Amazonの甘美な独占契約は、消費者にとっては悪

 これが本のデジタル化で一番懸念される点だ。作者毎に端末を持ち歩かなければならないのなら電子化のメリットの半分以上が失われる。逆に、再生端末の数によって売れる作品の数が影響を受ける可能性もある。このことは作品の評価を歪める可能性がある。こんな社会は、デジタルコンテンツ流通業者(Amazon、Apple、Google etc)と端末メーカー以外、誰も望まないだろう。

 日本市場では同じことが音楽で起こっている(SONY のアーティストの曲を iTunes では今も買えない)。本についてはそれ以前の状態だが、協力してユーザーも著作権者も納得できるような共通フォーマットのコンテンツを iTunes も Amazon ででも買えるようにして欲しい。重くて検索もできないスキャン画像でデバイスをいっぱいにするのなんて 2012 年のデジタルライフじゃないぜ。

Amazonの甘美な独占契約は、消費者にとっては悪

Eブック全体を大きなパイだと思ってほしい。Amazonはその一部を切り取って、自分の皿に乗せた。ごく近い将来、他のプレーヤーたちが猛烈に勢いでパイを切り取り、それぞれの皿に置いていく。残されるのはバラバラで混乱した、消費者にとって扱いが困難で複雑な市場だけだ。

独占契約などKindleを含めどこの店でもやっていることで、新しくも何ともない。Eブック市場が過熱する今、激しいタレントの取り合いが起こり、タレント側も強く契約を求めるようになったということだ。もちろん著者はできるだけ多くの部数を売りたいが、Eブックストア1社に限定したとしても、船が大きく傾くことはないし、Amazonはかなりの前払い金を出すはずだ。今後2年間、有名作家の主要Eブックブランドへの大移動が起きるだろう。例えばスティーブン・キング。彼の本をEブックで読みたければKindleが必要になる。その手の独占はやりやすいので、しばらく続く可能性が高い。

私が心配するのは、最終的にエンドユーザーにとってマイナスになることだ。もしビッグプレーヤーたちが、ベストセラー読者をEブックに切り換えさせたいのなら、このやり方はまずい。ダニエル・スティール読者の誰かは、ある著者の本が自分のEブックリーダーで読むことができず、別のストアに登録してクレジットカード情報を一から入れ直さなくてはならないと知れば頭に来る。たしかに、NookやKindleやKoboは多くのデバイスで使うことができるが、あの著者、あの本のために全く新しいインターフェースとつきあいたいと思う人はいない。何百万部と売れる本なら、本物のペーパーバックを買った方が便利だ ― 持ち歩けて、DRMフリーで、リージョン制限もない。KindleはいずれEブックのiTunesになるかもしれないが、完全に決着が付くまでは(音楽はそうなったようだ)、トラブルが起きるだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です