「音楽配信は、レンタルや中古CDの代替として普及する」のか?

音楽配信は、レンタルや中古CDの代替として普及する—普及の目安は1曲100円以下、80円くらいが妥当では : IT Pro ニュース
 音楽のヒットランキング情報を提供し続けているオリコン。同社では、昨年から音楽配信ビジネスにも乗り出している。アップルの参入により、活気づいている感のある音楽配信について、社長の小池恒右氏に聞いた。

狙いは3つあります。エルダー層の開拓、旧譜の活性化、そして対価がきちんと支払われないコピー楽曲の駆逐です。

音楽配信なら、CDショップの棚に置けなかったような幅広いラインナップが実現できる。

 ここまでは納得できる。ところが、ここからが納得できないことのオンパレードだ。

 順を追ってお話しましょう。まず、CDの売り上げがどんどん縮んできています。ところが一方で、JASRACの権利料徴収額は右肩上がりに増えているんです。つまり、音楽に接する機会というのは増えているはずなんです。なのにCDが売れない。これは、例えて言うならば、いくら上から上質の音楽を流し込んでも、流し込むバケツに穴があいているようなものです。どこからか、権利者が正当に受け取れるはずの対価が漏れてしまっているのです。これだけCD産業が落ちているのは日本だけなんです。

 
 JASRACの権利料徴収額が増えているということは、権利者が正当に受け取れるはずの対価が支払われているということだろう。

 「正当に受け取れるはず」と言っているが、それの主語は何だ?JASRACの正当性については置いておくとして、JASRACが受け取ったお金こそが、演奏者や作曲者への正当な著作権使用料だろう。途中でCDコピー、流通業者が儲からないからと言って、おかしいというのは間違いだ。生産地と消費地を結ぶ道路が変わるのだ。にぎわったドライブインでも廃れることはある。しかも、そのドライブインが、私有地を盾に納得のいかない通行料(高額なCD料金)をドライバーに課していたら、バイパスへ行くのは当り前だろう。

 ブロードバンドの普及や、記録媒体であるHDDやフラッシュメモリーの価格低下といった状況は各国共通です。CD産業を苦しめる日本独特の原因は何か、と突き詰めていくと、これはコピー問題が背景にあるとしか思えない。それも、レンタルから派生している中古、コピーがそうです。権利者に対して対価が支払われないものが流通しているのです。

 他の要因を考えないのはおかしい。CDの小売価格をアメリカと比べればわかる。日米で同じアルバムを出している日本レーベルのアーティストutadaのアルバムで比べると、amazon.com では$13.98(約1500円)、amazon.co.jpでは3000円だ。こんな価格差を無視して、「日本だけ減少傾向」と嘆いてみても当てはまらないだろう。

 むしろ、同じ製品を外国より高くしか買えない日本の消費者が損をしているのだ。景気後退と社会保障費の増加で可処分所得が減っているときに、小売価格を上げているのは日本のCD販売業者くらいだろう。

 コピーや中古を生み出すだけでなく、レンタルそのものも対価を十分に払っているとは僕は思わないんです。レンタルのマーケットは約600億なんですが、レコード会社に対してはその15パーセント、90億しか払われていません。CDショップは、レンタル店と同じ設備投資や人員配置が必要なのに、レコード会社へ7割持ってかれてしまいます。同様の商材を扱っておきながら、片や原価率15パーセント、片や原価率70パーセントというのでは勝負にならないでしょう。

 ここからは突然、レンタルの話。前に、レンタルは問題はないと言っておきながらだ。それに、原価をレコード会社に納める上納金だけで比較するのはおかしい。レンタルショップの仕入額は上納金だけではないだろう。

 

  音楽配信が、レンタルや中古を駆逐すると仮定すれば、最低でも1000億円のマーケットは形成できるでしょう。ただし、まずは価格がレンタルのレベルに近づく必要があります。1曲100円くらいが1つの目安になりますね。本格的に普及するには、80円くらいまで下がらないとダメじゃないかな。音楽配信であれば、レコード会社には7割以上リターンがありますから、この程度の価格でも、レンタルの代替と考えれば反対する理由はないはずです。

 配信楽曲数については、新譜や大物アーティストなど、CDでの販売が期待できるものについては、じょじょに広がっていくんでしょうね。過去のランキングとの連動を考えた場合には。旧譜の充実も必要です。

 これには同意。ただ、価格が150円になった今、普及のキーポイントはタイトルだと思う。それも、廃盤になったようなレコードを、オリジナルのまま出して欲しい。ベスト盤やアンソロジーは物理メディアだからこそ必要だったもので、オリジナルのレコードが全てダウンロード販売されていたら、そこからピックアップするのもいいし、オリジナルのままディスクに焼くのもできる。iTunesのライブラリが自らのベスト盤でありアンソロジーになるのだ。ここ数年ブームだった、ベスト盤や企画もの(80’sロックとか、70年代フォークとかの集大成シリーズ)は急激に衰えるだろう。iTMSのおかげでPCが音楽ライブラリになったのだ。

 後戻りはない。

 CDになったときに、LPレコードのジャケットに比べてちゃちなパッケージに物足りなさを感じたものだった。今度は、CDに慣れた年齢層が同じ悲哀を感じる番だ。CDの物流を販売するというビジネスモデルから早く撤退することだ。

 後戻りはない。

 ちなみに、先日レンタルCDショップに行ったときに、DeftecのCDは置いていないという断り書きに気づいた。iTMSで上位を独占しているグループだ。レンタルで売るよりオンラインで売るほうを選んだのだろう。iTMSに入れなかったり、CCCDを作ったりするより、こうしたほうがはるかに、本人にとってもレーベルにとっても良かっただろうと思う。

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