日経記者の頭の中もお花畑。「おサイフケータイようやく世界へ」

profile 希望的観測に満ちた日経らしい記事だ。「3G 通信網が普及することで日本の高機能携帯電話が世界に輸出できる」とか「日本製携帯電話は高機能で海外の端末より進んでいるので海外メーカーに負けるはずはない」「日本ユーザはスマートフォンを選ばない」とか書いていたことを思い出す(同一人物かどうかは知らないが、日本のマスコミはこんな論調だった)。おサイフケータイで世界をリードしている日本メーカーが世界のスマートフォン市場を席捲することもまちがいなしですねwww

 下の記事で一番驚いたのは、「2人に1人以上が『おサイフケータイ』を使うとされる日本」という一文。IC決済読み取り機のあるレジに並んでいる人の半分以上が携帯端末で決済しているだろうか?子供や老人などの携帯端末や決済を行わない人を省けば20~60歳くらいの社会人の大半がおさいふケータイで決済していなければこの数字は達成できないだろう。iPhone ユーザは対象外だし Android 端末も全てが Felica に対応しているわけではない。そして、Felica 対応端末を使っているユーザ全てが Felica を使っているわけではないというより、Felica 対応端末を使っているユーザですら使用率は半分以下だろう。そもそも、大都市圏以外では Felica などコンビニとイオンくらいでしか使えない。それとも、日経の記者が住んでいる生活圏では大半の人が Felica で決済しているのだろうか?

 「日本のサービス業が海外進出するうえで、おサイフケータイのビジネスモデルは強みになるはず」という杉山社長の言葉も虚しい。小額決済で一番重要なのが「使ってもらえるかどうか」しかない。「読み取り装置をレジ横においてもらえるかどうか」、「チップ(カードや携帯端末)を持ってもらえるか」、「(携帯端末の場合)課金口座の設定をしてくれるかどうか」、そして「実際にレジで使ってもらえるかどうか」だ。こんなことは、とっくに研究されているだろうというか、日本企業でも未だに試行錯誤中で、誰も正解を持っていないだろう。上にも書いたが、Felica 対応端末を持っていても過半数は課金の設定を行なっていないのが、日経や運営会社が黙っているが、実際だろう。

 NFC がこれから普及するか、iPhone に搭載されるかはわからない。が、今の Felica 先進国である日本のように複数の業者が乱立して、「このサービスはこの店でしか使えない」という状態では普及はしない。現金やクレジットカードに比べてメリットがないからだ。ただ、一つの IC チップで全ての小売店や自販機で使えるようになったら、小売店の小額決済サービスによる囲い込み効果はゼロになる。ユーザの利便性を優先して普及を目指すか、小売店の都合を優先して互換性のないサービスを並立させるのかによって将来は変わるだろう。

 海外の少額決済の現場や小売店のことを知らないので自分には予想は難しい。数年後に書きたい。

おサイフケータイようやく世界へ:日経ビジネスオンライン
 ギャラクシーS4は5型の有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)ディスプレーや1300万画素の高精細カメラなどアップルの「iPhone 5」を上回る性能で注目を集めたが、最も大きな進化は非接触の決済サービスなどに使われるNFC(近距離無線通信技術)を標準搭載したことだ。この関係者は「決済サービスは現在のスマホに残された数少ないフロンティア。サムスンが本腰を入れたことで、普及が加速する可能性がある」と指摘する。

 その伏線と言えるのが、2月下旬にスペイン・バルセロナで開かれた携帯電話の見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)2013」で発表されたサムスンと米ビザの世界的提携だ。この提携により、サムスンが今後発売するNFC搭載端末は、ビザの非接触決済サービス「payWave(ペイウェーブ)」をすぐ利用できる状態で出荷される。携帯電話会社の対応にもよるが、ユーザーは購入したばかりのスマホに自分のクレジットカードの情報を安全・簡単に読み込めるようになる。

 2人に1人以上が「おサイフケータイ」を使うとされる日本に比べ、海外では非接触決済サービスはほとんど普及していなかった。ただ近年、ネット上での情報配信で実際の店舗への来客を促す「O2O(オンライン・トゥー・オフライン)」マーケティングが拡大し海外でもスマホを決済に利用しようとする動きが広がっている。おサイフケータイ先進国の日本ではこれまで培ってきたノウハウを海外に輸出できるという期待感が高まりつつある。

 ソニーとNTTドコモ、東日本旅客鉄道(JR東日本)が出資するフェリカネットワークスの杉山博髙社長もその1人。同社は日本のおサイフケータイで採用されている「フェリカ」と呼ぶ規格に加え、海外で普及が見込まれる国際規格「NFCタイプA」と「NFCタイプB」にも対応するIC(集積回路)チップを開発。国内外のスマホメーカーに採用を働きかけている。

 1つのICチップで主要な技術方式を網羅することで、消費者は世界中で提供される様々な非接触決済サービスが受けられるようになる。杉山社長は「日本のサービス業が海外進出するうえで、おサイフケータイのビジネスモデルは強みになるはず」と説明する。

 携帯電話会社も準備を進める。ドコモはMWC2013の会期中、世界最大の携帯電話会社である中国移動通信集団(チャイナモバイル)や韓国の通信大手KTとNFCの国際ローミングに関する共通仕様を策定したと発表した。1台のスマホで日中韓3社それぞれの非接触サービスに乗り入れられるようにするのが目的だ。

 決済サービスで先行してきた日本では、その先を見据えた取り組みが進む。

 中でも力を入れるのがKDDI(au)だ。2012年の冬商戦端末では、10機種のうち8機種を「フェリカ」「NFCタイプA」「同タイプB」の3つの通信方式に対応させた。3月4日には、15社と連携してNFC関連サービスを提供することを発表した。

 15社のうち、決済サービスで連携するのは、ビザと米マスターカードの2社のみ。残りの企業とは決済以外のサービスを強化する。日本郵便やサイバーエージェントなど7社とはNFC対応の「タグ」が埋め込まれたポスターなどから情報を得るサービスを、ソニーやパナソニックとはスマホと周辺機器との連携サービスを提供する。

 店舗側に置くPOS(販売時点情報管理)端末でも新たな動きが出てきた。トッパン・フォームズの子会社であるTFペイメントサービスは、スマホやタブレットをPOS端末として利用できるサービスを開発した。カシオ計算機の業務用タブレット「V-T500」が同サービスのPOS端末として利用できる。POS端末の導入コストを抑えることで、小型店舗などへの普及拡大を目指す考えだ。

 既に、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco(ナナコ)」への対応を確認済み。今後は、「楽天グループの『Edy(エディ)』やドコモの『iD(アイディー)』にも対応させていく」(TFペイメントの黒羽二朗社長)。

 携帯電話業界内の盛り上がりとは対照的に、沈黙を続けるのがアップルだ。新機種が発表される直前には必ずと言っていいほど同社の対応が噂されるものの、いまだにiPhoneシリーズにNFCは搭載されていない。

 依然として世界のスマホ市場で2割強のシェアを持つアップルだが、iPhone 5の販売不振など、失速を指摘する声も多い。NFC分野で世界の携帯電話業界の潮流に出遅れることは、その傷口をさらに広げることにもつながりかねない。

 アップル自身、NFC関連の特許を数多く取得しており、非接触決済サービスに関心を持っているのは周知の事実。世界のスマホ市場で首位の座を争うサムスンの動きにどう呼応するのか。6月下旬とされるiPhone新機種の発表に注目が集まっている。

日経ビジネス 2013年4月1日号10ページ

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