3D の次は 4K。懲りない技術者たち。

”超自然画面”なら日本が優位を保てる(テレビにはまだ未来がある)

 こういう人が日本の家電メーカーの技術の先導をしているんだなぁ。その結果が今のテレビなんだが。日本の家電メーカーの役員や管理職はこういう人に引っ張られて市場を制覇していた時代の発想しかないので、こういうものを作ってしまうんだろう。3D テレビの失敗に懲りてないんだろうか。

 この人が開発した技術については知らないし分からない。しかし、「テレビの時代はこれから」というのが幻想であることは分かる。

1.「テレビ」は受像機のことではない。コンテンツの作成から送信、受信のシステムとコンテンツそのものを合わせたシステムだ。どこか一つが変わったところでユーザには届かない。地デジ化で画質や音質は上がったはずなのに視聴率が下がる一方なのはなぜか。
今の日本のテレビ番組で高画質で観たいようなものがあるか?芸人の馬鹿笑いや女子アナの作り笑顔を高画質で見てどうするの?津波の災害現場を高画質で観ていたら行動が変わったなんてピンぼけも甚だしい。日本のテレビで流された、編集後の映像を見ても、ポロロッカを観るのと大差ない。問題はコンテンツなんだから。
 しかも、自ら「陰影をナチュラルに見せるには、光の当たり具合や・・・」と、この受像機の性能を活かすためにはコンテンツの作成現場に負担を強いらなければならないと言っている。そんなことNHKの一部ドキュメンタリーでしかできないだろう(それ以外のコンテンツでは必要もないだろうが)。そんな、ひと月に数時間しか能力を発揮できないものを誰が買う?

2.コンテンツ自体が変わるとしても、高画質を生かせるようなコンテンツがそもそも存在するのか?どんな高画質でも、高原の映像を1時間も眺めていられるか?
素晴らしい高画質なら自宅で海の映像を観て泳いだ体験はできない。

3.これが一番引っかかった。「きめ細かな映像を見ると、人間の目は実際の風景をみているときと同じように自然なピントの合わせ方をするからだ」と言っている。そして、「人間が普段外にいて、周りの風景と自分の位置との距離感などを確認する目の動きと同じである。つまり、ある風景の映像を60インチの4Kテレビで見れば、まるでその場にいるかのような感覚を覚える。」ともある。
 そうか?「んなことかるかい。」というのが自分の感覚だ。人が遠近感を感じるのは画像からではない。人は、左右の目の視差と(これは素人の体感だが)ピント調整のフィードバックからだと思う。
 自分は自転車で農道を通って通勤している。この時期(5月頃)は田植の前で田には水が張られている。そして、水が張られた田んぼの横を通ると普段と異なって広々とした空間にいる錯覚を覚える。特に夜は空を飛んでいるような気持ちになる。それは、水面に反射した光は空を写していて、それにピントを合わせることは無限遠を観るのと同じ操作をする(左右の視差や眼球のピント合わせ)。これだけで本当は数十メートルの距離にある田んぼが無限遠に感じるのだ。そして、人間は経験的に自分の下の地表面との距離感を持っている。自分の下にあるものが無限遠の広がりがあるというのは、高い山から下を見下ろしたときのような錯覚につながるのだと思っている。これと同じ感覚は、静かな空を映す湖で経験できるはずだ。
 翻って言えば、どんな大画面、高画質であっても、数メートルの距離にあるテレビに映っているものの視差やピント合わせのフィードバックは数メートル先のものでしかない。だいたい平面に映ったものを観て遠近感を錯覚するなどあり得ない(だまし絵は除く)。
 このことは、大きなポスターを見た時に、臨場感があるかどうかを考えれば想像できる。印刷物の解像度はテレビの比ではない。でも、アルプスの写真の前に立ったからといって、広々とした空間を感じることはない。

 右の写真を見て欲しい。この写真を見てもただの田んぼの写真にしか見えないだろう。水面はそのあぜ道の延長上にしか見えないはずだ。ところが実際にはぜんぜん違う。実際に広々とした空間ではあるが、全然異質な距離感が水面にはある。水面に写った数百メートル先を見ているのと同じ距離感になるのだ。あぜ道はそのままの距離感だが、その中だけが遠くにあるように感じる。夜だと周りが見えないからこの感覚は大きくデフォルメされる。夜だと濁った水も鏡のように月を映すからだ。

4.消費者として言わせてもらうなら、今頃になって「地デジや従来のハイビジョン、3Dはダメ」ってどういうことだ?地デジや衛星のハイビジョンTVが導入される頃には、素晴らしい臨場感で迫力のあるスポーツ映像とか言ってた。こんなん、次のバージョンの windows を出すときの Microsoft とおなじで信用出来ない。Windows vista は XP よりはるかに軽量で高速で快適で安全とか言ってたけど windows7 が発表された途端「Vista を欲しい人がいますがwww」だった。どうせ、4K テレビの後に何かが出たら、「4K では臨場感が不足してた・・・」とか言うんだろう。

変わったんや

 技術屋さんが技術主導で物を考えた時の典型だ。「こんなに素晴らしいからみんな欲しがるだろう」と考えて作ったら誰も必要としていなかったのだ。ラジオがテレビに鳴った時や白黒テレビがカラーになった時のような驚きはもう無いんだよ。
 高画質の録画を観るよりモアレだらけで止まったりするストリーミングでもリアルタイムなものの方がいいんだ。

最後に予想。4K テレビは将来的に普及するのかもしれない。が、それは単にブラウン管から液晶になったという要素技術の進化の一部として置き換えられるだけで、その時に日本のメーカーが過去の栄光を取り戻すことは無い。最悪 3D テレビの二の舞になるだろう。

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