カヴ「横風区間はゴールスプリントよりハードだった」TDF100 ステージ13

 自転車は空気の抵抗との戦いだ。これがロードレースの戦略に大きく影響する。というより、ロードレースでとられる戦略のほとんどは空気の抵抗を使ったものだ。今日のレースで使われたのは「横風作戦」。

 風の向きが走行方向と平行ならば、向かい風だろうが無風だろうが追い風だろうが、スリップストリームは前走者の真後ろだ。真後ろにつけば楽ができる。ところが、風が横から吹くとそのスイートポジションが風下にずれる。直後の選手は数十センチ横にずれるだけでいいが、それを繰り返していくと数人で道路の端っこに達してしまう。結果的にスリップストリームに入る人間がごくわずかになってしまう。集団にいても風上側の選手は集団走行によるメリットを受けることができない。つまり、追う集団のメリットがなくなるのだ。

 ステージ13がは横風を使ってコンタドール要するコフィディスがフルームを置去りにして1分以上のタイムを稼いだ。

 横風を使っての分断作戦が発動した時のそれぞれの選手の感想が面白い。「まるで氷のなかを落ちていく感覚だった。ほんの5秒のあいだに最適な位置取りをして自分を守らなければ、そこで終わっていた」、「いつものゴールスプリント以上のワット数でスプリントして、ようやく前の集団に追いつけたくらいだった。」、「60km地点から心臓が破けるほどに、死力を尽くして走ってくれた。」

カヴ「横風区間はゴールスプリントよりハードだった」 フルーム「エドヴァルドのリタイアが悔やまれる」 | cyclowired

大波乱となった第13ステージを制したのは、ツール通算25勝目となるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)。バルベルデ(スペイン、モビスター)が総合で大きく順位を落とし、コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)、モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が1分以上のタイム差を詰めた。

ステージ優勝のマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

逃げ集団のゴールスプリントでサガンを下したカヴェンディッシュ(オメガファーマ・クイックステップ):
エシェロンの隊列ができたときは、まるで氷のなかを落ちていく感覚だった。ほんの5秒のあいだに最適な位置取りをして自分を守らなければ、そこで終わっていた——そこでおしまいだった。形成された集団が先に進んで、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)がちょうど乗り遅れてしまった。

彼との差はほんのわずかだった。いつものゴールスプリント以上のワット数でスプリントして、ようやく前の集団に追いつけたくらいだった。ギリギリで間に合ってよかった。ゴールではペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)との勝負に備える必要があった。

ぼくたちのチームは全員で3人[訳注:ニキ・テルプストラ(オランダ)とシルヴァン・シャヴァネル(フランス)]で、彼のチームは全員で2人[訳注:マチェイ・ボドナール(ポーランド)]だった。だから、ぼくたちが終盤にアタックすると、彼のリードアウト役の選手がぼくたちを追わざるを得なくなる。

サインに応じるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ): photo:A.S.O.ニキが最後の1kmでアタックすると、ボドナールとサガンは対応して追走しなくてはならない。ぼくは単にサガンの後ろについただけだった。サガンは集団前方から飛び出したのが少し早かったので、ゴール前で向かい風のなかを進まなければならなかった。サガンは、ぼくが近くにいることがわかっていた。サガンは次のステージのために脚を温存できたので、彼にとっても良かったと思う。

表彰台に立ったのは、ぼくだが、今日はオメガファーマ・クイックステップのチーム全員が立つべきだ。彼らは全員が信じられない働きをした。60km地点から心臓が破けるほどに、死力を尽くして走ってくれた。

とても難しいステージだった。ナーバスなステージだったけど、最終的には……勝つことができて興奮している。勝てて満足している。この数日は厄介な問題が続いていたので、また表彰台に立ててうれしい。今日の勝ち方は最初から計画したものではなかった。ぼくたちは単純に風に対して最適な位置取りをしようとして、少し強めに走っただけだった。そうしたことで、プロトンを疲弊させてしまい、最終的に分断させることになった。そういうレースになってしまった。

今日のゴールは、集団スプリントになっていたら、ぼく向けだった。でも、実際には小集団で、最終的にはぼくとサガンの1対1のスプリントになった。彼に勝てて満足している。チームメイトたちは全員がすべてを与えてくれる。昨日もあらゆる手段を尽くしてくれたが、ゴールで彼らをがっかりさせてしまった。今日、彼らは序盤からさらに尽くしてくれた。だから、勝つことができてうれしい。本当に良かった。

