iPodは旧ウォークマン世代の夢を見るか

 実際に使われている台数ベースではMDは当分首位を保つが、カセットプレーヤーがそうだったように静かにフェードアウトしていくだろう。

 しかも、その大半がiPodへの移行というのが現在の図式だ。電車に載ってiPodユーザーを見ない日はない。これが、地滑り的な現象であることはユーザー層を見れば分かる。俺よりも上の世代、ウォークマン発売時に20前後だったであろう年代や、「パソコンは仕事で使ってるけど、ワードとExcelくらいしか使わない。家ではインターネットで楽天とか見るくらい」といった御局世代のOL風。つまり、MP3もACCもoggも知らないような、ヲタではない人々がiPodの需要を支えているのだ。

 これは、これまでのHDDプレーヤーやMP3プレーヤーがなし得なかったことだ。そして、これは、単にiPodの売れ行きだけにとどまらない。

 「学生時代は良く音楽を聴いたけど最近機会がなくて」という、社会人を音楽市場に引き戻したのかもしれない。俺が、前から書いているように(俺自身その世代だから良く分かる)、仕事に生活の大半の時間を使い、家へ帰っても自分の時間などほとんどない大半のリーマンはゆっくり音楽を聴く時間ははない。かといって、CDをMDに落とす時間もないし、MDを管理・保管する場所も時間もない。

 ところが、iPodなら一挙に解決してくれる。音源については個人差があるだろうが(俺の場合は大好きなディスクの大半がビニール板だった)、俺のような特殊ケースを除けば、お気に入りのCDを買うことは大きな障害ではないだろう。タイトルによっては借りるという手もある。そして、iTuneに取り込んでしまえば(ほとんどのユーザーはオートロードで自動的にエンコードが始まり排出されるだろう)、後は聴くだけだ。

 なつかしの音楽を通勤途中で聴けるのは楽しい。これが引き金となって、次々音源を買っている人もいるはずだ。俺はまだiPodを持っていないが、CD-RWを手に入れた時にこれが起こった。制限するのではなく、開放することで需要は増えるのだ。原価のかかるものならともかく、ソフトは売れれば売れるほど固定費比率は下がっていくのだ。

HDD/シリコンオーディオの販売数量シェアがMDを超える

HDD/シリコンオーディオの販売数量シェアがMDを超える
†GfK調査。1月の最終週にシェア約40%を達成

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