高給取りはどっちだ?アップルの中国下請け工場問題

 アメリカの高給取り Mac ユーザーにとっては意外なことかもしれないが、Foxconnの労働条件は世界的には悪ほうじゃないということだ。12時間労働というと非人間的に聞こえるが、9時始業の会社で夜の9時まで仕事しているサラリーマンなんて日常的にいるよね。ちなみに、日本でも居酒屋チェーン店では月間の時間外労働時間が 160 時間でも社長はブラックではないらしい(個人的には頷けないけど)。

 Foxconn のような労働条件が良いとは思ってはいない。しかし、それは日本やアメリカにいる人間が「かわいそう」といった感情で批判すべきことではない。Foxconn は中国では上位の労働条件の企業なのだろう。今や世界の衣服の生産工場となった中国だが、繊維産業で働いている工員がFoxconn より良い労働条件で働いているとは思えない。それは、Foxconn の採用に対して応募者が列を作っていることからもうかがわれる。

 周囲の企業の労働条件の悪さには無関心でたまたま人気商品を作っている企業だけを取り上げて問題視し批判する態度はマリー・アントワネットと一緒だ。悪意はないかもしれないが現実を知らないオバカさんでしかない。

アップルの中国下請け工場問題:「フォクスコンは他より良好」と監査機関 « WIRED.jp 世界最強の「テクノ」ジャーナリズム.

Apple製品を製造する中国の下請け工場で、労働環境を調査中のFair Labor Association(FLA)の関係者は16日、すでに調査が済んだ工場の労働環境について、「われわれが監査を行ってきた工場の平均的な水準に比べると、Foxconnの労働環境ははるかに高い水準にある」という見解を示した。

FLAのAuret van Heerden氏は、Appleのアウトソーシング先であるFoxconnの深圳工場を視察した後、Reutersに対し「同工場の施設はファーストクラス」とし、「従業員の健康状態は、FLAが過去に監査を実施した他の工場よりはるかに良い」と語った。

今回の監査は、Appleの下請け工場における労働環境に対する疑問や批判の声が高まったことを受けて行われたもの。この問題は、New York Timesが1月下旬に掲載した一連の記事(この記事では、Foxconnの工場での厳しい労働環境が詳しく報じられていた)が発端となって生じたもので、Appleに対して批判の矛先が向けられた。

さらに今月に入ると、各地のApple Store前でこの問題の改善・解決を求める抗議デモが行われるなど、下請け会社の労働環境改善のためAppleに何らかのアクションを求める動きが強まっていた。

Reutersによれば、van Heerden氏はFoxconnの労働環境について、すぐに何らかの結論を出すことはなかったものの、「環境の退屈さや周りからの疎外感が、自殺した数人の労働者にストレスを与えた可能性はある」と述べたという。

van Heerden氏は「FLAがAppleの下請け会社に紋切り型でポジティブな評価を下すだろう」という批判を軽くあしらったが、FLAを企業側に有利な結果を報告する「PR用のマウスピース(a public relations mouthpiece)」と呼んではばからない抗議団体からすれば(日本語版記事)、今回の同氏のポジティブな発言は納得させられるものではないだろう。

この後、FLAはAppleと契約する他の大手サプライヤー8社(Quanta Computer Inc、Pegatron Corp、Wintek Corpなど)を調査する予定。今年3月中には調査の中間発表が公開されるという。

 これらの批判を受けたのか、Foxconn が給与を上げるらしい。これまで、購買者と企業に搾取されていた人への分配が増えるのは歓迎するが、資本家は痛みを分担することなく購買者に転嫁するだけだろう。もちろん、購買者たる Apple(他の委託企業も)はその価格を消費者への製品価格の上昇によって転嫁するだけだ。

 「16〜25%の賃上げを行うと発表した。これにより同工場の従業員の月給は、今月末にも286〜349ドル上がる」ということは、現在の給与水準が最低でも$1100(286/0.25)あるということだ。これは中国では破格の高給取りなのではないか。上海の労働者の平均賃金が年収42800元らしいので、月給だと約3566元。元・ドルレートは0.16 なので約$570だ。ということは、Foxconn の最低賃金は上海の平均賃金の倍以上で、今回の賃上げでさらに$300近くアップする。

 Foxconn の社員は平均賃金の数倍を稼ぐ高級取りといえる。日本だと年収1000万以上クラスに該当するのではないだろうか。Foxconn の社員は劣悪な環境で働かされていると、自分たちよりはるかに高給取りのために哀れんでいるんじゃないのだろうか。

アップルの下請け工場問題:フォクスコン、労働者の賃上げを発表 « WIRED.jp 世界最強の「テクノ」ジャーナリズム

Wiredが2011年、Appleの下請け会社Foxconnの高い自殺率についての記事を掲載して以来(日本語版記事)、同社とAppleは工場の労働環境や賃金を改善するよう求める大きな圧力にさらされてきた。そうした中でFoxconnは今月17日、ついに同工場の労働者に対し、16〜25%の賃上げを行うと発表した。これにより同工場の従業員の月給は、今月末にも286〜349ドル上がるという。

世界中の消費者の抗議や訴えを受け、Appleは先日、監査機関のFair Labor Association(FLA)に工場の労働環境の実態調査を依頼(日本語版記事)。FLAの最終報告はまだ出されていないものの、AppleはFoxconnの労働環境について同業種の中でももっともよい環境であると一貫して述べており、FLAも先日の一次報告でこれを認めている(日本語版記事)。

すでに現地の賃金水準を上回っている同工場において、さらに25%上げるというのは確かに大きな賃上げだが、もうひとつの大きな批判材料──組み立てラインの従業員がしばしば週6日の12時間労働をしているというもの──への解決にはなっていないのも確かだ。またFoxconnには、SonyやMicrosoft、Nintendoなどの製品の生産に携っている従業員もいる。

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