浜矩子がアベノミクスに反対する理由(殺生与奪は海外投資家の手の中)

2013年05月24日の記事。「『株は上がる』という掛け声に押され、投資に手を出した個人が損をするという悲劇が、なるべく小さくなることを祈るばかりです。」というのに深く同感する。

 一番恐ろしい「デフレ下のバブル」が来年の今頃は話題になるだろう。国民の所得は増えないのに消費税と円安効果による物価上昇(※)分がそのパイに割り込んでくるのだ。国内企業が来年2%以上のベースアップをするとは思えないし、国民の総所得を2%以上引き上げるほどの新規雇用の創出も期待できない(全く新しい産業が興り数百万人の非雇用者を雇用し賃金を払うようになれば、既に働いている人のベアがなくてもマクロではカバーできるかもしれないが・・・)。

 「痛い目をみるのが安倍政権だけならいいですが、そうは問屋が卸しませんからね」というのが本質だ。アベノミクスの失敗が顕在化しデフレが続く中インフレが起こり生活が今より苦しくなったら安倍政権は終わるだろう。しかし、安倍政権が全員辞職し選挙に落選したとしても奴らは生活苦に直面するようなことはない。貯めこんだ貯蓄と金融資産で悠々自適だ。2013年7月の選挙で自民党に入れた馬鹿さんや投票しなかった有権者は同罪としても、自民に入れなかった人間やそもそも投票権を持っていない未成年者もその失敗の被害に苦しまなければならないのだ。

※どの程度の為替レートが着地点なのかは分からないし、輸入物価が上昇といっても、これまでの為替レートが高すぎたのであれば、通常の価格に戻ったとも考えられる。ユニクロのように人件費の差と為替レートにより大きく利益を上げていた企業の業績が悪化し、国内生産が増えれば円安による経済効果として望ましいが、海外に投資したモノを簡単に引き揚げることは難しいし、他の国に販売するのであれば円安の影響は少えなく出来る(決算時の利益額は減るが実態はそれほど困るわけではない)から、この円安基調が長期的に続く見込みが無い限りそのような生産力の国内回帰は起こらないと予想する。

 その他、自分的に強く同意する箇所は太字にしておいた。

「アホノミクス」が5つの悲劇を引き起こす! 浜矩子がアベノミクスに反対する理由 2013年05月24日
株高・円安は「景気回復」の結果ではない

――政府は5月の月例経済報告で景気の総合判断を2カ月ぶりに上方修正しました。これはアベノミクスが一定の「成功」を収めたということではないでしょうか?

イギリスの『エコノミスト』誌が、「アベノミクス」を特集。 「性急なアベノミクスに富国強兵の影を見るエコノミスト誌は、『飛行物体アベ』にあまりご近所の国々をお騒がせするな、と注文しています」(浜氏)

そうはいっても設備投資はまだまだ弱い。アベノミクスの「成功」は、もっぱら「株高」や「円安」に集中している。必死で市場を誘導しようとするチーム・アベの奮闘に、ひとまず市場が付き合って儲けを追求しているという姿です。

ここにきて、むしろ長期金利の上昇が目立ってきましたね。安倍政権が最も避けたかった展開です。しかしながら、これは身から出たさび。ここまで株式市場や不動産市場にカネが引き寄せられるようなあおり方をすれば、収益性の低い国債から資金が逃げ出して、株や不動産に投資されるのは当然の成り行きです。

このままいけば、「国債神話」を彼らが自分たちの手で壊していくことになりかねません。「国債神話」とは、すなわち、「日本の国債はあらかた日本の投資家が持っている。日本の投資家は日本の国債を売らない。だから日本はギリシャ化しない」というあの論法です。

円安についても、すでに少々制御が効かなくなっている感があります。魔法のかけ方は知っているが、魔法の解き方はまだ身に付いていない。そんな「魔法使いの弟子」的なところが、早くも露呈しつつあると思います。

バブルは起こるがデフレは終わらず

――具体的には、どのようなリスクが考えられるのでしょうか?

私は最悪の場合、アベノミクスによって「5つの悲劇」が起こる可能性があると考えていますが、第1の悲劇は「デフレ下のバブル経済化」です。

メディアでは「この金融緩和をきっかけに、設備投資や消費拡大が起これば、日本経済は本当の意味で、復活する」といった報道がなされていますが、これは間違いです。

安倍政権と日銀の「チーム・アベ」が目標とするのは、バブルによるデフレ退治です。つまり、彼らは企業が設備投資を拡大したり、私たち庶民の消費が拡大したりすることを、そもそも狙っていないのではないかとさえ思えてしまいます。

この金融緩和の結果、株や不動産などの資産、すなわち「カネの世界」だけがバブルに沸き、私たち庶民の毎日の生活に関係する「モノの世界」ではデフレが続くという、本来ならば起こりえないはずのことが、日本経済で起こってしまうのです。

もうおわかりでしょう。

結局のところ、この政策で恩恵を受ける個人は、差し当たり株や不動産を持っている人つまり、ごくごく一部の富裕層だけということになります。

しかも、さらに怖いのは、富裕層ではない人々も、今の調子であおられれば、投機性の強い株や不動産に手を出してしまうかもしれないということです。超低金利の中で、おとなしい投資をしていたのでは収益が上がらない。将来に備えて、この際、アベノミクス相場に乗ってみようか。そのような発想で、いわば「生活防衛型投機」へと普通の市民たち、生活に不安を抱える市民たちが誘導されてしまうのが恐ろしい。そのような流れが形成されたところで、アベ・バブルが崩壊した時が悲惨です

痛い目をみるのが安倍政権だけならいいですが、そうは問屋が卸しませんからね。

――「アベノミクス好景気」が終わるのはいつ頃とお考えですか?

カウントダウンは、もう始まっていると思いますね。

1ドル=100円を超えてから、円安が止まらず、国債の利回りも上昇しています。これまで、自分たちの思いどおりに市場を動かそうとしてきた「チーム・アベ」の人たちも、もしかしたら焦っているかもしれません。

私は市場と「対話」することの危険性を常々訴えてきました。グローバル化、複雑化した市場をコントロールすることは、絶対に不可能です。市場をコントロールしようとすればするほど、市場に振り回され、身動きが取れなくなる。

「Xデー」のカギを握るのは、この日本バブルでひと儲けしようとしている、外国人投資家たちです。彼らは当然、このバブルがいつか終わることを知っています。要するに、彼らは「売るために買う」人々ですから。今は虎視眈々と、「いつ売るか」を考えているところでしょう

「株は上がる」という掛け声に押され、投資に手を出した個人が損をするという悲劇が、なるべく小さくなることを祈るばかりです。

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