るだろう。Appleはこのことを承知している。消費者、Apple、Foxconnが完成させた現在のシステムは申し分なく機能している―有害物質にさらされながら働いている従業員にとっては別だが。しかし従業員に健康被害が出ても1人当たり1万ドルか1万2000ドルくらいの補償で済むのだから、とりわけこのシステムで空前の利益が上がっている現在、Appleはボートを揺らす〔変更を加える〕必要を認めないだろう。

ただしわれわれも同じボートに乗っていることを忘れるべきではあるまい。広告料金やエンタープライズ向けサービスで利益を上げている企業とは異なり、Appleの売上のほとんどすべては消費者がポケットから―多かれ少なかれ喜んで―支払う金だ。他の大企業とは違い、Appleに対してわれわれ消費者は絶大な影響力を持っている。消費者はAppleの問題の重要な要素だ。もっとも重要な要素であるかもしれない。

 不買運動で意思表示するのは構わないが、ターゲットがピンぼけでは意味がない。不買運動でFoxconnの仕事が減って労働者が失業したら不買運動をした人が何らかの経済的援助をするんだろうか?

CNN.co.jp:アップル下請け工場で過酷労働、報道を受け不買運動の動き

(CNN) 米アップルのスマートフォン(多機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」やタブレット端末「iPad(アイパッド)」など、消費者の人気を集める最先端の電子機器。その裏には中国工場の劣悪な労働環境があるとの報道に、不買運動(ボイコット)を呼び掛ける声が上がっている。

米紙ニューヨーク・タイムズは先ごろ、中国内数カ所の工場でiPhoneなどの製造を請け負う台湾企業「フォックスコン(富士康)」の現状を伝えた。24時間態勢で稼動する工場では従業員らが週6日働き、時には1日12時間のシフトになるときもある。長時間立ち続けるため、脚は腫れ上がる。未成年者が過酷な労働を強いられるケースもある。敷地内の寮に詰め込まれ、飛び降り自殺を図る者も後を絶たないという。

四川省成都にあるiPad製造工場の爆発事故で全身にやけどを負い、家族に看取られて亡くなった従業員の話も紹介された。

フォックスコン側は、同紙が伝えたような労働条件ではないと主張する。アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が「従業員の安全が第一。批判は深刻に受け止めている」と書いた従業員あてのメールもリークされた。

こうした情報を受け、一部の消費者らはアップル製品のボイコットを検討している。同社に労働条件の改善を求める署名を14万5000件集めたウェブサイトもある。

ただ、抗議の声が事態の改善につながる可能性は低いとみられる。労働条件に問題があると分かっていても、多くの消費者は新機種の発売日になれば店の前に並ぶだろう。同紙の世論調査でも、工場の労働条件を良くするために製品の値上げに応じるとの回答は少数にとどまった。

iPhoneから他社のスマートフォンに切り替えても意味がない。フォックスコンなどのメーカーはアップルだけでなく、他の大手ブランドの製品も請け負っているからだ。電子業界全体が変わらない限り、問題の解決は望めないだろう。

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