総合1位のクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)

マイヨジョーヌを守ったクリス・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング): コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)の動きに確実について行くつもりだったけど、位置取りが少し後ろ過ぎた。ちょうどカヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)の後ろについたのだけど、すぐに彼はスプリントを始めてしまった。彼が追いつける最後の選手だったのだと思う。

コンタドール集団にタイム差を付けられてゴールするクリス・フルーム(スカイプロサイクリング)がゴール: このツール・ド・フランスには100%の可能性が残されており、まだまだレースを行う余地があることを改めて思い知った。ぼくにはまだ充分な余裕があることがわかっていた——コンタドールと4分差はあった。それで充分だった。ぼくがしっかりとタイム差を稼げば、彼らはそれを大きく詰めることはできないからだ。

今日は本当にタフな1日だった。どの選手もここまでハードになるとは思っていなかっただろう。コースプロファイルでは、平坦コースで集団スプリントになると予想されていた。でも、あの横風のおかげで、今日のレースは大きな波乱に満ちたものになった。

昨日の落車で肩を骨折して、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)がツールを去ったことが、今日は本当に痛かった。彼が今日いてくれたら、ぼくたちをしっかりアシストして、ぼくがレースの前方に位置取りできるようにしてくれたはずだ。

現在、ぼくたちに課せられた試練は、このマイヨ・ジョーヌをぼくと6人の選手でパリまで守っていくことだ。だから、これからのレースはかなり刺激的なものになるだろうし、ぼくたちはその準備はできている。しっかりと守りぬくつもりだ。終盤にタイム差を1分ほど失ったのは、かなり受け入れがたいことだ。これまでずっとがんばってアドバンテージを獲得してきた。それをいくらかでも失ってしまったのだから。

新人賞・総合7位のミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)

新人賞ジャージをキープしたミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ): photo:A.S.O.たしかに退屈なステージではなかった。横風のおかげで、55km地点を過ぎたあたりからプロトンは少しナーバスになっていた。それで、チームとしてスピードをアップして、ゴールを目指そうとした。小集団でのスプリントやあまりナーバスじゃない集団での勝負に持ち込めれば、ステージ優勝はより確実になるからだ。

集団が3つに分断されてからは、誰も前方に出ようとしなかった——もうメイン集団もナーバスではなくなっていた。マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)が脱落し、それからアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が脱落した。そして総合成績に向けてタイム差を縮めたいチームがいて、彼らがしっかり働いた。そのおかげでカヴのスプリントが楽になった。

新人賞ジャージに関してのプレッシャーはない。新人賞をパリまでずっと着ていけたら素晴らしいとは思う。でも、モンヴァントゥーはかなり険しい登りだから、このジャージをクインターナ(コロンビア、モビスター)から守るのは難しいと思う。ともかく、チームとしては他のステージでの勝利を目指して期待している。カヴが数センチ差で負けた日の翌日に、また勝つ場面を見ることができてうれしい。彼は本当にモチベーションが高く、チームにもたくさんの影響を及ぼしてくれる。本当に良い気分にさせてくれるから、今はチームの誰もが笑顔になっている。

ポイント賞・ステージ2位のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)
先頭集団に残ることができて良かった。でも、今日のステージのことはもう思い出したくもない。今日はずっとストレスを受け続けた。なんとか前のほうを走れたのは幸運だった。不運なのは2位になったことだ。このミスは、ぼくの責任だ。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)の後ろにつくかどうかは、ぼくに任されていた。そして、彼を利用できなかった! 今日のスプリントのビデオは絶対に見たくない。ぼくはまだ経験が浅い。このようなレースで勝つには、経験を積むのが得策だと思う。

山岳賞のピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)
すごいステージだった。まさにレースをしていた! 山岳ポイントを取りに行った後でも、まだチームメイトたちはトップ集団に残っていた。だけど、パンクで順位を失うことになった。ジェローム・キュザン(フランス)のおかげで、ぼくたちは良い位置取りができていただけに悔しい。

このようなステージでは集団の前のほうにいることが重要だ。ぼくは総合成績を守ることに興味はないから、今日の影響は少ない。でも、後ろの集団に吸収されるのは、あまり気分の良いものじゃない。

総合3位に浮上したアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソ・ティンコフ)

今日のステージには満足している。今日のレース前に総合1位との差を1分10秒詰めることになると聞いても、たぶん信じないと思う。今日はチームがひたすらがんばってくれた。最初は現状維持で動かなかった。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は不幸な事故だったから、リードを広げないことにした。

