繰り返し書いていることだが、下の指摘はスマートフォンよりタブレットによりよく当てはまる。ここで必要なのは、メインプレーヤーの中に、一般に Apple と競合していると思われているようなデバイス製造メーカーの名前がないということだ。日本のマスコミやメーカーが勘違いしている人間が未だにいるようだが、日本の製造メーカーは Apple と競合していない。同じスタートラインに経っていると思う事が勘違いだ。
1年遅れの要素技術をかき集めて作った端末にプリインストールソフトを山盛りしただけで、「iPad と対等の勝負ができる」というような賭け金の安いビジネスではないのだ。PC 互換機で、大昔に成功したビジネスモデルを持ってきて済ませられると思っているところが痛い。
今年中に打たれるという各プレーヤーの手を整理してみた。ここで、面白いのは、iPad や NEXUS 7 で Amazon で買い物をするケースや iPad で Google のサービスを使うケースもあるということだ。なので、端末の売上シェアとエコシステム全体の収益は一致しない(この点で Google と Amazon は有利だ)。
また、ここには書いていないが、台数的にはここに上げたメーカーの新製品を上回る可能性がある勢力がある。廉価版旧モデル Android 互換機だ。世界レベルの Android のシェアの増加を支えているのは実はこの層だ。日本でも1万円前後で買えるタブレット端末は多い。Google のエコシステムはこれらを取り込むことができるが、他のプレーヤーには無理だ(Amazon や iTunes soter がない国もある)。
時期 | プレーヤー | フィールド | 攻撃相手 | 手 |
2012/3 | Apple | 10 インチ | – | New iPad,iPad 2 |
2012/3 | Apple | 低価格市場 | Amazon,Samsung | iPad 2 |
2012/7 | 7 インチ | Amazon,Samsung | NEXUS 7 | |
? | Amazon | 10 インチ | Apple | kindle fire 10 |
? | Amazon | 7 インチ | Google,Samsung | New kindle fire |
2012/10 | Microsoft | 10 インチ | Apple,(Amazon) | Surface |
? | Apple | 7(8)インチ | Amazon,Google,Samsung | iPad(mini) |
iPhoneは何を破壊したのか – (page3) –
また、このエッセイ公開の数日後に公開されたBusinessweek誌の記事——この日に浮上した「アマゾンのスマートフォン投入」の可能性に触れた記事は、もっと明け透けな言い方で次のように書いている。ここで我々が話をしている企業各社——アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、それにフェイスブックにとって、この戦いの掛け金はとても高いところまでつりあがっている——あっちこっちの分野でハードウェア(単品)を開発・投入すればいい、という状況ではない。単に携帯電話機や電子書籍端末を作ったり、あるいはクラウドベースのストレージサービスを提供すれば、それで十分という話ではない。どの企業もいずれは、テレビ分野の戦略、ゲーム分野の戦略、小売分野の戦略、ブランディングの戦略、それに知的財産のポートフォリオやコンシューマー向けのアレコレ、そしてメディアやデータ関連のウェブサービスなどが、巨大なスケールで必要となってくる。そうしたものが用意できないのであれば、このゲームには参加しないほうが得策だろう。
これは、つまりiPhone登場で比較的静かに始まった地殻変動が、今やごく少数の強者にしか勝ち目のない大戦に至っている、と言う認識に基づく見解だろう。
ところで、Facebook は株式市場やIT投資家が評価するほどハードの売上に影響は与えないのではないか。Facebook で話題になったデバイスの売上は伸びるかもしれないが、それらは Amazon や Apple store で買うだろう。少なくとも自分の中では「今流行ってるSNS」でしかない。数年後には mixi や myspace と同じ流れをたどるのではないだろうか。
「もうおわったんや」というのは、日本のメルヘンさんの作る端末のことで、ビジネスモデルの戦いはこれからだ。今年の年末商戦が今から楽しみだ。まあ、タブレット市場自体がそれほど伸びずに終わる可能性も含めて見守りたい。