でも、チームとしての力もあったし、チームメイトの何人かが不利な状況に追い込まれていたので、最終的に前に進むことに決めた。最初にアタックしたダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、サクソ・ティンコフ)はまるでオートバイのようなスピードで数kmを牽いてくれたので、追走集団を千切ることができた。

最初はわずか10秒程度の差しかなかったが、サクソ・ティンコフのチーム・スピリッツを見せてくれたチームメイト全員に感謝したい。しかし、3分57秒差も2分45秒差でも、総合成績では大きく変動しない。まだアルプスの山岳ステージでアタックせざるを得ない状況だ。ツールでの勝利は依然として困難な状況だけど、まだ終わってはいない。そして、あらゆることが起きる可能性がある。

まずは、明日を新たな日として迎えるために休みたい。このチームと、そしてぼくたちが実力を示せたことがうれしい。今日はずっと素晴らしかった。ぼくたち全員が心のなかに同じ目的を持っていることを示せたし、勝利のために戦えた。サクソ・ティンコフにとっては確実に素晴らしい日になったはずだ。

総合2位から総合14位へ大きく順位を下げたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

単純に不運な日だったといえる。それ以外はない。ぼくたちは集団前方で走っていた。今年のツールでずっとやってきたように注意もしていたし、余裕をもって良い位置取りで走っていた。でも、不運なことに、落車した誰かが後ろから追突してきて、ぼくの自転車の後輪が壊れてしまった。それが決定的な瞬間だった。

あれは避けることはできなかった。全チームが止まって、ぼくが復帰するのを待ってくれていて、ぼくたちもギャップを埋めようとがんばった。でも、ベルキンやユーロップカーといったチームが状況を困難にした。自転車レースだから、勝つこともあれば負けることもある。チームとしては諦めずに戦っていたし、ずっと冷静だった。

今年のツールもまだまだ道のりは長い。今後のレース展開が大きく変わる可能性もある。今後のレースに望みを託すかということについて。今日のステージの前の段階でも総合優勝争いは難しかった。今日で、さらに難しくなった。でも、チームとしてはナイロ・クインターナ(コロンビア)が総合成績の上位に食い込みそうだ。

まだ1週間は残っている。ぼくたちは総合優勝を争うことはできないが、集団に対して大打撃を与えることはできる。この結果として、ぼくたちがどういうプランを展開するかを見ていてほしい。ナイロ・クインターナはチーム内でもっとも総合上位にいる選手だ。チームとして決定すれば、ぼくたちは彼をアシストすることになる。

だけど、ぼくたちは誰かを妨害して、最終日のポディウムに影響を与えるというチーム戦略をとることもありうる。今後は山岳ステージが多く控えていて、さまざまなことが起こりうる。ぼくがギャップを詰められないようにしてくれたチームのうちのいくつかは、レース展開が難しくなるはずだ。今日はチームメイトたちが100%の力を出してくれた——チームメイト全員にとって、今年のツールのなかで最もハードな日だった。

総合2位のバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)

チームとして素晴らしい成果を残せた。ローレンス・テンダム(オランダ)とぼくは最終的に第1グループに残れた。チームメイトのアシストはなかったけど、無理だったと思う。でも、チームメイトたちは素晴らしい仕事をしてくれた。

彼らのおかげで、ぼくたちはずっと集団の前方にいることができて、それが功を奏した。バルベルデ(スペイン、モビスター)がパンクしたときは、ぼくたちはすでに前のほうにいた。その時点で、エシェロンを組むことにしていた。

しばらくしてから、ぼくたちはバルベルデが不運に悩まされていることを聞いた。ぼくたちや他の総合勢もフルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)とのタイム差を縮めることができた。これは良いボーナスだった。ぼくの調子はずっと良い。これからも上がり調子だと思う。

総合5位のローレンス・テンダム(オランダ、ベルキンプロサイクリング)
サクソ・ティンコフが最後になにかやりそうだと感じていた。彼らは最後まで脚を温存していたからだ。彼らがアタックしてすぐにバウク・モレマ(オランダ)に大声で呼びかけて合流した。

初めの1kmは非常にハードだった。でも、メイン集団が後ろに千切れていったので、ぼくたちの位置取りが良かったことがわかった。フルームに対してタイム差を詰めることができたし、総合成績でも上位に入れたことを素晴らしく思う。しっかり準備していたことも功を奏したのだと思う。

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